第57話:例示の鉄槌
「なっ、なんて理不尽な物差しどす……ッ!?」
エリカが放った『アリシア以下』というあまりにも残酷な現実を突きつけられ、艶の動きに致命的な乱れが生じた。その一瞬の隙を、関東の吸血鬼が逃すはずがない。
「ウラァッ! 隙だらけだよ変態お姉さん!!」
死角から飛び込んだアリスの鋭い爪が、艶の構える仕込み煙管を根元から粉砕! そのままの勢いで、アリスの容赦ない前蹴りが艶の腹部にクリーンヒットした。
「ガハッ……!?」
艶の細い身体が、まるで紙屑のように公会堂の壁へと吹き飛ぶ。だが、例示学園のコンビネーションはここで終わらない。
「アリス、ナイスですわ! 続けていきますわよ!」
「うん!」
壁に激突して跳ね返ってきた艶に対し、二人の容赦のない波状攻撃が始まった。
アリスが超高速の爪撃で着物をズタズタに切り裂けば、エリカがその隙間を縫うように、重量級の鉄扇による強烈な打撃を顎、脇腹、膝へと正確に叩き込んでいく。
「あぐっ……!? 痛っ、ちょ、ちょっと待……そこは女の子のデリケートな――あふんっ!?」
さっきまでの妖艶な余裕はどこへやら、艶は完全にボコボコにされ、顔面を腫らしながら床を無様に転がった。他人の恋路を狂わせ、女の子をねっとり舐め回していた悪い百合女は、例示学園が誇る最強タッグの『一切の容赦のない物理暴力』の前に、ただのサンドバッグと化していた。
「はぁ……はぁ……。な、なんなんやこの学校……可愛げの欠片もないわ……」
髪を振り乱し、完全に戦意を喪失して床に這いつくばる艶。
その脳頭上に、冷徹な影が静かに落ちる。
「これで終わりですわ、白百合院 艶」
エリカが、自身の魔力を極限まで込めた鉄扇を逆手に持ち替え、冷たい瞳で艶を見下ろした。その扇子の周囲の空間が、魔力の密度によって歪んでいる。
例示学園生徒会長による、容赦なき最後の処刑の攻撃が、今まさに振り下ろされようとしていた!




