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第2話:最近の悪役令嬢と来たら

悪役令嬢。それはかつて、物語の引き立て役として主人公を虐げ、最後には断罪という名の破滅を掴まされる、哀れな敗北者の代名詞であった。

しかし! 現代の潮流はそれを許さない!

なんやかんやでいい人!

なんやかんやで実はまとも!

そんなラノベが流行った!

そして!承認欲求が若者のメインストリームとなった今、悪役令嬢こそが華! 踏みつけられる側より、踏みつける側の美学! モブ主人公の陰に隠れるなど、SNS全盛のこの時代には耐え難い屈辱ッ!

今、乙女たちは等しく願う――『私が一番、悪く輝きたい(究極のワル)』と!

例示学園の廊下。そこは最新のプロジェクションマッピングで常にバラの花びらが舞い、生徒たちのスマホには「悪役令嬢度スコア」がリアルタイムで表示される



「ごらん遊ばせ、あのアリシアとかいう新入り。ただの村娘のくせに『最強』だなんて……笑わせるわ」



取り巻きを引き連れた一人の令嬢が、スマホをかざしながらアリシアを嘲笑う。

その令嬢の背後には、物語の主人公(ヒロイン)らしい、おどおどした少女がいた。



(……あーあ、普通の作品だったら、あの子が主人公なのに)



アリシアは廊下の隅でモキュの塩焼きを齧りながら、いじめられている少女を眺める。

だが、アリシアの視線はすぐに別の方向へ向いた。



「さてと。……そこにいるんでしょ? 隠れてないで出てきたら?」



アリシアが壁の死角に向けて言う。

シュバッ、と高速でスライド移動してきたのは、縦ロールをドリル状に補強し、サイバーな扇子を構えた一人の令嬢、**雷電寺(らいでんじ)エリカ**だった。



「ふん……。察知能力だけは一人前ですわね」



エリカは扇子を展開した。そこには悪逆無道(あくぎゃくむどう)の文字がネオンで輝いている。



「新入生、貴女は何もわかっていませんわ! 悪役令嬢とは、虐げ、虐め、壊すもの! 他者を踏み台にしてこそ美しく咲く花ッ! 最近の若いもんは、悪役の重みというものを軽視しすぎていますわ!」



アリシアは眉をひそめ、食べかけの塩焼きを飲み込んで言い返した。



「……あのさ。あんたも私と似た年でしょうが。なんでそんなベテランの悪役みたいな言い方してんの?」


「なんですって……!? 私は英才教育からあなたとは違いますのよ! おーっほっほっほ!!」



エリカの背中のブースターが火を噴き、床の絨毯を焦がしながらアリシアへと突っ込む!

対するアリシアは、腰を落とし、拳に力を込めた。



「よくわかんないけど、私が最強になれば、それが一番の悪役(あくやくれいじょう)ってことでしょ!」



サイバー扇子と、丸太をも砕くアリシアの拳が激突した。例示学園の廊下に、不穏な電子音と肉体のぶつかり合う音が響き渡る!

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