第104話:奪われた国と失われた血脈
例示学園支部――防衛の要であったはずの司令室は、重苦しい沈黙と鉄の匂いに満ちていた。
「まずい……奴が、これほどまでに強力だとは……!」
モニターに映し出された壊滅惨状を前に、汗を流して震える支部長。その背後に、いつの間にか立ちすくむ影があった。
「でしょ?」
「なっ――!?」
ライラは無造作に腕を伸ばすと、支部長の首根っこを猫のようにひっつかみ、空中へと吊り上げた。
「ぐっ……殺せ……!」
絶望に顔を歪める支部長に対し、ライラは心底呆れたように目を細める。
「くっころ? 女騎士じゃないと萌えないな……じゃなかった」
ライラはポッケからスマートフォンの端末を取り出すと、操作して録音モードを起動した。
「日本の現状を教えてもらおうか?」
「なに……!?」
「おかしいじゃないか。あの日、日本人は全員すべからく能力者になったはずだ。それなのに、私を相手にするのに能力者を使わず、たかがAIの機械人形兵士に任せるなんてね」
「ならば……喰らえぇぇッ!!」
支部長は死角から隠し持っていた小型バルカン砲を引き抜き、ゼロ距離でライラへ連射した。
激しい銃声が響く。だが、放たれた高圧の銃弾はライラの肌を一筋も傷つけることなく、彼女の顔の表面でぺたぺたと奇妙にへばりつき、ポロポロと虚しく床へ落ちていく。
「能力者なら、己の能力で戦いなよ……。いや、待て……お前、まさか……能力者じゃないのか?」
「能力……!? そんなもの、ごく一部の『選ばれた存在』しか持てるはずが――」
支部長が言い切るより早く、ライラは一切の躊躇なくその首を捻り折った。冷たくなった肉体を床へ放り投げ、ライラは眉間に深いシワを寄せる。
「日本人は、全員が能力者のはず……。だとしたら……ミオン! まさか……!」
背後に控えていたミオンが、重々しく頭を下げた。
「……はい。だからこそ、私は貴方様を蘇らせたのです……。この国は最早、私たちが変えようとした日本ではありません。……『国連』の支配下におかれた、能力を奪われし傀儡の国なのです」




