↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28歳の息子と13歳の母の異世界冒険譚  作者: 相沢春人
第5章 王室と魔族

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/148

肩入れの理由

「ウィンターンとサマーンの間にある『エルフの里』そこなら、大人数を匿えるかもってさ」


 エルフの里……ショコラさんの故郷ということだろうか?


「ウィンリィ、明日、詳しく聞かせてくれる?」

「うん! あ、勝手に話してごめんね。でもさ、ショコラは口が硬いから、信用して欲しいんだ」


 さすがに、そこのとこの危険性は分かってはいるか。これがウィンリィでなければ、例えば、アプリなら注意したかもしれないが。


「……ウィンリィが、何の考えもなしに、そういうことをしないって分かってるよ。だから僕も、ショコラさんを信用する。武器も作って貰ったしね」


 まあ、武器というか、バットだったんだけど。


「そっか! 良かった。じゃあ、また明日ね」

「うん。お休み、ウィンリィ」


―――――


 翌日、改めてショコラさんの鍛造所(フォージ)を訪れた僕とコーラとウィンリィだったが、ショコラさんは仕事中で、話してくれたのはノードさんだった。


 ちなみに、ルートさんはアプリの魔法訓練、イオは引き続きマロンと話をしている。


「はい、この前と同じカカオニブの紅茶よ」

「ありがとう、コーラ」

「ショコラが入れてくれたのと同じ香りだ! 僕、チョコは苦手なんだけど、この香りは好きだな」

「茶の準備も出来ず、すまないね」

「いえいえ、こちらこそ、当然お伺いしてしまい、すみません」


 ノードさんは妖精なので、人間用の食器は扱えない。代わりに、コーラが場所を聞いて淹れてくれたお茶を飲みつつ話を始めた。


「エルフの里というか、風渡りの里さね、あそこは」

「風渡り……風のエルフが集まっているんですか?」

「そうさね、四種属あるうちの風のエルフたちの住処さ」

「ショコラが昔、お世話になったんだよね? とっても親切な人たちだって聞いたよ」

「親切とな……ま、間違ってはおらんよ。しかし、生半可な種族でもない。ただ……」


 ノードさんは、ウィンリィとコーラの頭に咲く魔力結晶の頭花(とうか)を見つめた。


 コーラのは、3連の赤紫色のコーラルフラワーで、ウィンリィのは、2連の濃ピンクのウィンターコスモスだ。

 おでこの左上に咲くその魔力の花は、半透明で、宝石のようにキラキラとしている。


 この世界では、珍しい……というか、いないのだろう。僕らの世界というか、祖国では魔力持ちは皆、これを携えているものだが。


「草花人(そうかびと)ゆかりの者ならば、歓迎される可能性はある……かもしれん」


 ん?


「あら、この世界にも草花人がいるのかしら?」

「いるみたいだよ。でもさ、絶滅しかけてるらしくて、滅多に表に出てこないんだって」

「だで。しかし、エルフは太古の昔から草花人の良き隣人であったと聞く。古くからの縁を大事にする種族じゃからな、受け入れてもらえるじゃろうて」

「ちょっと待って! 草花人がいるの!?」


 ノードさんは、声を荒らげてしまった僕を見て、何かを察したように頷き、


「主らは、混じった者の果ての子孫じゃな……主たちの世界のことはわからぬが、この世界にはおるよ。多少、人と交わってはいるがね」


 驚いた……祖国――二国には、もう草花人は一人もいない。

 僕ら二国の魔導士は、祖先に草花人を持つ二国の民の中でも、より強くその特徴が発現した者を、遥か昔に集めて作られた人間だ。


「サム、ごめん、話してなかったから、驚かせちゃったね」

「いいや、ウィンリィ……勝手に思い込んでいただけなんだ」


 獣人もいる。


 エルフもいる。


 人もいる。


 それなのに僕は、どうして草花人だけはいないと思い込んでいたんだろう。


 あれ? そもそも、相違点の方が少なくないか? 竜と魔族に魔物や魔獣――がいるだけで、他は、僕らの世界と同じ?――


「あなた、考え込むのは後にして、今はノードさんの話を聞きましょう」

「えっ!? あっ、うん、ごめん……」


 ノードさんの話をひとしきり聞き、僕とコーラは帰路についた。

 ウィンリィはショコラさんと話したいと言い、彼女の仕事が終わるまで待つというので、鍛造所に残っている。


「よく眠っているね」

「ええ、頑張りましたから」


 王宮に着き、城までの長い庭園を歩いていた時だった。

 アプリがルートさんと訓練をしているのは、この庭園の端。邪魔にならないように寄らずに帰ろうとしたが、ルートさんとイオの声が聞こえてきて、思わず足を止めた。


 声の方に目を向けると、庭園に植えてある果樹の合間からベンチに腰掛ける二人の姿と、イオの膝の上で気持ちよさそうに眠るアプリの姿が目に入る。


 マロンとの話の後、アプリの訓練を見学していたのだろうか。ルートさんとイオが隣り合っている姿はなんだか意外だ。


 まだ訓練中ならば、邪魔になりたくなかったが、終わっているのならと、僕とコーラは彼らに向かって歩を進めたが……


「ルート、あなたは何故、アプリに親切にするのです?」

「おや? 僕も君に対して、同じことを考えていたよ。星のシステムたる竜が、魔力の子であるアプリに肩入れする理由をね」


 二人に流れる空気は、険悪とまでは言わないが、互いの腹のうちを確かめているようで、僕らは、反射的に側の木に隠れるように身を寄せた。


「ふうむ。質問に質問で返しますか……でも、お答えしましょう。深淵の魔力の持ち主であるあなたの信頼は得ておいた方が良さそうですしね」


 竜が、というか、イオがアプリに肩入れする理由は、僕も気にはなっていた。

 自分たちと同じ知的生物を観察したいと言っていたが、それだけが理由で、アプリに魔力転送の腕輪を作ってくれたり、瘴気に苦しむ獣人の村を救ってくれたりするだろうかと。


「少し長くなりますが、この子が目覚めるまでには話し終えるようにしますね」

「そ? 早く聞かせてよ。それを聞いたら、僕の理由も話してあげないでもないよ?」


 食えない二人のやり取りに僕とコーラは顔を見合わせたが、イオが話し出したので、彼らに目線を戻す。


「竜は、生涯で一度だけ卵を産みます。私は10個の卵を産みました。でも、私の子供たちは、8人なんです」

「2個、孵らなかったってこと?」

「孵らなかったのは、一つで、もう一つは、

『魔力の子』だったんです」


 ! イオの子が!? 竜の子供にも魔力の子が産まれてくるのか!? 

 僕は隣のコーラを見たが、動揺する僕とは違って、妻は静かにイオの方を見つめている。


「竜の卵の外殻は硬く……私も夫も、そのことに気付けなかった。分かった時には、卵は強く発光して、爆発寸前でした」


 死を目前にした子供を、どうすることも出来ない親の気持ちを僕は想像した。

 もし、ウィンディを、アプリを、助けられなかったら? 目の前にいるのに手立てが見つからなかったら? それは、どれだけの絶望なのか……


「夫が、反射的に外の上空へ卵を投げたので、他の子供たちは、爆発を逃れました。でも、残った9個のうち、一つが成長を止めたんです」


「……番(つがい)だった?」

「そうです。爆発した子の番だった卵です。竜は、生涯を共にする番と共に産まれます。だから、あの子が成長を止めた理由は、分かりきっていました。

でも、それでも」


 僕は、コーラの顔を見た。眉を顰めて、まるでイオの痛みを自分のことのように受け止めている妻の顔がそこにはあった。


「私は、産まれてきてほしかったんです」


 その時、風が吹き、木々が揺れた。

 

「ルート、あなたは、あの獣人の村にアプリを置いた後、ノアがあの子を見つけて抱き上げるまで、木の上で見守っていましたね?」

「あはは、見られちゃってたか」

「ええ、力を使い果たした後とはいっても、魔力の子の高魔力は異質です。スプリーンに入ってきた時にすぐに感知しましたよ」

「それで? 何もせず、君も見守ってたの?」

「ええ。その後もずっと見てきました。この子のことも獣人のことも」


 イオは、どんな気持ちでアプリを見てきたのだろう。僕は、父親だけど、母親じゃない。

 上手く考えがまとまらないけれど、それはとても複雑な気持ちなのだと思う。


「サムたちは、魔力転送の腕輪がすぐに出来上がったことに驚いていましたが、実際は、すでに作ってあっただけなんです。あなたが付けてくれていた制御の腕輪も、いずれ使えなくなることが見て分かったので、こっそり付け替えてあげようと思いまして」

「はは、あれ、迷宮のドロップ品だからね。たまたま拾ってあって良かったよ」


 あの古い腕輪、ルートさんが付けてくれたものだったのか――


「さて、私の話は終わりです。次はあなたの番ですよ」

「うーん、僕のは大した理由じゃないんだ。まあ、強いて言うならば、見つけたのに獣人の村に置いてきちゃったから、罪悪感があったってとこかな」


 絶対それだけじゃないんだろうなと、ルートさんとの付き合いの中で僕は思う。

 そして、そうだとしても、本心を彼が語ることもないのだということも。


「ふむ。そういうことにしといてあげます。それと――」


 未だすやすやと心地良さそうに眠るアプリの頬を撫でてから、イオは、ルートさんの顔を見た。

 その目の瞳孔は、細くなっている。


「ウィンリィは、あなたの運命です。分かっていますか?」

「なんのこと?」

「……なるほど。だから、マロンが正体を明かしても、"王"と呼ぶのですね。システムに深入りしないために」

「……」


 ?? 何の話なんだ? 隣のコーラも口元に手を当てて、考え込むような仕草をしている。


「遥か昔、この星のシステムは、竜と魔族だけではありませんでした――そのことだけは頭の片隅に置いておいて下さい。どのみち、役割からは逃げられないのですから」

「……そんなもの知らないね。僕はただ、あの子に子供らしくいられる環境を提供するだけ。それを邪魔するなら、竜だろうと魔族だろうと、容赦しないよ」


 空気が、離れた場所にいる僕らのところまで重くなる。


 それでも、アプリがいるからだろう。

 漆黒の魔力が漏れ出しそうになるのを、ルートさんは辛うじて押さえ込んでいるようだった。


 しかし、その目は、光の差さない鋭い黒曜石の瞳は、しっかりとイオを見据え、怒りを露わにしていた。

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「今後どうなるの!!」


と思ったら


下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から、作品への応援お願い致しますm(_ _)m


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。


何卒よろしくお願いいたしますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。