第42話:黄金の流星、ネオ浜松に突尾(エントリー)す
東西の決戦の地、ネオ浜松。
その中心にそびえ立つ、蘭王学園の本陣『ネオ中央公会堂』の正面玄関前では、レインとカシウスがまさに臨戦態勢に入ろうとしていた。
建物の屋根やバルコニーからは、蘭王学園が誇るボカロ魔法三幹部――中二病の暗黒、オタクの萌、そして悪い百合女の艶が、眼下の二人を見下ろして不敵に笑っている。
「ククク……よくぞ来たな、例示のバーサーカー。我が暗黒の波動――」
「関東のエリートどもがァ! 聖地に足を踏み入れたことを後悔しな――」
三幹部がまさにその凶悪な固有魔法を発動しようとした、その瞬間だった。
東の空から、新幹線のものではない、明らかに「何か巨大な鉄の塊がアスファルトを削りながら弾んでいる」タイプの、この世の終わりみたいな大爆音が響き渡った。
「な、なんやあの音は!? ナビのバグか!?」
屋根の上のイザヨイが目玉を飛び出させて叫ぶ。
遥か彼方の直線上、ビル群を物理的になぎ倒しながら、やたらと黄金色に輝く新幹線『究極号』が、時速500キロのまま一切減速せずにこちらへ向かって猛進してくるのが見えた。
その頃、アルティメット号の運転席。
きらびやかなドレスの裾をボロボロにしたエリカが、血の気の引いた顔で操縦レバーをガシャガシャと前後に動かしていた。
「……ブレーキが効きませんわ」
「やっぱりッ!!! 線路のない新幹線なんて作ったからだよ!!!」
腕にクソ重い粘土をつけられたまま、床に転がっていたアリシアの絶叫が響く。
前方には、ネオ浜松の巨大な公会堂、そして蘭王学園の陣営がハッキリと見えている。このままでは敵も味方も関係なく、時速500キロの質量兵器として全員が粉砕になる未来しか残されていない。
「ブレーキがダメなら、もうそのまま突っ込むしかねぇでちゅわ! 全員、衝撃に備えるんでちゅ!」
特攻服の襟を掴んで耐えるココア。
その時、客席の後方から、まだ体育祭の疲れが取れきっていないはずの、あの『吸血イケメン令嬢』がフラフラと立ち上がった。
ジャーマンスープレックスでコンクリートに突き刺さり、病院へ搬送されたはずの元14位――アリス・メイデンである。なぜか彼女もこのお祭り騒ぎにちゃっかり乗車していたのだ。
「……ふっ、関東のプライド、ここで見せてあげるよ……! 究極号の全運動エネルギー、ボクがすべて吸い尽くしてみせるッ!!」
アリスは前方の壁に両手を叩きつけると、その鋭い牙を剥き出しにした。
「……うぉぉぉ!! ドレインうォォォッ!!!」
アリスの固有魔法が発動し、新幹線の爆発的な推進力が、彼女の華奢な肉体へと一気に逆流し始める! 20人分のスタミナを吸った時以上の、まさに『新幹線1車両分』の物理的エネルギーの超ドレイン。
「ぐ、あ、熱い!? また体の中が、熱い、弾けるゥゥゥッ!!」
アリスの顔が瞬時に真っ赤になり、体中からプシューッと蒸気が噴き出した。
だが、その超吸のおかげで、時速500キロだったアルティメット号は、みるみるうちに減速。時速80キロ、50キロ、30キロと、安全な突撃速度まで落ちていく!
「すごいですわアリスさん! これなら死にませんわ!」
「なるほど、新幹線の速度そのものを『スタミナ』として解釈して吸い取ったんでちゅね。……頭いいでチュね!」
ココアが珍しくアリスを素直に称賛する。
「あはは……でも、完全に止まりきっては……ないよね……?」
アリシアが冷や汗を流した、その直後。推進力をギリギリまで吸い取られた黄金のアルティメット号は、ちょうど良い感じの減速スライダーとなり、蘭王学園の本陣『ネオ中央公会堂』の正面玄関をド派手に突き破ってエントリーした。
ガラガラと崩れ落ちる瓦礫と煙の向こうから、黄金のドアがプシューと開く。
「――お待たせいたしましたわ、関西の泥棒猫ども! 、バレット組の御一行様の到着ですわ!」
煙の中から、脇にアリシアを抱えたエヴェリン、ドヤ顔のエリカ、爪を研ぐココア、そして新幹線のエネルギーを吸いすぎて全身から爆音でポップコーンのように放電している白目のアリスが姿を現した。
「……何ですか、あの悪趣味な乗り物は」
沼津からのストーキングで疲れているカシウスが、眼鏡の位置を直しながら呆然と呟いた。
東西の怪物がついに一堂に会したネオ浜松。例示学園生徒会&バレット組の、型破りすぎる反撃がいま幕を開ける!




