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第12話:命の保証はない歓迎の味

「……あ?」



一斉に突き刺さる、電子タバコの煙よりも煙たい視線。だが、アリシアが気圧される前に、VRゴーグルを頭に跳ね上げた一人の令嬢が、気だるげに歩み寄ってきた。



「新入り。これあげるさね」



「え? あ、ありがとう……?」



手渡されたのは、一見すると何の変哲もない、市販の水のペットボトルだった。昨日の滝行とケーキの化学反応で喉がカラカラだったアリシアは、疑いもせずキャップを開け、勢いよく口に含んだ。



「うげぇェェェェ〜〜〜〜ッ!!」



飲んだ瞬間、アリシアの脳裏に走馬灯が駆け巡った。薪割りで鍛えた強靭な精神力が一瞬で瓦解するほどの、圧倒的かつ破壊的な不快感。あまりの衝撃に、アリシアは膝をついて激しく咳き込んだ。



「ごふっ、げほっ……! な、何これ!? 腐った雑巾を煮詰めたような……というか、とにかくすごくまずい!!」



涙目でボトルを睨みつけるアリシアに、ドリンクをくれた令嬢は感情の消えた目で淡々と告げた。



「それかい? 『めろしす限界集落味』さね」


「めろしす限界集落味!?」



聞き覚えのなさすぎる単語にアリシアが叫ぶ。令嬢はさらに指を一本立て、その恐るべき成分を補足した。



「……シュールストレミングと、ドリアンと、ミミズを合わせた味さ」



「最後!! 最後のやつ、完全にただの生物じゃん!!」



お嬢様言葉の『お』の字もないアリシアのツッコミが、不気味なB組の教室に響き渡る。

だが、周囲の不良令嬢たちは笑うどころか、アリシアがそれを『吐き出さずに飲み込んだ』という事実に、息を呑んでどよめいていた。



「……信じられない。あの『限界集落』を一口で耐えきるなんて」


「やっぱり、セレナ様を胃袋でねじ伏せたっていう噂は本物ですわね……」



どうやら、これはB組流の、新入りに対する『洗礼()』だったらしい。



「まぁ、死ななかった合格。よろしく、アリシア。私はサクラ。この『B組(バレット)』の組長ヘッドやらせてもらってる」



サクラは電子タバコをポケットに収め、不敵に笑った。

普通の村娘から、気づけば毒物耐性持ちの化け物扱いへ。アリシアの最強悪役令嬢への道は、クラスメイトのチョイスする栄養補給の時点で、すでに前途多難を極めていた。

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