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第20話:理不尽なる摩擦ゼロの世界

「認めない……。あんな村娘も、規律を乱すバレット組も……全員、私のこの『速度の向こう側(ケツワープ)』で置き去りにして差し上げますわ!」



凄まじい音を立ててお尻で爆走する生徒会書記。だが、アリシアは走るうちに、ある奇妙な事実に気がついた。



[おかしい……。あんなにお尻を地面に擦りつけていたら、普通は体操着が摩擦熱で消し炭になるか、お尻の肉が爆発するはずだよ! なんであの人、涼しい顔をしてるの!?]



その疑問に答えるように、書記の周囲の地面がツルツルとした異常な光沢を放ち始める。

そう、これこそが彼女の真の固有魔法。

お尻をバグらせて加速しているように見えたのは、その能力を極限まで応用した結果に過ぎなかった。彼女の魔法は、触れたあらゆる物体の**『摩擦の消失(フリクション・ゼロ)』**。



「私の前において、空気抵抗も、地面の摩擦係数もすべて『ゼロ』。熱も発生しなければ、スピードが衰えることもありませんわ。つまり、最初にほんの少し後ろへ弾むだけで、私は無限の推進力を得るのです!」



物理法則のストッパーを外された書記の身体は、永久機関となってコースを突き進む。エヴェリンの『銃妄想ガンライズ』によるスーパースライドすら、摩擦のない書記の絶対速度の前には、じわじわと引き離されていく。



「くっ……! 摩擦がないなんて、銃の反動を利用した私の慣性制御すら滑って機能しませんわ!」



エヴェリンが歯噛みする。



「あはは! 面白いね、それ!」



だが、その時。摩擦が消え去り、誰もが足場を失って制御不能になるはずの氷上のごとき超高速領域に、ドタドタと力任せに踏み込んでくる影があった。



「なっ……何ですって!?」



書記が驚愕して振り返る。そこには、摩擦が消えたはずの地面を、文字通り足の筋力で強引に掴んで走るアリシアの姿があった。



「摩擦がないなら、地面を思いっきり凹ませて、そのフチを蹴り飛ばせば進めるよね!」



アリシアが足を一歩進めるたびに、摩擦ゼロの路面が物理的に爆裂し、クレーターが形成されていく。摩擦という概念を、純粋な質量兵器(フィジカル)で解決する令嬢の登場に、書記の冷徹な仮面が初めてひび割れた。


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