ウィンリィと風の魔法
翌日、ウィンリィの風魔法修行が始まった。
ノア君は、午前中は長の指導を受けていて、午後はグレイと戦闘訓練。
アプリは、『魔力の子』救出に必要とのことで、まずは『魔力の子』である自分の魔力と他の人の魔力の違いを座学込みでイオに教わっている。
コーラは、エルフの里を見て回りたいと言い、一人でふらっと出掛けてしまった。
置いて行かれた僕は拗ねた気持ちで、みんなの修行を見学して回っていたのだが……
―――――
「魔法とは、正しく理解し、正しく唱えて使うもの。手練ほど詠唱を省略しがちだが、言葉にせずに使うなど無粋だな」
「正しく理解し、正しく唱えて使用するもの……」
長の言っていることは正論だが、無詠唱が当たり前の軍魔導士としては耳が痛い。
「力を絞り、余分な魔力をのせぬよう念じながら詠唱し、発動させてみろ」
ウィンリィは地面へ右手を向け、左手を添え、深く息を吸い込み、詠唱を始めた。
「春は強く、夏は穏やかに、秋はそっと、冬は厳しく、大気を揺らせ!――旋風!」
ひゅるるる……と、手のひらに収まるサイズのつむじ風が、地面に発生した。
「絞りすぎだ。小さきつむじ風を起こす魔法ではないのだぞ」
「す……凄い! これ、僕が出したの!? おじさん見て! これ、僕が出したんだよ!」
「……そんなに嬉しいのか……なら、良い」
母――ウィンリィからしたら、小さな風であっても、自力でその魔法を出せたことは感嘆に値するだろう。
何故なら、僕ら軍の魔導士は、職性魔法を極めるよう指導されているからだ。
職性魔法は、肉体に結びついた魔法で、呪文詠唱を必要としない。
悠長に詠唱している時間のない戦場において、生き抜くため、勝つためには、職性魔法を極めることが僕らには不可欠だったのだ。
特にウィンリィは、高魔力保持者で、拳闘士タイプ。
拳闘士タイプは、魔力をそのまま肉体に纏わせて戦える攻撃力最強の魔導士だ。
コーラの刀魔法や、父――スノークの銃魔法も攻撃特化の職性魔法の一種だが、それらの武器生成魔法には、生成にかける時間が必要となる。
壊されてしまった際には、戦闘中に再生成しなくてはいけないハンデもあり、それ故にノータイムで攻撃と防御を繰り出せる拳闘士タイプは最強なのだ。
でも、高魔力保持者であるウィンリィが、正しく呪文を用いればとんでもない魔法を生み出せるのではないか。
もしかしたら、僕を育てた母ですら知らない景色へ辿り着けるのかもしれない。
そんな予感がした。
「はあ、僕も教えたかったなあ……」
木陰に隠れて見守っていた僕の隣にいつの間にかやってきたのはルートさん。
彼のしていたアプリの魔法修行は、イオの『魔力の子』に特化した座学のために今はお休みだ。
「はは、まあ、ルートさんには僕もお世話になっていますし」
僕だけじゃない、あの迷宮探索、いや、その前からルートさんは、コーラと僕のこともさりげなく指導してくれている。
「そうだね。息子で我慢するよ」
「我慢て」
「あっ、インター! サム!」
話していたら見つかってしまった。
おずおずと木の影から二人の前に出ると、長が、ルートさんを見据えて言った。
「お前さんの闇属性では、ウィンリィの光属性に教えるには不向きであろうな」
「それはどうも」
「しかし、親子関係に魔法属性は関係せぬ。この子の屈託のなさを見れば、お前さんが愛情を持って育てているのがよくわかる」
このルートさんは、その感情も大いに持ってウィンリィに接しているとは思う。
だけど、きっとそれだけじゃない。
「えへへ! そうだよ! インターはいつも優しいんだ!」
大好きとでも言わんばかりにルートさんに抱きつくウィンリィ。
ルートさんは、そんなウィンリィに微笑みかけながら頭を撫でている。
僕は、心の中のコーラに「落ち着きなさい」を連呼させて、必死に堪えた。
ルートさんからウィンリィに何かするならともかく、ウィンリィからルートさんへ自発的に行ったスキンシップを止めるのは違うと思う。
ウィンリィの未来の息子としては、相変わらず複雑な思いでいっぱいだが。
「そうか。良かったな」
二人を見つめる長の目がとても穏やかで、僕はようやく、心の中のコーラを止めることができた。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から、作品への応援お願い致しますm(_ _)m
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。
何卒よろしくお願いいたしますm(_ _)m




