第4章 変えられぬ過去と選ぶ未来 第26.5話 番外編② お袋の味《ルート視点》
時渡りの迷宮から帰還して三日。
リィと同室の宿の部屋にて、僕は悶々と悩んでいた。
精神的にボロボロのサムが話してくれた過去の内容。
その中に出てきたサムの妹の話が気になって気になって仕方がなかった。
しかし、いまだ精神的ダメージから回復出来ていない彼に根掘り葉掘り聞くのは得策ではない。
「妹は、他国に逃した…… でも、サムの誕生日にスノークは戦死している。なのに妹がいる。……誰との子なんだ?」
机に突っ伏す。
「うわあああー! 気になって気になって震えるよー!!」
「わっ! インター、どうしたの?」
買い物に出ていたリィは、帰ってくるなり、僕の目の前に大量のフルーツが入った紙袋を置いた。
「……なんでもない。リィこそ、それ、どうするの?」
僕はリンゴを一つ手に取る。
「ん、栄養ドリンク作ろうと思ってさ、サムに」
言うと、リンゴとアセロラをボウルに移して、洗い始めた。
洗ったフルーツを手に取ると、荒目の布巾を被せたボウルの上で、握りつぶしていく。
魔法込みとは言え、細腕で自力でジュースを作る姿は、リィの可愛らしい姿も相まってどこかちぐはぐな光景だった。
でも――
「サム、きっと喜ぶよ」
なんてったって、お袋の味だしねえ……
「そうかなあ……でもね、味は保証するよ! 元気のない時は、赤いフルーツに限るんだ」
実際、サムはそれを、懐かしそうな目をして受け取っていた。
13歳の少女の姿でも、紛れもなく、君のお母さんなんだね、リィは。
28歳の息子と13歳の母という絵面は、おかしな光景なのに、不思議としっくりくる。
きっとそれは、僕と息子が2人でいるよりも、自然な姿なのだと思う。
「もし、彼に、彼らに会えたら、今度こそ、父親らしいこと、してあげたいな……」
君たちと出会わなければ、そんな感情を覚えることもなかった。
感謝しなくちゃね、この数奇な巡り合わせにさ。




