第29話:仕様バグ、村娘の誤算
「アリス・メイデン!! 覚悟しなさーーーいッ!!」
時速マッハのゴリラと化したアリシアが、空中で頭を大きく後ろに反らし、メイデンの顔面に向けて狂気の石頭破壊をぶちかました。
「ぐはぁっ!?」
あまりの衝撃にメイデンの美しい鼻腔から鮮血が吹き飛ぶ。だが、激痛に顔を歪めながらも、メイデンはニヤリと不敵に口角を上げた。
「――かかったね。僕に『直接触れた』よ、子猫ちゃん!」
「しまっ……! ――『超吸収』ですわ!!」
後方から叫ぶエリカの静止も虚しく、頭突きで接触した額の皮膚から、アリシアが根性で捻り出した最後の筋肉エネルギーが、掃除機のごとき猛烈な勢いでメイデンへと逆流し始めた。
「あはは! 美味しいよアリシア! 君のそのデタラメな生命力、最高のご馳走だ!」
「くっ……! 体が、動か、ない……!」
再び完全に干からびかけ、地面に膝をつきそうになるアリシア。だが、その濁った瞳が、自身のブルマの裾にチクリと刺さっていた『青い髪の破片』を捉えた。
(待って……! これがストローの役割をしてるなら……これを抜けば!!)
「なら、これだぁぁぁッ!!」
アリシアは残った指先の力で、ブルマに刺さっていたメイデンの髪の毛をフンッ!! と力任せに引っこ抜いた。
「ん? ……あれ? あれれ?」
アリシアは自分の両手をグーパーと動かしてみる。しかし、体は鉛のように重いままで、スタミナが戻ってくる気配は一切ない。
「……ふっ、あはははは! 傑作だね!」
頭突きで鼻血を流しながら、メイデンが腹を抱えて爆笑した。
「まさか君、とられたスタミナが、その『髪の毛を抜いたら自動的に戻ってくる』とでも思ったのかい?」
「えっ!? 違うの!?」
「当たり前でしょうが! この脳筋村娘!」
エリカが絶望の表情でツッコミを入れる。
「ドレインされたエネルギーは、すでに僕の肉体の一部としてチャージし続けている!ストローを抜いたって、コップの中のジュースは戻らない。抜いたところで、これ以上の君からの吸収が止まるだけだよ!」
「そんなぁーっ! ゲームのボス戦なら、触手を壊したらステータスが元に戻るのがお約束でしょーが! 仕様が不親切すぎるよこの世界!!」
完全なる計算違い。
スタミナは完全にゼロ、頼みの綱の髪の毛ブーストも不発。
14位のメイデンを前に、30位のアリシアは今度こそ一歩も動けない完全な『詰み』の状況へと追い込まれてしまった!




