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28歳の息子と13歳の母の異世界冒険譚  作者: 相沢春人
第9章 還る竜と少女の決断

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落ちる

 警戒しつつ下を目指す僕らだったが、先頭を行くウィンリィが突如止まった。


「ウィンリィ? どうしたの?」

「良いこと思いついた! 風魔法でさ、一気に降りてみようよ!」

「リィ、浮遊の魔法は、まだ練習中でしょ?」


 エルフの里で、風の魔法を会得していたウィンリィは、大峡谷の巨大な風の壁を操るほどの大魔法も使えるくらいに成長している。


 だが、浮遊の魔法は、一定の風を発生し続けなくてはならなくて、維持がとても難しい魔法だ。

 長の話だと、まだまだ練習が必要とのことだったのだが……


「上に向かって飛ぶのは、まだ不安定だけど、下に向かって降りるのはそんなに難しくないから大丈夫だよ! 任せて!」


 ウィンリィは、大きな桃色の瞳をキラキラと輝かせて、やる気満々だ!


 うーん、任せてもいいのだろうか……


 僕は、ちらりと、ウィンリィの保護者のルートさんの顔を見た。


 彼は、顎に手を当てて、暫く考えると、はあ、とため息を一つ吐いてから、口を開いた。


「リィ、君を含めて5人だよ? しかも、子供2人に、大人3人だ。よほど風の調整に長けていないと不安定になる。一度に下ろすなんて言わないよね?」

「一度に下ろすよ! やったことないけど、出来る気がするんだ!」


 あー……ああ……こうなると、母……いや、ウィンリィはきっと聞かない。そして、彼女が出来ると断言する時は、大抵のことは実現する。


 そう、"大抵"のことは、だ。


 僕は思い出す。子供の頃、母の無茶振り訓練で何度、死が首元を掠めて行ったかを。


「ルート、ウィンリィにやらせてみましょう。私も出来る気がするわ」

「コーラ、本気で言ってる?」


 呆れを滲ませたルートさんの声に、コーラは、ただにっこりと笑みを返す。


 その反応に、ルートさんは、信じられない……と言った表情を僕に向けた。


 が、コーラがウィンリィの味方をするのは、予想がついていた。

 子供の頃のコーラにとって、僕らを育てたウィンリィの言うことは、信ずるに値する金言だったからだ。それは、今、共にいる14歳のウィンリィであっても同じこと。


 僕はルートさんの前で、両手のひらを天井に向けた。


「……はあ、サム、リィの風魔法の内側に結界を張ってくれる?」

「はは……分かりました」


 一度口に出した意見を曲げることがないのは、コーラも同じだ。やるしかないと僕は覚悟を決めた。


 ウィンリィの指示で、互いの顔が見えるように円形に手を繋ぎ合うと、僕は、ウィンリィが発動させる風魔法の内側になるようにコンパクトな結界で全員を覆った。


 それを確認して、ウィンリィが高らかに詠唱を始める。


「春は強く、夏は穏やかに、秋はそっと、冬は厳しく、大気を揺らせ――旋風(テュフォン)!」


 僕らを風が覆ったかと思うと、体がふわりと浮き、螺旋階段の手すりを飛び越えて、螺旋の中央まで移動した!


 足元に風しかなくて、何とも不安定で心許ない。


「えっと……風の下り路(アネモス・カトドス)!」


 えっと!? ウィンリィ、まさか今、術式を組み立てているのか!?


 瞬間、臓器が浮いて――


「ひいっ!」

「あら」

「わあ……」

「……」


 ジェットコースターのてっぺんから下まで一気に下降した時のような感覚に、僕は情けない声を上げてしまった!


 妻のコーラは余裕の声、娘のアプリは少し楽しそうで、ルートさんは、眉間に皺を寄せて無言という、それぞれがリアクションを見せる中、あっという間に足元に地面が迫る!


「ええと……風の着陸(アネモ・プロスゲイオシ)!」


 地面に叩きつけられる前に、足元から吹いた柔らかな風が体を浮かせ――僕らの足はストンと、軽やかに着地することが出来た。


「ほらね! 大成功!!」


 着地後、どっと脚の力が抜けて、床に座り込んだ僕は、叫びたくなる。


――何処が大成功なんだと。


「リィ、ほとんど落下だったね。まあ、怪我人も出ていないし、よしとするけれど……」

「えへへ! 次やる時は、下から風を吹かせながら少しずつ落ちていくような術式を組むよ!」

「ふふ、私はアトラクションみたいで楽しかったわよ。ねぇ? アプリ」

「うん……アト……ラクションは分からないけれど、面白かった」


 頬を紅潮させて話すアプリに、娘が楽しいならと僕は不満を必死に飲み込む。


「サム、もしかして、ジェットコースターとか苦手なの?」


 座り込む僕を一応心配してくれたのか、ウィンリィが手を差し伸べてくれた。


 その小さな子供の手をとると、ぐいっと力強く引き上げられる。


「そうだね……あんまり得意じゃないかも……」

「そっか……ごめん、事前に確認するべきだったね。あ、でも、僕もあんなに早く落下するとは思わなかったから、確認したとしても、びっくりさせちゃったかも! えへへ……」

「あはは……」


 僕もみんなに比べたら、かなり自分が軟弱な男だという自覚があるから、苦笑いするしかない。


「……そういえば、スノークも、ジェットコースターに乗った後、サムみたいに座り込んでいたなあ……」


 えっ!? 父さんも!? と聞き返すことは出来なかった。

 ウィンリィの顔が、寂しさと懐かしさが入り混じったような複雑なものだったから。

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「今後どうなるの!!」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。


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