第46話:泥の執念と、地下迷宮への転落
背後の中央広場から、地響きのような大爆音と、黄金のリンゴ爆弾の光が走る。エヴェリンと暗黒の相打ちによる凄まじい衝撃波が、公会堂の廊下をガタガタと揺らした。
「後ろが爆散したぁぁぁ!? エヴェリン先輩、一体何をやっているのぉぉぉ!?」
腕にクソ重い粘土をつけられたまま、エリカとココアに抱えられるようにして走っていたアリシアが絶叫する。
だが、混乱する彼女たちの足元の絨毯が、突如として生き物のようにグニャリと歪んだ。
「なっ……底が……!?」
そんな中、完全に床の強度が消失し、巨大な『落とし穴』が出現したのだ!
「……うわわーーーっ! 下も泥になってるぅぅぅ!」
腕の粘土の重さのせいで、アリシアの身体はまるで隕石のように真っ逆さまに穴の底へと吸い込まれていく。
「アリシア!!!」
「この泥、イザヨイの魔力ですわ! アリシア、今助け――」
エリカとアリスがとっさに手を伸ばすが、泥の穴は二人が触れる直前、生き物のようにピシャリと閉じてコンクリートの床へと戻ってしまった。隔離されたのだ。
公会堂の最地下、暗い地下水路のような空間に、アリシアは尻餅をついた。腕の重さのせいで落下の衝撃が倍加し、思わず「ぶふっ」とカエルのような声が出る。
「……痛たた。もう、なんなのこれ……」
「ハハッ、さすが例示学園のゴリラ令嬢やな。これだけの落とし穴に落とされて、骨の一本も折れてへんとは大した頑丈さやで」
暗闇の奥から、コツ、コツと足音を響かせて現れたのは、あの偽タンポポに化けていた少女、イザヨイだった。
彼女はアリシアの腕に未だへばりついている『変幻自在』の粘土を指先で弄びながら、感心したように首を振る。
「うちの特攻隊長から『関東にとんでもない怪力のお嬢様がおる』とは聞いとったけど、まさか新幹線を体一つで止めるような奴らの一味やったとはな。あんさん、そんなに危険人物やったんか……ワイ、最初に出会った時はただの迷子やと思って、全然気が付かへんかったで?」
アリシアは地面にへばりついた重い両腕を、筋肉の軋む音を響かせながら、フンッ!! と力任せに数センチ持ち上げてみせた。その野生の威圧感に、イザヨイの頬がわずかに引きつる。
「危険人物だなんて人聞きが悪いなぁ! 私はただのおいしいご飯が好きな村娘だよ!」
アリシアはギラリと目を光らせ、イザヨイをまっすぐに見据えた。
「でも、いいよ……。どうせ、あなたを倒さなきゃ、この腕は重いまんまなんでしょ!」
「ほう、やる気か? 腕もまともに上がらへん状態で、このワイに勝てると思っとるんかいな」
「勝つよ! 腕が動かないなら、まだ動くところで戦えばいいだけだもん!!」
アリシアの脚が、地下のコンクリートを爆砕せんばかりに深く踏み込まれる。
腕を封じられた最強の村娘vs変幻自在の泥使い。地下迷宮でのタイマン勝負が、ここに開幕した!




