↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28歳の息子と13歳の母の異世界冒険譚  作者: 相沢春人
第7章 アイスエッジの動かぬ命

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/151

子守唄

 ウィンリィを抱き留めたルートさんが、漆黒の魔法銃をシュルンに向けた!


「待っ……て! インター!」


 血だらけの手で、その銃口を塞いだウィンリィ。

 僕は二人を結界で包み、シュルンには、反転結界を施す!


「なっ、何!?」

「動かない方がいいよ。その中、君が出す魔法全て、君に返ってくる仕様だから」

「っ!」


 シュルンは、頭の良い子だ。短い説明でも全て察したのか、顔が青ざめていった。

 無力化を見とめて、僕は、ウィンリィとルートさんの元へ走る!


「ウィンリィ! 見せて!」

「はっ、サム、だいじょ、ぶ……早く、離脱しよう」

「そんなこと! 早く見せ――」


 僕が伸ばした手を遮るように、ルートさんがウィンリィを抱き上げた。


「サム、行こう。傷口を塞ぐぐらいなら、移動しながらでも僕に出来る」

「ルートさん……!」


 彼から滲むのは、暗く、闇い、漆黒の怒り。

 そして――


「長き停滞の果てに、我、進む一歩を請う その歩は、走りとなり、やがて、一本の青き道とならん」


 ! 術で一気に走り抜けるつもりだ!

 僕は慌ててルートさんにしがみつく!


「電閃道(アウトバーン)!」


 青と白が散る中、最後に見えたシュルンの顔は、後悔が滲んだ苦悶の表情だった。


 廊下に出たところで、アプリを抱えたコーラと鉢合わせた!


「コーラ!」

「サム!」


 僕は精一杯、腕を伸ばして、アプリを抱くコーラと手を繋ぐ。


 電閃道でドアも門も強引に突っ切り、そこから一気に街道を抜け――あっという間に国境の一の門に着いた。


「リィ、もう少し我慢出来る?」


 壊れ物を扱うようにウィンリィを抱き直したルートさんに、ウィンリィは、青ざめているけれど、光の宿る瞳で力強く頷いた。


 僕は、ウィンリィの口元や服を濡らす赤を認識阻害で見えなくし、険しい顔のコーラと大きな瞳を揺らすアプリに目配せもして、一の門の扉を開ける。


「退国します」

「えっ? 点灯式の直後にですか!? 祭りはこれからですよ?」

「ちょっと、旅行の予定がこの後も立て込んでいまして……」

「あっ、そうですよね……異世界旅行者の方でしたね! なら、早くしないと!」


 何だかよく分からないが、受付のお姉さんは、急いで手続きをしてくれた。


「はい、これで完了です。再入国可能日は、ひと月後になりますけど、またいらして下さいねー」


 笑顔を作り、手を振って、門の外に出ると、何と、イオが来ていた。


「イオ!?」

「サム、帰りが遅かったので、何かあったのかと……!ウィンリィ!」

「イオ、コーラとアプリを連れて、海側から帰ってくれる? 僕とサムは、ここでリィの治療をしてから帰るから」

「分かりました。コーラ、アプリ、行きましょう。サム、認識阻害をかけておいてくれますか?」

「あ、うん」


 足早に去って行った三人の背を見届けることなく、僕とルートさんは、門からほど近い林に入り、認識阻害込みの結界を張った中で、治療を始めた。


「っ……サム」

「大丈夫だよ、ウィンリィ、右肺を貫通しているけれど、傷は小さい……から……」

「サム、僕の魔力を使って、最速で治すんだ」

「はい!」


 ルートさんのコートの上に寝かされたウィンリィの傷に手を当てると、傷口は、見る間に塞がっていったが、ウィンリィの頭花が、どんどん消えて行く。


 何でだ!? 魔力残数と、体の怪我は、関係がないのに! これは、別の要因が……!


「サム? どうしたの?」

「これ……魔法毒だ……」


 傷口ではなく、体の奥の奥――魂の中にある魔力の栓まで視界を広げる。

 僕ら魔導士は、皆、魔力の栓を持っていて、その栓を開閉することで、魔力を出力し、魔法を扱うのだが……


「魔法毒!? まさか、それって!」

「ええ。栓が汚染されていて……魔力が垂れ流しです……このままだと、魔力と一緒に魂まで、流れてしまう……でも!」


 それは、母の過去で、ルートさんがガレットから食らったものに似ていた。


「対処法を知っています! 大丈夫、ウィンリィは助かる!」


 あの過去で、見てきたルートさんを治療した回復士たちの方法を、術式を思い起こす!!


「先ず、栓の汚染を除去する……」


 栓同士を直で繋げるような、ガレットの使った高度なものではない――これなら、後遺症も残らずに治せるはず!


 僕は、ルートさんから借りた魔力で、練った渾身の汚染除去を栓に向けて放った。


 しかし、栓の強度が脆くなっていて、全力の除染にウィンリィの栓が先にもたなくなりそうで、やむなく止める。


「サム?」

「除染に栓が耐えられません……栓自体の回復をしようにも……汚染を除去しないと、回復魔法も届かない……」


 母の魔力容器は、元のサイズから、無理に広げたものだ。

 元々、この量の魔力を放出するのに、適さなかった栓は、摩耗が激しく、強度が落ちていたんだ。


 ブチィッ!


 音に、ルートさんの方を向くと、千切れた細い鎖と、その先の小さな手帳が目に入る。


「栓の強度を上げればいいんだよね……なら、フィジカルを整えよう」


 ルートさんが手帳を開く。


「お願いエリィ、リィを助けて」


 縋るようなその声。

 ルートさんの口から初めて聞く声音だった。


 彼の声に応えるように、手帳から、光が溢れて……

 ふわりと、ウィンリィに翳す僕の手に、細くか弱い白い手が被さった。


 あの過去で見たレモンイエローの髪に翡翠の瞳の少女が、僕に微笑む。


「エリィ……来てくれたんだ……もしかして、僕……けっこう重症な――」


 エリィの白く細い人差し指が、ウィンリィの口に添えられた。


 そして――


『いとしい、あなたへ、願う、この想いー

安らぎが、安寧が、永遠(とわ)に溢れますようにー


大事な気持ちも、君に置いていくよー

私のこの想いは、この身、朽ちても、あなたの心でー生き続けるのだからー

おやすみ、おやすみー大切なあなたー永遠に良い夢を――』


 それは、眠りの魔法だった。

 フィジカルを根本から回復させるのに、最善の魔法だ。

 瞼を閉じたウィンリィの表情がどんどん和らいでいく――


「エリィ……有難う」

「! サム、見えてるの?」

「はい、見えてます……レモンイエローの長い髪に、翡翠の瞳の優し気な少女が」


 慈愛に満ちたその瞳は、ずっとウィンリィを見つめている。


『……子守唄(ヴィーゲンリート)』


 歌い終わったエリィは、ウィンリィの額にキスを落とし、消えて行った。


「歌のおかげで、ウィンリィのフィジカルが全快しています。これなら!」


 フィジカルの回復に伴い、魔力栓の強度も上がっているはずだ。僕は一気に流し込む! 解毒の魔法を!


「汚染除去、完了! あとは、魔力栓の治癒だけ……」


 消えかけていた最後の頭花も、元の形を取り戻し、ウィンリィの治療は、無事に終わった。


「はあ、はあ、はあ……母さん、良かった……」


 ドサァッ!


「ちょっ、サム!? 大丈夫――」


 ルートさんの声がどんどん遠のいて行く。

 僕まで倒れて、二人抱えて、あの大峡谷の風降ろしを渡れるのかな……まあ、チートなルートさんなら平気か……


 そこで、僕の意識は途絶えたのだった。

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「今後どうなるの!!」


と思ったら


下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から、作品への応援お願い致しますm(_ _)m


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。


何卒よろしくお願いいたしますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。