第27話:絶望の30キロメートル
実況ドローンの冷徹な音声が、灼熱のコース上に響き渡った。
『10万メートル走、中間発表! 現在のトップは生徒会書記、2位アリス・メイデン、3位エヴェリン! ――そして、1年B組アリシア、40人中30位!』
「30位……!? 下から数えた方が早いくらいなんて……!」
残り、30キロメートル。
普通なら絶望して足を止める距離だ。ましてや、アリス・メイデンの『超吸収』によって、アリシアの身体のエネルギーは文字通りすっからかん。
喉はカラカラに乾き、視界はチカチカと明滅している。
「ハッ、ハッ……あの青髪イケメン……! 人のスタミナを美味しいところだけ吸い取っていきやがってですわ!」
横では、同じく魔力を吸い尽くされたエリカが、出力を失ったジェットパックをボロ雑巾のように引きずりながら、執念だけで一歩ずつ足を前に進めていた。
「アリシア……わたくし、もう歩くことすら……限界ですわ……笑う元気も、ありませんわ……」
「エリカ、しっかりして! 諦めたら、そこで試合終了だよ! って何か別の漫画で見た気がする!」
アリシアは自分の体操着の袖に刺さっていたメイデンの髪の破片を、爪で無理やり弾き飛ばした。
これ以上のドレインは防げる。だが、すでに奪われたスタミナが戻ってくるわけではない。
バグ技で摩擦ゼロのまま物理法則を無視して滑っていく書記。
他人のエネルギーで肌をツヤツヤにさせながら爽快に駆けるメイデン。
直立不動のまま時速200キロで爆走するエヴェリン。
前方を行く『悪役令嬢』たちの背中は、遥か彼方。
薪割りで鍛えたアリシアの筋肉が、生まれて初めて『もう動けない』と悲鳴を上げていた。
「……ううん、まだだよ。私は『最強の悪役令嬢』になって、あのスカした生徒会を全員ボコボコにするんだから……! こんなところで、へばってられるかぁぁぁッ!!」
ボロボロの少女は、濁った瞳に再び不屈の野生の炎を宿し、気合だけで30キロ先のゴールを見据えた。




