表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/29

第5話:戦闘は野蛮!?テーブルマナー!

初心者狩り(ルーキーハンター)』を、転校初日の無名令嬢が粉砕した。そのニュースは、悪役令嬢専用のSNS『ヴィラン・ハブ』を瞬く間に駆け巡り、アリシアの名は不名誉な期待とともに広まっていった。



「あんた……いったい何人葬ってきたのよ、あんな戦い方で」



廊下を歩きながら、アリシアは隣で『二つ名候補:剛拳の白百合』というフリップを自作しているエリカに呆れた視線を送った。



「……数えていたらキリありませんわ。悪役令嬢としての矜持を持たぬ者(はんぱもの)に、引導を渡すのが私の役目でしたから」



エリカが遠い目で答えたその時、廊下の空気が一変した。

甘く、しかし脳髄を痺れさせるような濃密な香気。前方から、銀のトレイを完璧な角度で保持したメイドロボを従え、一人の令嬢が優雅に歩み寄ってくる。



「貴方がアリシア様?」



鈴の鳴るような声。だが、その瞳は笑っていない。



「そうだよ!」



アリシアは反射的に右手に魔力を込めた。いつでもチョップで迎撃できるよう、筋肉が微細な振動を始める。だが、現れた令嬢は扇子を広げて口元を隠し、クスクスと肩を揺らした。



「あらあら……野蛮ですわね。拳に頼るのは、教養のない獣のすることですわ」



アリシアが眉をひそめて問い返す。


「何者?」


「貴方が来るとはね。『鍋奉行(テーブルマナー)』……!」



エリカの声に緊張が走る。



「ごきげんよう。そしてお久しぶりエリカ様、私は生徒会広報、セレナ。この学園では、ただ泥臭く戦うだけでなく、令嬢としての『素質(ちから)』も求められますの」



セレナが指を鳴らすと、廊下の壁がスライドし、最新のホログラム投影によって豪華なティーサロンが構築された。中央には、大理石のテーブル。その上には、幾層にも重なり、物理法則を無視して高くそびえ立つ『悪魔のミルフィーユ』が鎮座している。



「さあ行きましょう? 私の『テーブル(ステージ)』へ……。アリシア様、貴女がもし最強を目指すと言うのなら、この『崩さず、汚さず、優雅に完食する』という試練、受けていただきますわよ」



セレナは銀のスプーンを、まるで騎士の剣のように構えた。



「この学園の食事作法は、現代魔法に基づいた『重力制御マナー』。一口運ぶごとに、重圧(プレッシャー)が貴女を襲いますわ。……さあ、フォークをお取りになって?」


「……よくわかんないけど、食べて勝てばいいってことね?」



アリシアは差し出されたフォークを握りしめた。薪割りの要領でケーキを切っていいものか、彼女の「悪役令嬢」としての勘が激しく警鐘を鳴らしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ