第115話:憎悪と牙
「ふーん。でもさ、アイツらはこの150年間で、日本人を『間接的に』虐殺し続けてきたんだよ?」
凛は青白い球体の中で、嘲笑うように首を傾げた。
「奪い取った金と都合のいい移民政策で、本来生まれてくるはずだった新しい命の芽を摘み取って……少子化の歯止めすら利かなくさせて、この国をじわじわ殺してきた。直殺か間接殺かの違いだけで、やってることは私以上でしょ?」
「――それでも! 私たちはこうして生まれた!!」
ミカムラは胸に手を当て、血を吐くような叫びを凛へぶつけた。
「過去がどうあれ、私たちは今ここに生きている! 頼む……今の私たちを、この時代に生きる人々を信じてくれないか!!」
ミカムラの切実な言葉に、凛の笑みがすっと消えた。冷ややかに見下ろす瞳に、蔑みの色が混ざり込む。
「……なるほどね。完全に『牙』を抜かれたわけだ、今の日本人(子供たち)は」
「牙など必要ありませんわ!」
エリカが凛の視線を受け止め、一歩前へ踏み出す。
「どんな理由があろうと、人間が人間を殺していい道理などありませんわ!!」
「あははっ! 綺麗事ばっかり!」
凛の瞳に、禍々しい狂意と抑えきれない怒りの焔が宿る。
「ならさぁ! お前は大切な友人や家族が殺されても、何とも思わないわけ!? ……私は思ったよ! 怒りで頭がおかしくなりそうだった!!」
凛が両腕を広げると、バリアを形成していた青白い球体が爆発的な魔力を放ち、周囲の空間を激しく歪ませた。
「私たちを都合のいい道具として手に入れようとした愚民ども……っ! 私たちの存在を恐れて、裏でコソコソ手を引いた畜生どもに……私たちの『大切な友』が殺されていったのを、この目で見てきたんだよ!! ねぇ……ッ! なのに、黙って殺されろって言うの!?」
150年前、圧倒的な力を持ちながらも追い詰められ、奪われ、封印された覚醒者たちの怨嗟。
正論と絶望が複雑に交錯する中、凛の放つ凄まじい衝撃波が、少女たちを呑み込もうと牙を剥いた。




