表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
娘を置いて異世界へ――飛ばされた夫婦の帰還冒険譚  作者: 相沢春人
第5章 王室と魔族

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/79

次の目的地

 50人!? 『魔力の子』がそんなにいたなんて……でも、それじゃあ――


「腕輪が、足りない……」

「それなら、追加で100個作って持ってきてあります」


 よっこいしょと、自分のアイテムボックスから巨大な袋を取り出すイオ。


 大人が両手を開いて、やっと持てるサイズのそれに、僕もコーラも、目を見張る。


「あ、有難う。イオ、仕事が早いね」

「そりゃそうですよ。情報だけ与えて、解決策はありませんなんて、無責任なこと、竜はしません」


 僕は、腕輪を検分することなく、袋ごと自分のアイテムボックスへしまおうとした。


 が、100個分の魔力制御の腕輪が入った袋は大変重く……苦戦していたら、ルートさんが手を貸してくれた。


「あ、有難うございます、ルートさん」

「どういたしまして。とりあえず、次の目的地は、ウィンターンの国境街アイスエッジで決まりだね? 僕とリィもついて行くよ。きっと、大変な現場になるだろうから」


 ルートさんの黒曜石の瞳が、鈍く光る。


 50人もの『魔力の子』達が動けない体にされて、捕らえられているという状況は、異様だ。

 イオは濁したけれど、きっと、五体満足ではないのだろう。


「で、アプリは何処ですか? あの子も含めてきちんと話をしたいのですが」

「さっき、隣の部屋にケーキを食べに行ったところだよ。もう食べ終わっていたら、呼んでこようか」


 そして、執事の人がウィンリィとアプリを呼び戻し――


「アプリ、久しぶりだね」


 目の前に現れた懐かしい姿に、アプリは、迷うことなく、その体に抱きつき――イオはすぐにアプリを持ち上げて抱っこした。


「ふふ、重くなったね」

「……背も伸びたよ」


 二人の再会を、コーラはとても嬉しそうに見つめている。かくいう僕も、凄く嬉しい。アプリにとって、イオは、自由に外で活動出来る術を提供してくれた恩人だからだ。


 イオは、にっこり微笑んでアプリをソファに下ろした。

 そんなイオに、驚きの眼差しを向けるマロン。


 竜と魔族――星のシステム同士、旧知の間柄だと思うのだが……イオの笑顔は珍しいものなのだろうか?


 イオは、アプリの隣に座ると、向かいに座るルートさんとウィンリィに目を向けた。


「改めまして、私は、5つの始祖竜の一つ、アルの10番目の子、イオです。サムたちを旅の同行者にしてくれたこと、感謝致します。

これからもよろしくお願いしますね」


 おお……これが竜の正式な自己紹介なのか……10番目の子とか、初めて聞いたぞ……


「わ、わわ、僕はウィンリィです! アプリの姉貴分やってます!」


 怖いもの知らずのウィンリィも、さすがに初めて出会う竜に、緊張ぎみだ。


「僕はルート。よろしくね、竜のイオ」


 はい、ルートさんに怖いものなんて、ありませんよね……

 しかし、通常通りの彼の様子は、何だかとても安心感をくれる。


「ふうむ。獣人の村のあの独特な薬草茶に慣れてしまうと、これはまろやか過ぎて物足りなく感じますね」

「文句があるなら、飲まなくて良いよ? イオ?」

「いえ、これはこれで楽しめますから」


 ひとしきり紅茶を堪能してから、イオは口を開いた。


「アプリ、実はね、魔力の子が複数人見つかったんだ」


 アプリが目を見開いて、僕とコーラを交互に見た。

 それに答えるように僕らも頷く。


「それでね、少し、刺激が強い話をするよ。覚悟はあるかな?」


 こくりと頷くアプリ。その目に迷いはなく、僕は改めて、うちの子の覚悟の深さを思い知った。


「イオ、アプリはね、見た目よりずっと大人だよ? どんな酷な話でも、きちんと受け止められるさ」


 マロンのその言葉に、カッチーンという効果音がイオからはっきりと僕には聞こえた。


「そんなこと、あなたよりは付き合いの長い私にも分かっていますよ? 一応、確認を取っただけです」

「そう? それはごめんね?」


 あわわ。アプリとの親密さをかけて、良い歳した大人たちがバチバチ言ってる!?


 しかし、マロン……あの短いやり取りで、アプリのこと、気にいっちゃったのか。


「アプリ、モテモテだね……」

「うん。リィは加わらないでね? ややこしくなるから」

「う、うん……」


 ルートさんとウィンリィのこそこそ話が隣にいた僕には聞こえてきたが、コーラにも聞こえたようで、くすりと笑う妻の顔が見えた。


 そして、イオの話をひとしきり聞いたアプリは、その目をたまに震わせながらも、そのことをきちんと受け止めようとしているのが、見てとれた。


「……動けないって……どういう状態なのかな」

「それはね、まだ分からないんだ。とにかく、反応がある場所をひと月見張っても、誰も外に出てこない。だから動けない状態だと、私たちは結論付けたんだ。あ、そうだ、マロン」


 イオがマロンに声をかけると、マロンは、何? と目で相槌を打つ。

 この感じ、短い時間で、彼らの仲がどんなものなのか、分かりすぎるなあ。


「ドライアド、貸して下さい」

「何に使うの?」

「偵察ですよ。魔力の子たちは、領主邸の中から反応があります。でも、アイスエッジは、国境街ですからね、警備が厳重で、使い魔魔法で出した小型の魔物でも、中までは入れなかったんです。

でも――」


 イオは、一度言葉を切り、口の端に笑みを湛え、黒の瞳孔を細く光らせた。


「ドライアドの小ささと、幻惑の魔法なら、隠密活動も容易いでしょう?」

「はあ……もう少し休ませてあげたかったんだけど」


 ん? まさか、そのドライアドって、時渡りの迷宮で、ルートさんが捕獲して、僕のアイテムボックスに入れてるやつじゃないよな?


「サム、出してあげて」

「あっ! やっぱり、この子のことですか!」


 僕は、慌ててアイテムボックスを開き、スカーフに包まれて熟睡している小さな妖精を机に出した。


「ふ……凄いね、君たち。ルートとウィンリィがいたとはいえ、アドを、あっさり攻略するなんてさ」


 そっと、ドライアドを両手で掬い上げ、マロンは僕らに微笑んだ。


「え……でも、地上一階の門番ですよね? 初歩魔物なのでは?」

「まさか。サム、私はね、あの迷宮に誰も入れないようにアドに命じてたんだ。実際、君たち以外に、あそこには他の冒険者は居なかったはずだよ」


 確かに! 誰にも遭遇していない! 迷宮初挑戦で、人に遭わないことも、そういう仕様なのかと思い込んでいた。


「あら、もしかして、ひっそりと、閉じるつもりだったのかしら? あの迷宮を」

「コーラ、その通りだよ。普通、迷宮の閉鎖は大々的に公表したりしないんだ。騒ぎになるからね。だから、ひと月前から、様子見だけを命じて配備したアドに、"誰も入れるな"と命令し直していたんだけど……」


 マロンが困ったような顔で、僕らを見ていく。


「……僕らが、強行突破してしまったと」

「そういうこと。この子の幻惑魔法はね、強力だよ。パーティメンバー全員に、別々の幻覚を見せることが出来る。そうして、パーティをバラバラにして、時間差で迷宮の外に出すという手筈さ」


 だからあの時、ルートさんはあえて、視覚共有を使えと言ったのか!


「ルートの知恵かな?」

「……王、成り行きですよ、ただの」


 うわあ、ルートさんの含みたっぷりの笑み……王様を前にしても、強者感が半端ないな。


「あ、でも、ドライアドは、幻覚を使うのに香りの強い花粉を飛ばしますよね? 隠密にというのは、無理じゃないかと」

「サム、香りに認識阻害デコレーションは? かけられないのかな?」


 ルートさんの提案に、僕は目を見開く。そんなこと考えたことがなかった……でも!


「……初めてですが、やってみます」

「うん。君なら可能そうだ」


 にっこり笑うルートさん……後になって、出来ませんでした……は、通用しないな、きっと。


「とりあえず、アドは、君たちが来るまで能力を使いっぱなしで疲弊しているから、しばらく休ませるよ。で、その間は、ここに滞在するといい。明日からは、収穫祭もあるし、せっかくだから、祭りを堪能していってね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ