第38話:書記の暗躍と、ついてきちゃった銃妄想
「――なるほど。それで、あの脳筋村娘が変な粘土をくっつけられて、会長とサクラ先輩はすでにネオ浜松へ向かった、と」
1年B組の教室。腕にクソ重い粘土をつけられたまま床に這いつくばっているアリシアと、不機嫌そうなココアの前に、一人の令嬢が立っていた。
生徒会広報、セレナである。
日常を100倍重力で過ごす彼女は、アリシアの腕の粘土を見るなり、ふむ、と顎に手を当てた。
「これは『変幻自在』……関西の蘭王学園のイザヨイの仕業ですわね。彼女たちの『バイオ果たし状』なら、すでに生徒会室へ届いて、今頃レインお姉様が熱海あたりで雑兵をすり潰している頃でしょう」
「やっぱりそうなんだ! セレナさん、どうにかしてこの粘土外れない!?」
「無理ですわ。彼女の魔力が切れるか、本人の意識を刈り取るしかありません。……まったく、お姉様もサクラ先輩も、おいたが過ぎる獲物を前にして単細胞すぎますわ。これでは生徒会の統率が取れません」
セレナがため息をついたその時、教室の影からひょっこりと顔を出したのは、前髪の長い生徒会書記、メイだった。体育祭で摩擦ゼロのケツワープを披露し1位をもぎ取った、あのバグ使いである。
「……ねぇ。会長が1人で暴走してるなら、これ、チャンスじゃない?」
メイは不気味に目を光らせながら、手元の端末を高速で叩いた。
「蘭王学園はバイオ悪役公女の巣窟。会長1人に美味しいところを持っていかれるのは癪だし、ここで他の生徒会メンバーにも声をかけて、ネオ浜松を完全制圧しに行きましょうよ。その方が面白いでしょ?」
「メイ、貴女またろくでもないことを……」
セレナが呆れるが、メイの呼びかけに応じるように、廊下からズシン、ズシンと地響きのような足音が近づいてきた。
「あら、全面戦争? 楽しそうなことやってるじゃない」
現れたのは、体育祭で時速200キロの直立不動爆走を見せた、あの超重量級令嬢――エヴェリンだった。彼女は実につまらなさそうに、しかし瞳の奥に狂気を宿して笑っている。
「関西のバイオお嬢様たちって、 ちょっと興味あるわ。私もついていってあげる」
「エヴェリン先輩まで……。はぁ、どいつもこいつもバーサーカーばかりですわね」
セレナは頭を押さえたが、腕を重そうに震わせているアリシアを見つめ、フッと好戦的な笑みを浮かべた。
「いいでしょう。アリシア、その粘土を外したくば、ネオ浜松へ行ってそのイザヨイとかいう小娘の頭をコンクリートに埋めるしかありませんわ。――生徒会広報として、この東西全面戦争、特等席で記録させていただきすわ!」
「よーし! 待ってろネオ浜松! 待ってろイザヨイさん!!」
腕が重くて動けないアリシアを、エヴェリンが
「はいはい、荷物ね」
と軽々と片手で脇に抱え上げる。
生徒会書記メイの扇動により、例示学園の『動ける化物たち』が、一斉に関西の魔窟へと牙を剥き始めた!




