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娘を置いて異世界へ――飛ばされた夫婦の帰還冒険譚  作者: 相沢春人
第4章 変えられぬ過去と選ぶ未来

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番外編 ルートとウィンリィの気持ち

《ルート視点》


『個人的に気に食わない奴だったので、動画も画像もないんです』


 サムが言った言葉を思い出しながら、昼食に適当なサンドイッチを購入した。

 そして、部屋に戻る前に、宿屋の近くのベンチに腰掛ける。


「あの部屋……片付けるのに時間かかりそうだからなあ……ふふっ」


 女の子の親の気持ちは分からないけれど、僕もリィがされたことを知った時、出来るなら、あんな風に暴れたかった。


「……まあ、ウィンちゃんは、好きな人とだけ……だものね。そこだけは救いだったかな」


 それも後付けなので、結果論でしかないが。


「しかし、サムってば、優しいな……話さないことで、事実を隠してくれるなんてさ」


 僕のひ孫のジーニアスくんは、サム達の幼馴染、オーレンくんの息子――なら、サムは、知っているはずだ。友達の両親がどうしているかぐらい。


「エリィ、僕たちの息子は、ルンタータは……もうこの世にいないみたいだ」


 でも、それでも――子を繋いだその先に、ひ孫くんの幸せがあったなら、それでいいよね?


 ざあっ……と風が吹いて、僕の寄る辺ない心が運ばれて行った気がした。


「ルンター、あの頃みたいに君を抱っこして、肩車して……それはもう、出来ない。僕は、酷い父親だったね……」


 気付けば、頬が濡れていた。

 涙が服を濡らす前に、白いスカーフで拭き取る。

 エリィが、便利だね、とよく言ってくれた、無駄に大きなそれ。


「はあ、降ってわいたひ孫の人生に、緩んじゃったかな、色々と……」


 息子には何も出来なった。けれど、リィには、幸せになれる道を残してあげたい。


 そのためには、あの子を元の世界に絶対に帰しちゃだめだ。


 今のサムからは、迷いはもう、感じなかった。

 思いが同じなら、きっと出来るはず。


「さすがに片付いたかな……サムを少しからかって、気を紛らわそうっと」


 我ながら酷い八つ当たりだと思う。しかも、優しさから、不都合な情報を隠そうとしてくれた友人に。


 でもさ、君には、コーラもアプリもいるし、ウィンディちゃんだって、会えないけれど、生きているしね。だから……


 重い腰を上げて、立ち上がる。


「少しくらい、甘えてもいいよね?」


 

―――――


《ウィンリィ視点》


 ベンチで、泣いている彼を見た。


「少しくらい甘えてもいいよね?」


 いいに決まってる。けれど、僕には、彼を甘えさせることは出来ない。


 理由は子供だから、だけじゃない。


 彼と入れ替わりで、同じベンチに腰掛けた。


「……僕には……」


 資格がない。

 彼の優しさも思いやりも、一身に受けている僕。

 これを与えてもらうべきなのは、彼の息子なのに。

しかも――


「君の奥さん……エリィの命を奪った……」


 直接の原因でなくとも、きっと、"これ"を知ったら、彼は僕を軽蔑する。


 狡いって分かってる。でも、だからこそ、彼は、ちゃんと元の世界に返さないと。


「インターの息子くんが、生きている時代に」


 その結果、彼と離れ離れになるとしても。

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