魔法の仕組みとサムの努力
魔法とは、呪文と創造力を用いて術式を組み上げ、そこに魔力を流すことによって発動するものである。
発動時、流す魔力は、どの属性のものであっても理論上は問題ない。
例えば、闇属性の魔力持ちが、魔法で炎を出したり、電撃系の魔法を繰り出しても、何ら不思議ではない。
しかし、基本は、自分の魔力属性と同じ系統の魔法を使うのが主流だ。
理由は、扱いやすさが段違いだからなのだが、世の中には、それを全く意に介さない人もいたりする。
――――――――――
「はい、みんなー、見ててね――風の運搬車」
キラキラと陽の光を反射しながら川の水が帯状に巻き上げられ、魔力の子たちの家へと流れて行く。
川辺にいる子供たちは、期待のこもった瞳で、家の窓から顔を覗かせているトトの方を見た。
「すげー! ちゃんと水瓶に入って来てるぜ!!」
家の窓から、興奮気味にトトがそう叫ぶと、川辺にいた子供たちからも、わーっと歓声が上がった。
「はい、これが、川から水を汲む魔法ね。さあ、やってみたい子は手を上げて!」
「はい!」
「やる!」
「私も!」
「俺も!」
「僕も!」
この日、魔力の子たちに魔法を教えていたのは、イオでも長でもなく、ルートさんだった。
ルートさんは、この里に来たばかりの頃、プラシーくんの家で見つけた風魔法の魔導書をいつの間にか読破し、ほとんどの魔法を会得してしまったそうだ。
しかも、ずっと彼と一緒にいたはずのウィンリィですら、その事実に驚いていたくらいなので、本当に片手間に覚えてしまったのだろう。
そんな彼を見込んで長が、
『子供たちに生活に必要な魔法を教えてやってくれ。お前たちが連れて来たのだ。それぐらいしてやるべきであろう?』
と頼んだので、今ルートさんは、午前中に魔力の子たちに風魔法を中心に基礎を教えて、午後は今まで通りアプリに教えつつ、いつの間にやらノアくんにまで魔法を教え始めている。
「僕も何か教えた方がいいですよね……」
あまりにもルートさんの負担が大きい気がして、僕はそう提案した。
しかし、
「サムには、他に考えるべきことがあるでしょ?」
と言われてしまった。
お言葉に甘えて、ここ最近の午後は、自分の魔力容器に向き合うことに集中させてもらっている。
―――――
一人、ベッドの上で坐禅を組み、集中すること数時間――
「ぷはあっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあ……きょ、今日のも強固だったな……さすが、リアさん……」
僕の魔力容器には、我が師リアさんのかけた魔力封印と、その術式を隠すために施されたおびただしい数の認識阻害がかかっている。
魔力の子たちの治療が終わってから、毎日地道に解いてきたが、いかんせん、魔力以上に精神力を使うので、疲労が激しい。
「はあ、一日、一つか二つが限界だなあ……あと150はあるのに……」
解除魔法とは、例えるなら、解きたい魔法に付いている鍵穴に、ぴったりの鍵を作り、嵌め込む作業だ。
リアさんの術式は、あまりに緻密で、一分の隙もないため、めちゃくちゃ観察して、ぴったり当てはまる鍵を作らないと開かない。
しかも、合わない鍵を一度でもはめると、術式が組み替わって、全く別の鍵穴に変化するというオマケ付きだ。
「一発で解除出来れば、一日に二つはいける。でも、一度でも間違えると、組み替わった術式を解析し直すだけで精神力を持っていかれるから、一つが限界になるな……」
はあ、師の壁が厚過ぎて、挫けそう……でも、頑張らないと前に進めない。
目的は、封じられた魔力量を取り戻すことだけではない。
魔力容器全域にかかっている認識阻害を解除した先にあるのは、僕の魂に紐付けられているリアさんの固有魔法だ。
本来、術者本人にしか使えない固有魔法を、僕に譲渡したリアさんの術式を解読して、帰還に不可欠なテレポート魔法の術式を僕の魂に紐付ける方法を確立しないと……
「帰れない。あと、出来ればテレポート魔法の使い手も探して、もう一度、術式の確認もしたいし……はあ、道のりは遠いなあ……あれ?」
窓から差し込む光が赤くなっていて、もう夕方なのだと気付く。
「わっ、急がないと! アプリの修行が終わる時刻だ!」
ルートさんとノアくんがいるとはいえ、僕は、アプリを森の修行場所まで毎日迎えに行っている。
妻のコーラも、森の中のフローガの家での剣修行後、アプリを迎えに来る。
「過保護かもしれないけれど、やっぱり迎えには行きたいんだよね」
小走りで森に向かいながら、ウィンディの時も、走って迎えに行っていたなあと思い出す。
元気だろうか。本当は、時渡りの迷宮で見た未来の映像に探査魔法をかければ、ウィンディがどんな風に生きて成長したのかも知ることが出来てしまう。
でも、それはしたくなかった。娘の夫のルーンくんには探査魔法をかけたけれど、娘自身のことは、いつか帰った時に本人の口から聞きたいと思ったからだ。
夕日は、沈む直前の最後の輝きを放ち、夕焼け色に染まった空と雲が、僕の心の郷愁に拍車をかけた。
「ウィンディ、お父さん、頑張るから、絶対に元の世界に帰る方法を構築するから!」
誰もいないことを確認した上で、夕日に向かって走りながら叫ぶ。
アプリの元に向かいながら、ウィンディへ思いを馳せる――僕にとって二人は、かけがえのない娘なのだと改めて思ったのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から、作品への応援お願い致しますm(_ _)m
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。
何卒よろしくお願いいたしますm(_ _)m




