第110話:選別の光と隠された影
ネオ東京ギャラクシーツリーの最上層。宇宙の闇が間近に迫る展望フロアの静寂の中で、ライラは手のひらの上で黒く輝く小さな塊を弄んでいた。
「さて……これの出番か……」
「それは……?」
傍らに立つ校長――クリミが、物珍しそうに覗き込む。
「隕石の欠片さ。端から見たら、能力者と外国人の見分けなんてつかないだろう? ……だが、これを使えば話は別さね」
ライラは愛おしそうに欠片を撫でると、ツリーの中央に鎮座する巨大な制御機械のメインスロットへ、迷いなくそれを突き刺した。
欠片がセットされた瞬間、機械の基盤が眩い青紫色の光を放ち、634キロメートルに及ぶ塔全体へと膨大な波動が伝播していく。
「元々、このツリーの設計をしたのは私でね。最初は『日本人なんてゴマンといるんだから、能力者だけにしか届かない通信装置でも作ろうか』程度に思っていたんだがね……。血が薄まりきった今となっては、これを走らせるのが一番手っ取り早い」
「確かに……! 少しでも日本人の血が入っている者ならば、この波動に脳波が共鳴して反応するはず……!」
クリミが感嘆の声を上げ、ミオンも深く深く頭を下げた。
「流石です、ライラ様……!」
「……ねえ、ミオン」
ふいにライラが足を止め、冷ややかな視線をミオンへと向けた。
「何か、アタシに隠してないかい?」
「い、いえいえ! そんな滅相もございません!」
一瞬だけミオンの肩が跳ね、汗が首筋を伝う。だが、ライラは深追いすることなく、ふっと口元に不敵な笑みを浮かべた。
「まあいいさ。アタシたちが目指すのは、まずは失われた『日本人』の再生……そして、国連どもが貪る既得権益の完全なる破壊だ。150年前と同じさ……存分に楽しもうじゃないか」
塔の頂から放たれる選別の波動が、世界全土を包み込もうとしていた。




