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第28話:15位以下の反逆

「――こうなったらアリス! 貴女だけでも叩き潰すよ!」



限界を超えたアリシアの喉から、野生の咆哮が迸った。

コースを逆行する風の中に、実況ドローンの追加アナウンスが紛れ込む。



『10万メートル走、後続集団に異変! 現在14位を走行中のアリス・メイデン、その背後にアリシアが急接近中!』



そう、アリス・メイデンの順位は『14位』。

そしてこのレース、なんと15位以下を走る全令嬢たちの体操着には、一様にあの青い髪の破片が突き刺さっていた。つまり、メイデンは上位陣のバグ使いには手を触れず、自分より後ろの人間から『だけ』根こそぎスタミナを吸い尽くして順位を維持していたのだ。



「他人の汗と涙で走るイケメン令嬢なんて、悪役(ヒール)としても品性がありませんわ!」



横では、エリカがジェットパックの安全弁を素手で叩き壊していた。過負荷で赤い火花が散る。



「アリシア、わたくしの残った魔力、貴女のブースター(推進力)として捧げますわ! 付き合って差し上げますわよ!」


「ありがとう、エリカ! いくよぉぉぉッ!!」



エリカが最後の一滴まで絞り出した爆発的な魔力噴射が、アリシアの背中を強烈に押し出す。同時に、アリシアは『スタミナがないなら、筋肉そのものを自壊させて動かす』という、人間の規格を無視した荒技に打って出た。

地面がアリシアの足の踏み込みに耐えかねて、30キロ地点にして最大の爆発を起こした。



「えっ――!?」



14位の安全圏をツヤツヤした顔で走っていたアリス・メイデンが、背後からの凄まじい風圧と、立ち込める土煙に驚愕して振り返る。

そこには、白目を剥き、歯をガチガチと鳴らしながら、時速マッハのゴリラのごとき速度で突っ込んでくるアリシアの姿があった。その後ろからは、煙を吹くジェットパックにしがみついたエリカが


「おーっほっほ!」


と怨念のような高笑いを響かせている。



「な、何だいその速度は!? 君たちのスタミナは、僕が全部吸い尽くしたはず……!」


「吸い尽くされたなら、奪い返すまでだよ! メイデンさん!!」


「ちょ、来るな! 来るんじゃない……!」



他人のエネルギーで着飾った美しきランカーの顔が、初めて恐怖に染まる。

残り、25キロメートル。搾取されていた30位の底辺令嬢たちによる、14位の吸血鬼への凄惨な『お礼参り』が幕を開けた!

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