第43話:漆黒の共鳴
黄金の新幹線が撒き散らした瓦礫の煙が、ネオ中央公会堂の巨大なエントランスホールに立ち込めていた。
「さぁ、各個撃破ですわ! 蘭王の幹部どもを一人残らず引きずり下ろしなさい!」
エリカの号令と共に、例示学園の面々はそれぞれ己の獲物を求め、迷宮と化した公会堂の奥へと散っていった。
腕に重い粘土をつけられたアリシアは、ココアに引きずられるようにしてイザヨイを追って地下へ。メイとアリスはオタク幹部の萌を追って右の回廊へ。レインとカシウスは無言で最上階の『王』の間へと直進していく。
そんな中、中央広場に残ったのは二人。
蘭王学園三幹部の一人――全身に包帯を巻き、右目に深紅のカラコンを嵌めた、神代暗黒(本名:田中よしこ)。
そして、例示学園が誇る、銃器愛好家、エヴェリン。
「ククク……まさか、我が『聖域』にここまで踏み込んでくる『迷い子』がいようとはな……」
暗黒が包帯に覆われた腕を妖しく掲げ、関西弁のイントネーションを必死に隠しながら、ドスの利いた声で囁いた。
「我が名は神代暗黒またの名を究極の闇。現世の理を反転させ、虚無へと誘う者なり……!」
対するエヴェリンは、いつも通りの無表情のまま、愛用の超巨大なリボルバーのシリンダーをと虚空で回転させた。
「……いいえ、私の眼はすでに貴女の終焉を捉えているわ。私の名はエヴェリン。この世界に弾丸の雨を降らせる者――銃妄想」
「な……ッ!?」
暗黒の右目が、驚愕にカッと見開かれた。
(な、なんやこの女……! 設定の練り込み度がワイと違いすぎる……! 『銃妄想』と書いて『ガンライズ』!? 語彙力のレベルが桁違いやんけ……!!)
関西のプライドをへし折られかけた暗黒は、焦りを隠すように叫んだ。
「おのれ、関東の小ざかしい魔女め! 我が固有魔法の錆にしてくれるわ! 顕現せよ――『ゴーストルール』!!」
暗黒の身体から、ドロドロとした怨念のような魔力が噴き出す。彼女の肉体は半分霊体化し、この世のあらゆる物理干渉を受け付けない絶対無敵の『幽霊』へと変貌した。
「ハハハハハ! ワイのこの姿には、どんな銃弾も、どんな物理攻撃も届かへんのや! 悔しかったら触ってみぃ!!」
「……浅はかね」
エヴェリンは静かに銃口を暗黒へと向けた。弾丸など、最初から込めていない。彼女の魔法は、自身の妄想を銃の形を借りて放つ、最強の概念武装。
「私の妄想は、肉体ではなく『魂』を撃ち抜く。――虚空穿孔」
エヴェリンが引き金を引いた瞬間、弾の出ないはずの銃口から、空間をへし折るような凄まじい「妄想の衝撃波」が放たれた。
「ヒェッ!? なんやこれ、魂が……魂が持ってかれるぅぅぅ!?」
物理無効のはずの暗黒が、精神的な大ダメージを受けて派手に後方へと吹き飛ぶ!




