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28歳の息子と13歳の母の異世界冒険譚  作者: 相沢春人
第9章 還る竜と少女の決断

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絶体絶命

 竜の巣穴の上空は、あっという間にルアの体から生えてきた無数の魔力の鞭で覆われてしまった。


 俊敏な動きで縦横無尽に暴れ回るその光景に、僕ら大人組が鞭の合間を縫って穴の中に入ることも、ウィンリィとアプリが穴から脱出することも困難に思えた。


「退路を絶たれたわね……」


 コーラの乾いた声に、僕もこの状況の最悪さを噛み締めたが、半透明の魔力の鞭の下――ウィンリィとアプリは、懸命に無数の鞭による高速攻撃を躱し続けている。


 避けるのみの防戦一方に見えるが、それはこの状況においては最善の行動だ。


「魔力暴発寸前の竜の体に刺激を与えるわけにはいかない……」


 ルートさんが歯痒そうに眉を寄せる。

 そう、ウィンリィもアプリもそれが分かっているから避けることしか出来ないのだ。


 竜の巣穴の中には、無数の横穴があり、そこに逃げ込むのも一つの手だと思えたが、ルアの魔力の鞭は、その横穴ごと巣穴を削り、二人が逃げ込めそうなスペースはどんどん無くなっていく。


 二人さえ救い出せれば、巣穴の上を結界で塞いでルアの動きを封じることが出来るのに、二人をこの鞭の雨の中、引き上げる方法が見つからない。


 考えろ! 何か方法があるはず!


「アプリっ!!」


 コーラの叫びで、思考を穴の中に戻すと、アプリが鞭に当たって、壁に叩きつけられてしまった!


 地に倒れる前にウィンリィが抱き上げ、その場をすぐに離脱したが、対象が一つに絞られた魔力の鞭は数を増やし、勢いも増した状態で二人に襲いかかる!


 しかしウィンリィはアプリを抱えたまま懸命にそれを躱し続けた。


 でも、それも時間の問題だ。いくらウィンリィでも、アプリを抱えていつまで逃げ切れるか……

 幸い、アプリからは出血は見当たらなく、鞭自体はタグが防いで、気絶したのは壁に叩きつけられたからのようだった。

 しかし、隙を見てウィンリィがまたタグを付けることができたとしても、この鞭の豪雨の中、上空へアプリを投げて離脱させることもできない。

 どうしたら……!


「ウィンリィ!!」

「っ!!」


 コーラの叫びとルートさんの焦りが噴出する。


 眼下のウィンリィは、頭から血を流し、それを撒き散らしながらひたすら攻撃を避け続けていた。


 考えろ考えろ考えろ考えろ! このままだと娘と母さんを同時に失うぞ!! 考えろ!


 魔力転送の腕輪……竜の巨体のどこに付けられる? 付けられたとして、手首以外の場所で正常に作動するのか?


 テレポートの鉱石プレート……僕だと、あの猛攻の中、ウィンリィの側に飛べても、次を作動させる前に鞭にきっと当たる。

 コーラのスピードなら、猛攻を避けつつ、ウィンリィと接触して、次の作動に繋げることが出来るかもしれない。だが、落ち着いて集中出来る状況ならまだしも、あの猛攻の中で、鉱石プレートを作動させる技術が妻にはない。


 ルートさんの電閃道なら、避けることは可能だが、電撃魔法は電気の帯を辺りに巻き散らしてしまう。帯が鞭にあたりでもしたら、暴発の危険性がある。


 アプリ、アプリなら、魔力の子50人の救出の時に鉱石プレートの扱いを完全にマスターしている。起きてくれたら、この猛攻の中でも鉱石プレートの魔法を発動させることが出来たのだが――


「あなた、テレポートの鉱石プレートを渡してちょうだい」

「コーラ、でも――」

「言いたいことは分かるわ。でも、このまま見ているだけなんて耐えられない。一か八かでも、私はやるわ」

「っ……」

「あなた、お願い」

「分かったよ……」


 僕はアイテムボックスにしまってあるテレポートの鉱石プレートを取り出した。


 本当にコーラに託すしかないのか? でも、もし失敗したら? 僕は、妻と娘と母を同時に失ってしまう。

 そう考えると、妻の手にプレートを渡す手が震えた。


「待ってサム、今から一瞬だけ竜の気を引くから、その隙にリィ達を回収、全員集まったら、テレポートの鉱石プレートで離脱するんだ」


 突然の提案にルートさんを見ると、いつの間に服の中から出したのか、首から下げたエリィの手帳を握り込み、鎖を引き千切った!


「ルートさん!?」

「この手帳は、『複雑な魔法式』で編まれた特異な魔法具だ。これに、僕の全魔力を込める!」


 ルートさんの手の中が光り、魔法具に彼の魔力が収束していく!


「サム! 私たちも!」

「あ、うん!」


 コーラと僕もルートさんの手の上から手帳を握り、魔力を注いだ。

 しかし――


「っ! 見向きもしない」


 いくらルートさんが第一国一の高魔力保持者であっても、第二国一の高魔力保持者のウィンリィと、無限の魔力の持ち主である『魔力の子』のアプリの総魔力量に及ばなかった。


「もっと、もっとだ」


 ルートさんが、空になったであろう魔力容器(キャパシティ)に働きかける!

 彼の意思に呼応して、魔力を生み出したのか、再び手帳が光り輝いた。しかし、先程ルートさんは、レインにかけられた魔力封印を強引に解いて、魔力容器が傷付いているはず。


 びきっ! と嫌な音が隣のルートさんから聞こえた。それは、彼の魔力容器にヒビが入った音。


 命を削る彼に僕は、あとは作動させるだけにしていた術式を発動させた!


 イメージの中で、リアさんが施した認識阻害の層をこじ開けていき、奥に見える『魔力封印』の術式に狙いを定める!


「強制解除(フォースト・リリース)!」


 体に一気に大量の魔力がめぐり、溢れる。僕はそれら全てを手帳へ送り込んだ。すると――猛攻はそのままに、ルアがこっちを初めて見た!


「サム! バットを出して!」

「はい!」

「ルア! よく見とけよ!」


 ルートさんが手帳を上に放り投げ、落ちて来たところをバットで思い切り振り抜いた!


 遥か空の彼方へと光りの帯を棚引かせて飛んで行く手帳を、翼を羽ばたかせて飛び上がったルアが追って行く。


 それと同時にウィンリィがアプリを抱えて穴から脱出し、僕はアプリの魔力転送の腕輪に触れて、魔力をもらい、行きたい場所をイメージして鉱石プレートを発動させた。


 途端、目の前の景色が瞬時に変わる!


 そうして、無事発動したテレポート魔法で、やっとの思いで五人全員、現場を離脱することが出来たのだった。

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「今後どうなるの!!」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


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