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勇者の贖罪  作者: 虚無人
2章 『ロード村』
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27.『作戦会議』

「...本当か、それ。」


「確信を持てる証拠は無いんですけど...恐らく。」


セグルド・サターンの魔法の解明、更には弱点の発見もしたと言うフェイに、ルイは驚きの表情。

それと同時に、一気に勝機が見え始めたことによる心の高揚を感じた。まだ、カラクリも弱点も聞いてないというのに。


「えっと、聞かせてもらっていいか?セグルドの魔法について...」


「はい、時間も無いので端的に言いますね。」


「助かる」


今この瞬間もセグルドは怒り狂いながらルイ達を探している頃かもしれない。それか、村人達に向かって八つ当たりの殺戮を始めるかもしれない、そうなる前に、ルイは戦線復帰しなければならない。

時短の説明は非常に助かる状況という訳で、フェイの口からの説明に耳を傾ける。


軽めの魔法の説明を聞いたら、飛んで戻りたいルイは、出来るだけ余計な質問をしないよう、頭を予め整理して、聞く準備万端で整える。言うなれば、英語のリスニング問題の前の心持ちだ。


「彼の魔法は、"感情"の攻撃...だと思います。」


「...詳しく。」


よく分からなすぎて一瞬で説明を長引かせる方向へ行かせてしまった。

だが、フェイはため息などせず淡々と説明を続けた。


「まず、彼は魔法玉や斬撃、他にもきっと色々な攻撃をして来ると思いますが、総じてアレは彼特有の魔法という訳では無いです。」


「ほう?」


「アレは、ただ単純に魔力を変質させているだけです。この結界も、彼の変質された魔力で作られた結界ですし、あの魔法玉も、言ってしまえば魔力の塊です。」


「そうなの...いや、でも魔法って全部そんなもんじゃないのか?魔力を魔法に変えるのが普通なんじゃないのか?」


「全然違いますよ、魔法という能力を引き出す為に魔力を使うのであって、魔力で攻撃するのとは話が違います。」


「あ、なるほど、魔力っつー"MP"を本来は魔法っていう"スキル"を使う為に消費するけど、セグルドは"MP"そのもので攻撃してきてるって事か、どういうこと?」


「僕からしたらその説明の方がどういうこと?って感じなんですけど。」


ゲーム脳を最大発揮してしまい、フェイに混乱を与える結果となってしまったが、ルイなりに解釈は出来た。セグルドのやっている事は異世界の中でも異常にあたる行動であり、普通とはかけ離れているらしい。


「そら、普通の魔法すらまともに知らねぇ俺が、解明出来るわけねぇだろ...。」


魔法についてからっきしの男に、解ける謎では無かった事が分かって、ほんの少し安心した自分がいたが、そんな普通では無い事をする奴を相手取る事になるのはかわないので、すぐに気が滅入ったのは心の中だけで留める。


「でも、なんでお前はそれが分かったんだ?」


「『共感覚』で、セグルドの精神を乗っ取ろうと試みました。」


「あの、最悪の魔法かぁ?」


「そうですね、貴方からしたら最悪かもですね。一晩で随分と立ち直ったようですが、人が変わったかと思えるぐらいの立ち直り具合ですよ。」


「そりゃどうも、ちゃーんと自分と向き合った結果だよ。んで?」


ルイ・レルゼンがゴミ人間から少しばかりマシになったのは特段言及するほどの事でもないので、とっとと話の路線を戻したい。


「はいはい、『共感覚』は精神の汚染とも言えますが、あくまで僕に"情報"を伝える為の魔法、基本的に対象の周辺を探って、戦況を有利に持ってくのが普通の使い方ですが、付属で対象の"感情"なんかも読み取れるんです。」


「なるほどな、つまり...」


「そう、ルイさんに通じない黒の魔法玉、その時セグルドは一貫して全てに対して"愛"が、芽生えていました。」


「...はい?」


「紫の時は"憎悪"、感情なんです。セグルドの魔法は。感情をも元にした魔法、更に付け加えるなら、感情を魔力に変換出来るのかもしれない。」


感情を、魔力に変換。

はっきり言って意味不明だ。感情というのは人間に付与された機関の一部、増えるとか減るとか具現化されないモノのハズだ。なのに、それを魔力に変換するなど、異世界と言っても理から外れすぎている。


「信じ、がたいけど、確かなんだな?」


「ええ、多分。」


「...多分て。」


「確証した覚えは無いですよ、共通点を探した結果合致した結果がこれなだけで、感情関係無しにたまたまって言われたらそれまでです。ただ、今はこれしか頼れる情報はないです。」


セグルドの魔法をヒント無しで完全に当てるなんて事は無理と言っていい。そう考えると、無限の可能性からここまで絞り込めたのは立派なものだと、ルイは心の中で感心した。


「よっしゃ、魔法が分かった所で反撃開始だ!」


「なんでですか!まだ対処法とか何も分かってないでしょ!」


「...そういや、確かに。魔法の糸口が見えて浮き足立っちまった。」


「いいですか?これは仮定の話ですし、この憶測が当てはまっていたら、それは喜ばしい事でも何でも無いんですよ、むしろ、"感情"を魔力変換出来る相手を倒さなければいけないという現実が見えてきて頭が痛くなりますよ。」


「"感情"を魔力って...もうそれある種永久機関じゃん...。」


減る事の無いエネルギーである、"感情"を魔力に変換し続ければ枯渇することの無い、異世界における最強の永久機関が完成してしまう。そんな化け物みたいなスペックの敵が、ルイの倒さなければいけない存在だと思うと、


「無理ゲーじゃね?」


「そうです、無理なんです。セグルドが一瞬で超回復するのも、魔力が永久に途切れないから身体が勝手に自己補完してるんだと思います、お手上げです。」


フェイが両手を上げて降参ポーズをしてみせる。だが、この男がそれだけで終わる訳がないと、ルイの魂が訴えていた。故に、熱い眼差しを送る。


「...でも、弱点は、見つけたんだろ?お前、そう言ってたしな。」


「...どうですかね、僕の憶測だと、セグルドが再生するのは魔力が尽きないからであって、特殊な魔法なんかじゃない。だから...一撃で...」


「再生不可能なレベルの攻撃を与える、ってか?」


「僕の見立てだと、それが一つの策です。まだ一応ありますが、とりあえずはその方向でいきましょう。」


と、方針が決まったところで、いよいよ反撃の狼煙をあげることとなる。


――――――


『新魔会』とか、『魔王軍』とか、『ルイ・レルゼン』とか、世界の諸悪を根絶やしにするために、彼はこの道を選んだ。全ては正義の為に。


「――どうして、僕は」


フェイ・ハイルは眠る少女を抱き抱えながら、屋根を飛んでセグルドの元まで戻っていく青年の後ろ姿を見て、己の心に一滴の黒が滲んでいくのを感じていた。


それは、"悪意"なのか、"憎悪"なのか、"贖罪"なのか、何に対しての、何の感情なのかは分からない。でも、白しか無かったフェイの世界を、少し変えてくれた彼を見て、フェイは言葉を零す。


「僕は、何がしたいんだ。」


『ルイ・レルゼン』を止めたかった。『ルイ・レルゼン』を取り戻したかった。違う、『ルイ・レルゼン』が好きだった、でも、『ルイ・レルゼン』は世界の悪となった、『ルイ・レルゼン』を知りたかった。『ルイ・レルゼン』と分かち合いたかった。


でも、もう、君はどこにもいない。


だって、そんな風に悪に立ち向かう男が『ルイ・レルゼン』な訳なかったから。


分かち合えないと思った、もう二度と会えないと思った。でも、


見覚えのあるわけのない、『ルイ・レルゼン』が、そこには居た。


「僕は、ルイ・レルゼンを倒したくて...ルイ・レルゼンを、止めたくて...」


それなのに、今、フェイはルイ・レルゼンと共闘している。実際には戦わないが、情報を共有し、共に悪を倒そうとしている。


あの時のように。


分からない、分からない。

どうして、『ルイ・レルゼン』はそんな風に戦える?

『ルイ・レルゼン』は悪党ではないのか?

『ルイ・レルゼン』は正義の勇者なのか?


いや、それよりなにより、


『ルイ・レルゼン』の正解って、何なんだ?



ふと、そんなことを考えていた。


「...記憶を失って、貴方は...一体何がどうなったんだ?どうして、戦うんだ?どうして、助けたいんだ?....そもそも、『ルイ・レルゼン』って、何なんだ?」








「――やっぱり、お前は神すら測れない程の疑心暗鬼だな、フェイ・ハイル。」


「――っな」


聞き覚えのある声がして、後頭部に鈍い重低音が響い――

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