決壊
「何をしてるの!?」
「!」
ドアを開けて入って来たのは、点灯式に出ているはずのシュルンだった。
「シュルン、黙っててごめん。僕たちはこの子たちを救出に来たんだ」
「救出?? 何を言ってるの?」
僕もルートさんも、手を止めなかった。
ウィンリィを信頼していたし、シュルンが何を言おうと、この子たちを連れて帰ることが目的だからだ。
「……助けに来たんだ。ここに50人も、魔力装置のために囚われてるって聞いたから」
「! 知っているの? この子たちの魔力のこと?」
「うん。『魔力の子』のこと、よく知ってるよ」
「知っていて……何で連れて行こうとしてるの!? あなたたちも! やめて! やめてよ! ここにいなくちゃ、この子たち、死んでしまうわ!!」
がしいっと、ウィンリィがシュルンを抱き止めた音が聞こえた。
こっちに来ないように羽交締めにしているのだろう。
「離して! ウィンリィ!!」
「死なないよ。今、二人が付けているのは、魔力転送の魔法具なんだ。その魔力の転送先も、今までと同じ、この下の魔力装置だよ。だから、この国は何も変わらないし、この子たちも自由になれるんだ」
「え……?」
「この子たちを繋いでいたのは、魔力爆発を防ぐためだったんだよね?」
僕もそう思った。シュルンから、罪悪をまるで感じなかったから。
「でも、もう大丈夫だよ。誰も爆発しない。僕が保証する」
シュルンが動いていた衣すれの音が聞こえなくなった。
……分かってくれたのか?
「……だとしても、"崩壊"の方は、どうするの? この子たちの体を見ればわかるでしょ? どんなに高性能な魔力吸収の魔法具を使っても、全属性魔力による肉体汚染は防げなかった! この子たちの手足は守れなかったのよ!!」
崩壊? 全属性魔力による汚染? 何の話だ??
「シュルン……この子たちの手足は、国が、王が、やったんじゃないの?」
「違うわ! 王は、そんなことしない! 恐ろしい人だけど、獣人は蹂躙したけれど、この子たちには、そんなことしてない!! だって――王は!
『魔力の子』なのだから!」
頭が真っ白になる。かろうじて、手を止めることはしなかったが……王が魔力の子? アプリと、この子たちと同じ?
「その御身に魔力汚染を受け続けても、唯一、無事な王にしか、この子たちを助けることは出来ないのよ……分かってよ……お願い」
シュルン側が抱えていた事情は、僕らが想像していたものよりも遥かに重いものだった。
"崩壊"の話を聞いた時から、僕の心臓も早鐘を打ち続けている。
目の前の『魔力の子』の首輪を外しながら考えた。
今のアプリと同じ年頃の女の子だ。
あどけない寝顔の下の体に、もちろん、手足は付いていない……
つまり――アプリの体も、もうすぐ崩壊を起こす
ということなのか??
「シュルン、それでも、大丈夫だよ」
慟哭する頭の中に、その声は、すっと響いた。
強く、透き通るようなウィンリィの声。
「サムは、凄腕の回復士なんだ。欠損だって治せるよ。だから――」
「欠損回復士だって、何度も外国から呼んだわ! でも、誰も治せなかった……魔力汚染で崩壊した体には、並の魔法じゃあ、効果がないのよ……」
欠損回復自体、並の魔法ではない。
でも、シュルンにとっては、治せなかった魔法は、"並"なのだろう。
「並じゃない」
「え?」
「サムは並じゃないよ」
『息子は並じゃない』
はっとした。ウィンリィの言葉が、記憶の中の母と重なる――
「僕は信じてる! 絶対に治せるって!」
『私は信じてる! 特上だって!』
あ、最後のは違った。
これ言った時、12国のお寿司にはまってたからなあ……母さん。
「そんなの……だって……信じられるわけない……」
「信じて、シュルン。約束する。絶対にこの子たちの手足は治るし、魔力汚染も起こさせない。サムなら、その術式が組める!」
「で、出来るわけ……」
「サムはアプリのお父さんだよ! アプリもサムを信頼してる! 友達のことを信じて、シュルン」
どっと、床に音が響く。
視界の隅で、ウィンリィの腕の中のシュルンが膝を付いたのが見えた。
「本当に出来るの? 王にもまだ、出来ていないのに……本当に?」
ぶつぶつと自問自答を繰り返し始めたシュルンの肩を、しゃがんだウィンリィが手で掴み、都度、「信じて」「大丈夫だよ」を言い続けた。
その間に、僕とルートさんでしていた保護が完了する!
「リィ! 行くよ!」
「うん! わかっ――」
ドッ!
立ち上がったウィンリィがルートさんの側へ走ろうとシュルンに背を向けた時だった。
「母さん!!」
「リィ!!」
ゴボッと血を吐いたウィンリィをルートさんが抱き留める。
「……行かせない、王にしか、きっと……救えないから……」
僕の胸をまた早鐘が打ち始める――
ウィンリィの胸を、シュルンが放った氷柱が貫いている光景を、目の当たりにして。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から、作品への応援お願い致しますm(_ _)m
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。
何卒よろしくお願いいたしますm(_ _)m




