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娘を置いて異世界へ――飛ばされた夫婦の帰還冒険譚  作者: 相沢春人


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第2章 竜の集落とその運命(さだめ)第5話 新しい魔法具と初めての声


 その後、アルは席を外し、カイとイオの2人と今後のことについて話し合った。


 竜サイドは、以前から共存する術を考えていてくれていたようで、彼らの提案することにグレイもアプリも、ただただ同意するだけで済んだ。


 そして、獣人の村の村長の意見も聞きたいと、彼らが申し出てくれたため、後日、シルバーの家に招くことになった。


一一一一一一


「約束の品だ」


 カイの言葉と共に、コトリ、と会談のテーブルに置かれたそれは、小さな腕輪状の魔法具で、今アプリが付けているものと酷似している。


「あら、綺麗な石が付いてて可愛らしい腕輪ね」


 コーラの感想に、僕は転けそうになったが、気を取り直して観察すると、複雑な魔法式で構成された高度な魔法具と見てとれた。


「ほ、本当に作って頂けたのですか……」


 グレイが、驚きと喜びに満ちた顔でカイとイオを見つめる。


「共存に不可欠でしたからね、これの作成は。それに、長年の知恵というものが竜にはあります。容易いですよ、魔力封じの魔法具は」


 そう。前回、僕らが話し合いを行った時に『魔力の子』であるアプリのための強力な魔法具の作成を彼らは提案してくれたのだ。


「今、使用しているものでは、抑えることしか出来ていませんでしたからね。私たちが作成したこれは、溢れた魔力を自動転送させることが可能です」


 イオが優しい手付きで、アプリの腕にはまっている古い魔法具とは、反対側の腕にそれを付けてやる。


 古い方は、新しいものを装着させた後に外してくれた。


「アプリ、大丈夫?」


 グレイが心配と期待のこもる瞳で聞くと、彼女はこくりと頷き、また唇だけで言葉を紡ごうとする。


「ああ、その魔力封じの制約魔法も、もう解除して頂いてかまいません。

言葉を封じることで、魔力制御させていますよね?」


 しかし、イオの言葉でアプリの唇はピタリと止まった。

 やはりそうだったのか。魔法具だけでは不安だったのだろう。

 体の機能の一部を犠牲にして、効果を高める魔法は僕とコーラの世界にもある。


 しかし、今まで魔法具と制約魔法の同時使用で抑えても、アプリの体からは魔力がこぼれ落ちていた。


 正直、この腕輪一つでそれを全て解決できるのかは疑問が残る。


「な、アプリ……体から魔力が溢れてないぞ?……本当に、本当なのか?」


 台所で全員分のお茶を用意してくれていたシルバーがリビングに入って来て、驚きの声を上げた。


 シルバーは、お茶のお盆をテーブルに置くと、よろよろとアプリに近付いて、肩を抱く。


「溢れた魔力は常時、我らの集落の魔力サーバに転送される仕組みだ。魔法作動のトリガーも、我らの排出したトルマリンから作っておる。

通常の鉱石よりも、強度は十分だ。劣化によって壊れることもない」


「そうなんだ……竜の皆様、有難う御座います! やった! やったねアプリ! これからは家の外も自由に出放題だ! 村を回って、友達の家にも遊びに行けるぞ!……ほんと、ほんとに、良かった……」

「村長」


 顔を覆って泣き出したシルバーの肩にグレイが手を置く。

 グレイの目にも涙が浮かんでいた。


「アプリ、もう話して良いみたいだけど、声聞かせて貰えるかしら?」


 コーラが微笑みながら、アプリの顔を覗き込む。

アプリは口元に手をやり、まだ戸惑っているようだ。


「僕もアプリの声聞きたいな。練習だと思って、出してごらん?」

「そ、そうだ、アプリ、話してごらん!」

「アプリ、ノアもきっと声を聞きたがってるよ。何でもいいから言ってみて?」


 大人数で畳み掛けすぎたのか、アプリは中々、口を開こうとしない。


「話すと同時に制約魔法が解除されることを憂慮しているのか? 魔力転送は正常に作動している。

気にするだけ無駄だ。話せ」

「カイ……そんな言い方では逆効果よ。ごめんね、この人ぶっきらぼうだから」


 突如、熟年夫婦のようなやり取りを始めたカイとイオに、僕とコーラ、グレイ、シルバーは、顔を見合わせた。

 はっきりと聞いてはいないが、カイとイオはつがいなのだろう。


 その時、玄関ドアが勢いよく開いて閉じる音がして、バタバタと走る子供の足音が響いた。


「アプリっ! 無事!?」


 リビングに飛び込んで来たのは、シルバーの息子のノア。

 ツヤのある黒髪からは、汗が滴っており、学校から全速力で走って来たことが伺えた。


「……ノア、お帰りなさい」

『えっ!?』


 僕らだけでなく、竜の2人も含めた全員の声がハモる。


「アプリ……声……」

「……ん、カイ達が新しい魔法具を作ってくれた……から、もう話せる」

「そ、そうなんだ……声、可愛いね……」


 あまりの衝撃にノア少年の本音がダダ漏れだ!


「くくっ!」

「ふふ……」


 カイとイオが笑い出す。初めての現象に、あの緊迫感溢れる初対面を経験した僕とコーラとグレイは、目を見開いて、竜の番の笑みを見た。


「観察しがいがあるな」

「そうね。感情の機微とでもいうのかしら?我らのよりも、色が付いていて興味深い」


 カイとイオは、僕らが思った以上にこちら寄りなのかもしれない。

 アプリとノアのやり取りを見つめる彼らの瞳は、アルに感じた爬虫類のような感情の読み取れないものではなく、


「親、そのものね。私たちとなんら変わりない温かな眼差しだわ」

「僕もそう思っていたところだよ、コーラ」


 後に聞いた話しだと、カイ達はアプリがこの村に来てすぐに観察に赴いたそうで、彼女の成長と危険度をずっと推し量っていたそうだ。


 村のことを、多種族を、何とも思わなければ、そんなことをせずにアプリを利用して村を消滅させることも出来たのに、彼らはそれをしなかった。


 その時点で、答えは出ていたのかもしれない。

 この村の、この国の未来はきっと明るい。


 僕とコーラはそう確信した。


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