第18話:加速のバグ魔術
「たかが爆発ごときでリタイアなんて、我が校の令嬢としては失格ですわ!」
サイバー手榴弾の爆炎をドレスでなびかせながら、先頭を突っ走る令嬢――エヴェリンが、高笑いと共に自身の固有魔法を展開した。
彼女の魔法は『銃妄想』。
手にした日傘や扇子、果ては拾った石ころに至るまで、自身の脳内妄想に沿ったあらゆる超近代重火器へと変貌させる!
「意見は同じですわ。ですがエヴェリン、貴女の銃火器マニアぶりには付き合えても、そのスピードは少々遅くてよ!」
凄まじい爆音を立て、ジェットパックのエリカがその真上を追い抜いていく。
「そう来ると思いましたわ! 飛行ユニットに勝る、地上走行の秘技をお見せしましょう! 『スーパースライド』!!」
エヴェリンが不敵に叫ぶ。
次の瞬間、彼女の目の前に、コース上に設置された障害物の看板が現れた。
エヴェリンは『銃妄想』で出現させた手榴弾を足元に起爆させ、お手製の盾で防ぐと同時に、看板に向けて「つかむ」動作を極限のフレーム単位で入力した。
発動後は、ただRボタンを押し続けるだけ――。
「なっ……何アレ!? すごいスピード! 見た目はただの棒立ちなのに、ものすごい勢いで滑っていくよ!」
後ろから追いかけていたアリシアが、驚愕のあまり目玉を飛び出させた。
エヴェリンは走るモーションすら起こさず、ただ直立不動の姿勢のまま、物理法則を無視したデタラメな超速度で路面を滑空し、瞬く間にエリカのジェットパックすらぶち抜いていったのだ。
「フフフ、これぞ世界に遺されたグリッチ!またの名を『ボムスライド』ですわ!!」
「ずるい! 完全に世界のルールをバグらせてるじゃない!」
アリシアのツッコミなどどこ吹く風、エヴェリンは直立不動のまま時速200キロを超えて爆走していく。
先生の目が届かないのをいいことに、10万メートル走は『走る』という概念すら崩壊した、世紀末のバグ技大戦へと突入していた。




