第1話:えっ!私が令嬢に!?
「……ふんっ!」
辺境の村、朝の静寂を切り裂くのは、アリシアの薪割りの音だ。
斧を使わず、強化魔法による、手刀一本で大杉を両断する。それが彼女の日課だった。
「よし、これで今日の分は終わり。……ん?」
村の入り口に、不釣り合いなほどピカピカに磨き上げられたガルウィング仕様の装甲馬車が停まっていた。
中から出てきたのは、モノクルを光らせた筋骨隆々の執事。
「アリシア様とお見受けいたします。……あなた様のおじい様、故・グゥドゥー公爵は、かつてこの国の地下を支配した伝説の御方。あなたは、その正統なる後継者なのです」
「……ふーん」
アリシアは汗を拭い、水を一気飲みして答えた。
「わたし、実はすごい家系だったんだね」
「お、驚かれませんね?」
「まぁ……ラノベとかだとあるあるだし。逆に今まで普通に薪割ってたのが不思議なくらい」
執事は圧倒された。その肝の据わり方、まさに公爵家の血だ。
彼はアリシアに、おじい様の遺言状を手渡した。
ホログラムから、全身傷だらけの老紳士が浮かび上がる。
『いいかい? アリシア……。令嬢と生まれたからには、誰でも一生のうち一度は夢見る。地上最強の悪役令嬢そんな存在なるんだ。たとえどんな手段を使っても、なにごとも最強を目指すんだ……!』
「おじいちゃん……わかった。私、やるよ」
アリシアは瞳にドス黒い闘志を宿した。
彼女の解釈はこうだ。
「悪役令嬢つまり誰からも恐れられる、圧倒的な頂点ね!」
そして馬車に揺られること数時間。
辿り着いたのは、お嬢様たちが優雅にティータイムを楽しむ学び舎……ではなく、「私立・例示学園」
そこは、最新の魔法技術と、現代兵器、そして古流武術が混ざり合う、ハイブリッド型の令嬢養成所だった。
校門の前では、すでにバチバチと火花が散っている。
ドレスの裾からサイバー義足を覗かせた令嬢や、魔法で浮かせた無人機を日傘代わりに連れた令嬢たちが、互いを威圧していた。
「ここが、例示学園……」
アリシアは門をくぐり、中庭の噴水の上に飛び乗った。
周囲の令嬢たちの視線が集まる。
「ごきげんよう、皆様! 私は今日からここへ来たアリシア!」
彼女は拳を固め、水を殴りつけた。
そして衝撃波だけで噴水の水が滝のように舞い上がった。
「私、ここで『最強の悪役令嬢』になるわ! 文句があるやつは、全員まとめてかかってきなさい!!」
その宣言は、学園中にスピーカーで中継された。
学園のモニター越しに、ニヤリと笑う影がある。
同じく「最強」を自称する者、たちだ。
「面白い新入りが来たじゃない……。教育せてあげましょう」
現代魔法と暴力、血まみれの社交界が、今、幕を開ける!




