番外編 ルートとウィンリィの気持ち
《ルート視点》
『個人的に気に食わない奴だったので、動画も画像もないんです』
サムが言った言葉を思い出しながら、昼食に適当なサンドイッチを購入した。
そして、部屋に戻る前に、宿屋の近くのベンチに腰掛ける。
「あの部屋……片付けるのに時間かかりそうだからなあ……ふふっ」
女の子の親の気持ちは分からないけれど、僕もリィがされたことを知った時、出来るなら、あんな風に暴れたかった。
「……まあ、ウィンちゃんは、好きな人とだけ……だものね。そこだけは救いだったかな」
それも後付けなので、結果論でしかないが。
「しかし、サムってば、優しいな……話さないことで、事実を隠してくれるなんてさ」
僕のひ孫のジーニアスくんは、サム達の幼馴染、オーレンくんの息子――なら、サムは、知っているはずだ。友達の両親がどうしているかぐらい。
「エリィ、僕たちの息子は、ルンタータは……もうこの世にいないみたいだ」
でも、それでも――子を繋いだその先に、ひ孫くんの幸せがあったなら、それでいいよね?
ざあっ……と風が吹いて、僕の寄る辺ない心が運ばれて行った気がした。
「ルンター、あの頃みたいに君を抱っこして、肩車して……それはもう、出来ない。僕は、酷い父親だったね……」
気付けば、頬が濡れていた。
涙が服を濡らす前に、白いスカーフで拭き取る。
エリィが、便利だね、とよく言ってくれた、無駄に大きなそれ。
「はあ、降ってわいたひ孫の人生に、緩んじゃったかな、色々と……」
息子には何も出来なった。けれど、リィには、幸せになれる道を残してあげたい。
そのためには、あの子を元の世界に絶対に帰しちゃだめだ。
今のサムからは、迷いはもう、感じなかった。
思いが同じなら、きっと出来るはず。
「さすがに片付いたかな……サムを少しからかって、気を紛らわそうっと」
我ながら酷い八つ当たりだと思う。しかも、優しさから、不都合な情報を隠そうとしてくれた友人に。
でもさ、君には、コーラもアプリもいるし、ウィンディちゃんだって、会えないけれど、生きているしね。だから……
重い腰を上げて、立ち上がる。
「少しくらい、甘えてもいいよね?」
―――――
《ウィンリィ視点》
ベンチで、泣いている彼を見た。
「少しくらい甘えてもいいよね?」
いいに決まってる。けれど、僕には、彼を甘えさせることは出来ない。
理由は子供だから、だけじゃない。
彼と入れ替わりで、同じベンチに腰掛けた。
「……僕には……」
資格がない。
彼の優しさも思いやりも、一身に受けている僕。
これを与えてもらうべきなのは、彼の息子なのに。
しかも――
「君の奥さん……エリィの命を奪った……」
直接の原因でなくとも、きっと、"これ"を知ったら、彼は僕を軽蔑する。
狡いって分かってる。でも、だからこそ、彼は、ちゃんと元の世界に返さないと。
「インターの息子くんが、生きている時代に」
その結果、彼と離れ離れになるとしても。




