↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28歳の息子と13歳の母の異世界冒険譚  作者: 相沢春人
第8章 エルフの里、再び

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/149

日常へ、駆ける

「ルートさん、まず一人、この家に連れて来てくれませんか? リビングで準備しますので」

「ん。了解、トトで良いかな?」

「はい、トトでお願いします。アプリ、一緒に来るかい?」


 こくりと力強く頷いた娘は、ベッドからぴょん! と降りて、僕の手を握った。


「ファイト! サム、君ならきっと治せる!」

「自信を持ってね、あなた」

「うん。行ってきます」


 ウィンリィとコーラのいる部屋を後にして、リビングに向かう。


 準備と言っても、トトが座る一人がけのソファを部屋の中央に持ってくるだけだ。

 

「アプリ、もしかしたら、凄く時間がかかるかもしれないし、今回は、上手く術がかからないかもしれない。でも、そうなったとしても、治せる術式を必ず考えるからね」


 全属性魔力による身体汚染……これに、僕の回復魔法が効く保証はどこにもない。やってみて確認するしかないのだ。


「うん……大丈夫、サムを信じてるから」


 ニコッと笑って見せた娘の期待に絶対に応えたい!

 

 ガチャ……


「サム、連れてきたよ」

「何なんだよ! 俺だけって! 説教なら聞かないからな!」


 傍に抱えられて、必死に手足のない体を揺らすトトに少し同情したが、恐らく暴れたのだろう。致し方ないか……


 持ち方とは打って変わって、優しくぽすん……とソファに降ろされたトトは、眉を寄せて、訝しむような目をルートさんと僕に向けたが、自分と歳の近いアプリに気付いて、バツが悪そうに表情を柔らげた。


「トト、だよね?」

「そうだよ! 何で知ってんだよ、気持ち悪い!」

「ごめん、偵察でね、君たちが領主邸で過ごすのを見てきたんだ」

「げっ……いつの間に……で、何の用なんだよ、おっさん」

「その手足、治せるって言ったでしょ? でも、全員にかける前に、僕の回復魔法が通用するのか、君で試させてほしいんだ」

「実験台、てことか。いいぜ。治せなくて、あいつらがぬか喜びなんてことになるよりは、マシだ」

「承諾してくれて、ありがとう。あ、術式をかけるにあたって、君の魔力を使わせてもらうね」

「別に構わねーよ。有り余ってんだし」


 トトを含む50人の『魔力の子』たちの魔力は、未だウィンターンの魔力装置に転送され続けている。

それでも、湯水のように無限に湧き出るこの子たちの魔力は、まさに無尽蔵。


 アプリの魔力を僕は何度か借りているが、転送先の、獣人の村の瘴気を巻き上げる風の魔法への影響は、全くないとイオから確認済みだ。


「じゃあ、かけるよ」


 トトの前に膝をついて、彼の手足のあったはずのところを撫でてゆく……

 頭の中で、あったはずのもののイメージを固めて――魔法を作動させた! 


 僕の手のひらと、トトの体が光を放つ!


「!?っ……手が……脚、が……!」


 トトの手足の付け根から、見る間に再構築されていく肌色――よし、上手くいっている!


 以前、トトたちが使っていた魔力を吸い出す首輪は、体に溢れた魔力を吸う仕組みだった。


 今は、新しく付けた魔力転送の腕輪が、魔力容器から直に魔力を転送している。


 つまり、全属性の魔力が体に溢れることがない。


 シュルンが回復士に診てもらった時は、全属性魔力の汚染に晒されている体だったから、発動しなかったのだ。


 それでも、残存していた魔力の残り香が、僕の術を押し戻すような感覚が少しだけある。

 油断は禁物だ。僕は、気を引き締め直して術式に集中した。


 欠損回復は、術者のイメージと、無事な体に残されている失った部位に纏わる情報――二つを結び付けて発動する高難度魔法だ。


 僕のイメージが揺らぐと、正しく再生出来なくなってしまう。

 頭の中には、治った足で元気に走り回るトトの姿。

 必ずここに!! 到達させてやる!


 体感時間にして、20分ほど経ち――僕は魔法を解除した。


 シュウン……と、僕の手とトトの手足が放っていた光が収束する。


 光がなくなって、現れたのは――


「俺の、手足……」

「ははっ! 見事」

「サム……凄い……」

「ふう。ちょっと触るね」


 大腿からふくらはぎまで、ぎゅっぎゅっと揉んで……足首を軽く回す。


「うん、ちゃんと再生されているようだ。トト、立ってみて」


 僕は、あらかじめ長に頼んでおいた子供用の靴を一足、トトの足元に置いた。


「……俺の、靴?」

「そうだよ。他のみんなの分もある。少し大きめだけど、細かいサイズ調整は、後で長がやるからさ。先ずは履いてみて、その足で立ってほしいな」


 トトは、戸惑いながらも、再生されたばかりの手で、靴を掴んだ。


「……」


 そのまま暫く、じっと靴を見つめていたが、意を決したように、それに足を通す。


「あ、あれ……上手く、結べねー……」

「私がやる」


 再生されたばかりの手だからか、はたまた、手を使うのが久しぶりで上手く動かせないのか、遊んでしまっていた靴紐を、アプリがしかと掴み、結んだ。


「あ、ありがと……えと、」

「私はアプリ。あなたと同じ『魔力の子』だよ」

「あ……そっか、そうなんだ……」

「トト、はい」


 アプリがトトの前に手を出した。


「立とう」

「あ、ああ」


 トトがアプリの手を掴み、アプリが小柄な体躯に見合わない力で、ぐいっとトトを引っ張った。


「わっ! お前、力強いな……あ……」


 足が地面についた、ただそれだけなのに――


「立てた……俺、自分の足で、立ってる……」

「うん。良かったね、トト」


 トトの顔が歓喜に染まって、紅潮していく。

 その時、よくやったと言わんばかりに僕の肩をルートさんが叩いた。

 

 そして、感激が最高潮になって吹き出したのか、トトは、「すっげー!!」と叫んで駆け出した!


「まっ! 待って! まだ再生したばかりで、走るのは!」


「あははっ!! 足、いてー! 骨? に響く〜〜!! はは、は……足……俺の……うっ、ぐすっ……やっったぁ……」


 部屋を一周して、僕らの元に戻ってきたトトは、ゼェハアと荒く息を吐き、おぼつかない足取りで、ふらふらとソファに座った。


「はあ、はあ、はあ……俺っ……もう、もう、こんなこと、出来ねーって、思ってた……あり……がと……ありがとう……うう……」


 そしてトトは、顔を手で覆って泣き出した。


「ふふ。再生したばかりの足で走っちゃうなんて、よほど感激したみたいだね、トト」

「ええ……」


 走れたのは、僕が『元気に走り回るトトの姿』を思い描いて術を込めたせいもあるのかも……しれない。


 ともあれ、僕の力でも、彼らを治せることが分かって、心底ほっとした。

 隣のアプリも、目尻に涙を溜めて、微笑み、自分のことのように嬉し泣きをしている。


「トト、時間はかかるけど、全員治すから。みんなの体が万全になったらさ、好きなだけ走り回って、たくさん遊んでね」

「うっ、うん! ぜっ、たい、だぜ!……えと、サム、さん……」

「うん、約束するよ。じゃあ、君たちの家へ行ってくるね」


 今日、全員治すことは、出来ないと思う。

 魔力を借りているとはいえ、集中力、想像力を消耗するこの魔法は、精度を保って使うには、限度がある。


 それでも、何日かかっても、必ず全員を治す――僕は、決意と覚悟をし直して、彼らのいる家へ向かった。

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「今後どうなるの!!」


と思ったら


下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から、作品への応援お願い致しますm(_ _)m


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。


何卒よろしくお願いいたしますm(_ _)m


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。