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28歳の息子と13歳の母の異世界冒険譚  作者: 相沢春人
第9章 還る竜と少女の決断

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イエロートルマリン

 木陰に身を潜め、僕は即座に全員に認識阻害を施した。


 神獣人二人がいたのは、森の中にある大きな穴の淵だった。

 大分距離を取ってはいたが、フェンリルのエリフルがしゃがんでいる様子と、フェニクスのエリクスがそれを見下ろして文句を言っているのが見てとれる。二人が話す声もはっきりとここまで聞こえていた。


「サム、あの穴、見覚えがあるわ」

「うん。あれは竜の巣穴だ」


 娘のアプリも僕らと目を合わせてこくりと頷く。


 アプリの育った獣人の森の山にあるイオたち竜の住む砦とよく似た大きな穴の回りには、取り尽くされたであろう色とりどりのトルマリンの細かな残骸が残っていた。


 間違いない。ここはルアがスアと過ごした竜の砦だ。


 初めて目にしたであろう竜の巣穴を、ウィンリィは興味津々な瞳で覗き、ルートさんは警戒を怠らぬ黒曜石の瞳を冷たく細めて見つめている。


「あ! まだある……エリクス、脚どけて」

「んだよ、もう諦めろよ……」

「ふふ、この黄色、よく似てて良い色だな……エリクスもそう思う?」

「お前……それ、どうするつもりなんだ?」

「ん。集めて大きさを整えて、紐に通して髪留めを作る」

「アレフのか?」

「うん。王宮のメイドたちがさ、好きな人の瞳とか髪の色のものを身に付けるのが流行ってるって言ってたから」

「黄色は……」

「アレフ喜ぶかな? きっと喜ぶよね」

「……」


 なんだろう? 王アレフに贈るために黄色のトルマリンを拾っているみたいだけど……


 しゃがんだまま動き回るエリフルのフードの隙間から、銀色の一房が流れ落ちる。


 顔は俯いているから見えないが、昨日目撃した彼女の瞳の色は薄いすみれ色だった。


 よく分からないが、王の思い人? はエリフルではないということか。


 僕は今度はフェニクス――エリクスの顔を覗き見た。

 オレンジ色の炎のように逆立つ髪と同じ色の吊り目は、悲しそうに寄せられた眉尻とともに下がっている。


 しばらくその表情のままで、エリフルを見下ろしていた彼は、やおら自分もしゃがみ込み、小さな黄色を拾い上げた。


「ほらよ」

「あ、ありがと」


 エリクスは、それをエリフルの手のひらに乗せると目を覗き込んで躊躇いがちに口を開いた。


「おまえ、大丈夫か?」

「何が?」

「……あの頃……ちゃんと、悲しんだか?」

「私は大丈夫。一番悲しいのはアレフだから」

「だからって、俺たちが悲しんじゃいけない理由にはならねーんだぞ?」

「あ……ごめん、エリクスはアレフの次に付き合いが長いものね……悲しんで良いよ?」

「はあ、おまえだって――」

「私は、あんまり覚えてないから大丈夫」


 エリクスは、「そんなはずねーだろ」と言った後、下唇を噛んでいた。


 彼らが留まる間に、僕らはクセロティリを口にした。

 それから、移動を始めた彼らの跡を付けて夜通し歩き――朝日が差し込む頃、ウィンターンの高く分厚い城壁の外側に建てられた巨大な建物の前に辿り着いた。


 その建物は、触れずとも分かるほどの硬結界で覆われていて、それは、ウィンターン全土を覆っているものと同じに見えた。


 エリフルとエリクスは、自分たちの背丈の倍ほどもある重厚な扉を開けて中へ入って行く。


 結界は、建物自体にぴったりとかけられているのか、扉を開けさえすれば、結界も同時に開く仕組みのようだった。


 この中に、行方不明のルアがいるかもしれないと思うと気が急くが、場所を突き止めた僕らは、来た道を急いで戻り、森の中で一旦、腰を落ち着けた。


―――――


「城壁の外にある硬結界で覆われた頑丈そうな建物――間違いなくあそこが実験場だね」

「ですね。ウィンターン王もあそこにいるんですかね」

「あの二人の話だと、魔力を流すのは王みたいだし、いる可能性は高そうだね」


 ここまでの道中、全く魔獣を見かけなかった。

 行きは夥しい数の魔獣に囲まれてきたというのに。

 神獣人が通った道だからだとは思うが、アプリにまた彼らへの畏怖を抱かせてしまうかもと思い、僕はそのことには触れなかった。


「ひとまずみんな、お腹を満たそう」


 ルートさんは手早くご飯の用意をしてくれた。

 それは、事前に作ってアイテムボックスに入れておいたポトフだった。

 早朝の肌寒さに震えていた体に温かいものはとても沁みる。


「あったかくて落ち着くね〜」

「……うん」

「ウィンリィとアプリは食べたら一度寝なさいな。夜通し走って疲れたでしょう?」

「ふわああ、うん、そうする……」

「コーラも一緒に寝てて。辺りの警戒は、僕とルートさんで交代でやるから」

「あら、まだ元気だけれど……あなたがそう言うならお言葉に甘えちゃおうかしら」

「うん。そうして」


 正直なところ、僕も眠いし、体力は限界に近かったのだが、今後のことでルートさんに話しておきたいことがあった。


 コーラはそれを察してくれたのか、食べ終えて、僕の肩を撫でると、ウィンリィとアプリを連れて、簡易テントの中へと入って行った。


「あのう、ルートさん」

「なあに、サム?」


 僕がこれを人に話すのはルートさんが初めてだ。

 息を飲み下し、意を決して口を開く。


「僕は……高魔力保持者です」


 彼の黒曜石の瞳が静かに瞬いた。

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「今後どうなるの!!」


と思ったら


下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から、作品への評価お願い致しますm(_ _)m


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。


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