第44話:思考する弾丸
「ガハッ……!? な、なんなんや今の衝撃は……! 物理攻撃は効かへんはずのワイの霊体に、なんでダイレクトにダメージが入っとるんや……!」
公会堂の瓦礫に背中から突っ込んだ暗黒が、包帯を血で染めながら、信じられないといった様子でエヴェリンを睨みつける。
エヴェリンは無表情のまま、コートのポケットからコロン、と一つの『パイナップル』を取り出した。
「な、なんやそれ、おやつか? 緊迫した戦場に果物持ち込んで何様のつもりや!」
「……いいえ、これは『手榴弾』よ」
エヴェリンがパイナップルの葉っぱをピンに見立てて
「プチン」
と口で引き抜く仕草をした、その瞬間。
ただのパイナップルが、TNT火薬30キロ相当の凄まじい大爆発を起こし、暗黒の周囲の床を完全に消し炭に狂わせた。
「ギャーーーすッ!? パ、パイナップルが爆発したぁぁぁ!? なんでやねん、物理法則どこいった!?」
そう、これこそがエヴェリンの固有魔法**『銃妄想』**の真の恐怖。
彼女が『これは銃だ』『これは兵器だ』と思考すれば、この世のあらゆるオブジェクトが最強の殺傷能力を持つ武器へと変貌する。100円ショップのエアガンを持てば戦車を消し飛ばす実銃となり、果物を持てばクラスター爆弾となるのだ。
「そして、弾丸の定義もまた……私の思考が決定する」
エヴェリンは今度は、ただのプラスチック製の白いBB弾を指先で弄んだ。
「……顕現せよ、『銀の弾丸』」
エヴェリンが指をパチンと弾いた瞬間、そのプラスチックの玉が、目も眩むような神聖な銀色の光を放ち始める。
「な、なんやその禍々しいまでの聖属性の光は……! ワイのゴーストルールの天敵やんけ! で、でもおかしいやろ! 銀の弾丸って、本来は狼男とか吸血鬼にしか効かへんはずの――」
理不尽な設定の追加に思わずツッコミを入れる暗黒に対し、エヴェリンは冷徹に、しかしどこか楽しそうに言い放った。
「細かいことは気にするな」
「気にするわボケェェェェ!!!」
「私の妄想の中では、幽霊も吸血鬼も、等しく『夜に蠢く不浄の者』。よって、効く」
有無を言わせぬ絶対的な中二病の『俺ルール』が展開される。エヴェリンがただのプラスチック弾をデコピンの要領で弾くと、それは音速を超える『銀の弾丸』となって、半分霊体化している暗黒の胸元へと一直線に突き進んだ。
「ひぇぇぇぇ! 概念が強すぎるぅぅぅ!!」
東西の中二病対決。それは、設定の強引さと、思い込みの深さが全てを支配する、あまりにも理不尽な概念泥仕合へと突入していた!




