第52話:薪割り流奥義・大地穿孔
「――たかが、固まった土塊ごときで、私は止められない!!」
アリシアの咆哮が地下迷宮に木霊した。
その瞬間、彼女の全身から爆発的な魔力の奔流が解き放たれる。その膨大なエネルギーは空気の壁を叩き、衝撃波となって周囲の空間を激しく震わせた。
イザヨイの『変幻自在』によるものではない。アリシア自身の純粋な魔力によって、液状化していたはずの地下の地面が、まるで巨大な生き物のように猛烈に『躍動』を始めたのだ。足首を掴んでいた泥のホールドが、彼女の放つ熱量と圧力だけで内側からパキパキとひび割れていく。
「な、なんやこのプレッシャーは……!? 腕に何百キロもの泥をつけられて、足元を完全に固められとるんやぞ!? なんでまだこんな底なしのパワーが残っとんねん!」
イザヨイの顔に初めて本物の戦慄が走る。だが、東西の誇りをかけたタイマンの舞台、ここで退くわけにはいかない。
「ふん……! 死に体からの底力、やるやんけ! ならこっちも、全財産でも買い戻せへんくらいの、極大の意地を見せたるわァ!!」
イザヨイは残る全魔力を動員し、剥き出しの大地から十重二十重にも及ぶ、超硬質の『巨大泥壁』をアリシアとの間に生み出した。それは鉄筋コンクリートをも遥かに凌駕する、絶対防壁。
しかし、アリシアはもう止まらない。
足首を縛る泥を力任せに引きちぎり、腕の重りをもはや『自重を乗せるための加速装置』へと昇華させ、大地を爆砕しながら跳躍した。
「くらえ!!! 薪割り流奥義――【|一刀両断・地殻叩き割り《グランド・スプリット》】!!!」
空中から、両足を揃えた渾身のドロップキックが、イザヨイの誇る泥壁へと炸裂する。
「――なっ、嘘やろ!?」
イザヨイの悲鳴が響く。
絶対の硬度を誇ったはずの泥壁は、アリシアの前ではただの脆い土塊に過ぎなかった。触れた瞬間から、ガラス細工のように粉々に爆散し、一撃のもとにブチ抜かれる。
「ワイの……ワイの最高傑作の壁が、ただの暴力で……ッ!?」
衝撃波の突風の中、イザヨイの視界に、泥の破片を巻き散らしながら彗星のように突っ込んでくるアリシアの姿が真っ直ぐに映し出された――!




