第111話:能力者優生思想
「む……皆さん、なんか光ってらっしゃいますわね」
ネオ東京ギャラクシーツリーへと続く大通りを進む最中、エリカが隣を歩く仲間たちの顔を覗き込んで首をかしげた。
「そういうエリカだって……あれ?」
アリスが指をさす。レインも、サクラも、ミカムラも、そしてエリカ自身も――彼らの瞳の奥には、ツリーの頂から放たれる未知の波動に共鳴するかのように、ほのかな青紫色の光が宿っていた。
だが、街中に視線を向けると、その異変はより露骨な形で現れていた。
行き交う人々の中には、瞳が妖しく光り輝いている者と、まったく光を宿していない者がはっきりと二分されていたのだ。
「――おい! アイツ、目が光ってねぇぞ!!」
「日本人じゃねぇ! 偽物だ! 殺せ!!」
「袋叩きにして追い出せ!!」
突如として響き渡る怒号。
路地裏から飛び出してきたのは、肩に『極』と書かれたデカい腕章を巻きつけた男たちの集団だった。彼らは瞳を光らせていない哀れな一般人を地面に押し倒し、集団で激しい暴行を加えている。
「おい! やめなよ!!」
見かねたミカムラが前へ踏み出し、怒声を浴びせた。
集団のリーダー格がギロリとミカムラを睨みつける。
「あん? 我ら『能力者優生思想』に逆らう気か……? チッ、いや、あんたも目が光ってるな。能力者か……ならいいや」
男たちは吐き捨てるようにそう言うと、倒れた被害者を蹴り飛ばして立ち去っていった。
「……酷いものですわね」
エリカが冷たい眼差しで男たちの背中を見送る。
『能力者優生思想』――ライラの降臨とともに急増した、日本人の血脈と能力の優位性を謳う過激派集団。
その中には、ライラの理念に純粋に傾倒する者もいれば、単に『ライラ』という圧倒的な存在の威光を借りて街で暴れたいだけの不貞の輩も混ざっていた。
しかし、暴力の矛先がどこへ向かおうとも、その根底に流れる『非能力者=偽りの日本人を排除する』という選別思想は、間違いなくライラが掲げた理想そのものだった。
「急ぎましょう。この狂気が国全体を飲み込む前に……ツリーの頂へ向かいますわよ!」
レインの鋭い号令とともに、少女たちは歪んだ正義が暴走する街を抜け、宇宙へと聳え立つ決戦の塔へと足早に駆け出した。




