第114話:正義と狂気の境界線
倒れ伏すレッドエコーズの残党を追撃するように、突如として上空から遠距離ミサイルが飛来した。
「能力者がお困りとあれば! ――ドーン♪」
弾幕が降り注ぐ直前、頭上から飛来した謎の青白い球体が凄まじい質量と速度で路面をすり抜け、レッドエコーズの男たちを容赦なくまとめて轢き潰した。絶叫すら残さず、路面が一瞬にして凄惨な現場へと変貌する。
「あーあー、きったない! やっぱり復活したてだと操作が難しくってダメだなぁ」
煙の中から姿を現したのは、無邪気な笑みを浮かべた少女ーー彼女もまた、150年前の封印から目覚めたライラの配下の一人だった。
「……能力者至上主義の覚醒者か」
ミカムラが怒りに打ち震えながら、冷たい視線を凛に向ける。
「そう!私は凛ん? 何その顔? 困ってたから助けてあげたんだよ? お礼くらい言ったらどう?」
「……何人殺した」
凛は首をかしげ、いたずらっぽく微笑んだ。
「わかんなーい♪ だって、能力者じゃないこと自体がこの世界じゃ『罪』なんだからさ。だからこれは、そのための罰だよ♪」
「――メルトダウン!!」
ミカムラの身体から沸き立った高熱の魔力波が、一瞬にして周囲のコンクリートを溶かし尽くし、凛に向かって一直線に放たれる。だが――
「バリアシールド♪ ……ねえ、君たちだってさっきこいつらをボコボコにしてたじゃん。自分たちの暴力を棚に上げて、私だけ悪者にする気?」
凛を覆う青白い球体のバリアが、ミカムラの高熱魔法を完膚なまでに弾き返した。
「その通りだ……! 私たちだって暴力を振るった! でも――だからと言って、命を奪っていい理由には絶対にならない!!」
ミカムラの頭裏に、あの惨劇――『魔の7日間』の記憶が蘇る。学校の教頭が言い放った言葉が真実なら、ライラというたった一人の身勝手な復活劇のために、最愛の妹・ユウは命を奪われたのだ。この狂気を容認することなど、天地がひっくり返ってもできない。
「……伊達に150年前にまとめて封印された怪物どもではない、ということですわね……」
扇子を握り直すエリカの額に、冷や汗が伝う。
目の前に立ち塞がる覚醒者たちの無邪気な狂気と、命に対する圧倒的な不感症。
少女たちは怒りと激痛を抱えたまま、ツリーの足元で新たなる強敵との戦闘へと引きずり込まれていく。




