第102話:世界の変革、その前奏曲
息を切らし、土煙を突き抜けて駆け込んできたのは校長だった。
その顔は歓喜と畏怖で大きく歪んでいる。
「ああ……はぁ……ライラ様……っ!!」
ライラはだるそうに視線を向け、記憶の糸を手繰り寄せるように目を細めた。
「あ……クリミ?」
「はいっ!!」
「年取ったね〜」
「まぁ……ライラ様より少し先に封印が解けまして、それなりに歳月を重ねてしまいましたので……」
「なるほどね。木久蔵のやつ、アタシ以外の仲間も小分けに封印していたってわけか……」
納得がいったように頷くライラのかたわらで、ミオンがハッと空を仰ぎ、緊張感を走らせた。
「ライラ様! 軍が来ます! 学園の敷地を完全に包囲しつつあります!」
「へぇ……対応だけは早いじゃん」
ライラはフッと口元を緩めると、ゆったりとした取り立てでその場にいる少女たち――満身創痍のアリシア、気絶したカシウスを優しく膝枕するレイン、そして構えを解かないエリカたちを見渡した。
「君たちに1つ聞きたい。……アタシの仲間になるかい?」
静寂が場を包む。
無駄な問答を拒むような圧迫感の中、カシウスの頭を抱きかかえたまま、レインが毅然とした眼差しでライラを見上げた。
「……貴方がこれから何をやろうとしているのか。それによりますわ」
「あっそ……」
ライラは興味を失ったようにあっさりと肩をすくめた。
「じゃあ見ててよ。この国……そして、この世界を変えるその瞬間をさ」
それだけ言い残すと、ライラは歩みを進めた。
その足取りはあまりにも軽く、まるで散歩にでも出かけるかのようだった。
学園の正門前――そこには、最新鋭の兵器をズラリと並べ、重厚な威容を誇る自衛軍の大部隊が展開していた。その群勢の前に、ライラはただ一人で悠然と姿を現したのだった。




