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第16話:開会式と空振りの会長

遮るもののない直射日光の下、校長先生の挨拶は実に1時間30分に及んでいた。

だが、グラウンドに整列した生徒のほとんどは、その話を右の耳から左の耳へと受け流していた。

当たり前だ。この例示学園は、表向きは『優雅な令嬢』を輩出するための教育機関であり、国から『悪役令嬢を育成せよ』などという破滅的なカリキュラムを組まされているわけではない。

……つまりどういうことか?

この学園の過激な校風は、単に『気がついたら自然と悪役令嬢が集まりまくって野生化した』結果なのだ。さらに悪いことに、校長や教師陣は極度の面倒くさがり。授業以外の仕事を一切拒破するため、行事の運営は最後の書類にハンコを押すこと以外、生徒会に一任(まるなげ)されていた。



「……眠いですわ……zzz……」



限界を迎えたエリカが、アリシアの肩にコトンと頭を預けて完全に意識を手放した。ジェットパックの重みもあって、地味に重い。



「ちょっとエリカ、人の肩で寝ないでよ。重いし、それに周りの視線が……」



アリシアが困惑して周囲を見回すと、隣のクラスの令嬢たちが、血走った目でこちらの様子をスマホで連写していた。



「あら^〜! 百合ですわ!」


「大変よろしくてよ! 尊さで脳がバグりますわ!」


「えーい! 私、ちょっとあの二人の間に入って、よりいい雰囲気(ハプニング)にしてきますわ!」


「まともな令嬢(ヤツ)が一人もいない……!」



アリシアが戦慄する中、一歩後ろで『αC-38』を隠れてふかしていたサクラが、呆れたように笑う。



「はは……相変わらずだねぇ、ウチの学校の『まとも』な令嬢たちは……」



その時、マイクのハウリング音がグラウンド一帯の空気を引き締めた。校長からマイクをひったくるようにして、生徒会長レインが朝礼台の前に立つ。その瞳には、隠しきれない戦闘狂(バトルジャンキー)の光が宿っていた。



「全校生徒、静粛にッ!! いいですか! 我が例示学園において、弱さはそれ自体が罪! 強き者こそに価値がある! 強くなりなさい! 無敵に!」



レインの言葉は全校生徒を鼓舞するものだったが、当の本人はすでに視線を激しく泳がせていた。

彼女はウズウズしていたのだ。この体育祭という合法的な戦場で、かつての戦友であり、今や『初心者狩り』に身を落としたエリカと、ついに直接拳を交えることができる。その歓喜に、全身の血が沸き立っていた。

しかし、レインはまだ知らなかった。

エリカが、自身のエントリーしている生徒会種目『ヘビィ大玉転がし』ではなく、アリシアと同じ『10万メートル走』という全く別の修羅場に参戦しているという残酷な現実を――。



「ふふ……待っていなさい、エリカ……」



ステージ上で一人、見当違いの方向へ向けてドス黒いオーラを放つ会長。

すれ違う思惑と溢れるのエネルギー!例示学園の血塗られた体育祭が、ついに幕を開ける!

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