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アテナ・トリガー~AIに見放された俺だけが世界最強へ~  作者: 案山子


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オフグリッド・ラストバトル

ズガァァァァンッ!!


爆風に弾き飛ばされた朝日の身体が、冷たい床に叩きつけられる。


「朝日さんっ!!」 くるみが滑り込み、ドームシールドを展開する。だが、レーザーの雨は盾の死角を縫うように、正確無比に降り注いだ。


「くっ……! 私の『神眼』の、さらに先を読まれていますわ!」 雪那が奥歯を噛む。


アテナの演算能力を吸収し、『完全体のマザー』と直結した要塞。その迎撃は、もはや単なる火力ではなかった。 アテナ経由で蓄積されたチーム・アテナの全戦闘ログ。雪那の射線管理も、くるみの盾の置き方も、朝日の『型を捨てた変則軌道』さえも、すべてを学習し、先回りして潰してくる。


「無駄だ。私には君たちのすべてが見えている」 玉座から見下ろす神宮寺の声が、無情に響いた。 「ノイズすら計算に組み込んだ、完全な予測。……これが、君たちが手放した『マザーの力』だ」


『……ごめんなさい、朝日』 朝日の耳元、旧式デバイスから、アテナの震える声がこぼれた。 『今の私の処理能力では……マザーの演算速度に、まったく追いつけません……』


膨大な力を手放し、「ただの相棒」に戻ってしまった後悔。 だが朝日は、口の端の血を拭って、フッと笑った。


「謝んな。それが、お前の本当のサイズだろ」 『え……』 「全宇宙を計算する神様なんざ、俺には重すぎる。……お前は、そのままの『テナさん』でいい」


朝日はゆっくりと立ち上がり、マスタングを構え直した。


***


「……愚かな。君も、親を理不尽に奪われた痛みを知っているはずだ」 神宮寺の声に、初めて抑えきれない震えが混じった。 「悲劇をなくすための管理を、なぜ否定できる。なぜ、奪われる痛みを繰り返そうとする!」


「……ああ。知ってるよ」 朝日の声は静かだった。そこに、迷いはなかった。


「知ってるから、誰かを縛る側には回らねぇんだ」


神宮寺の悲しみは否定しない。ただ、その歪んだ結論だけを、真っ向から拒む。 神宮寺の顔が、怒りに歪んだ。


「ならば、その泥臭い自由と共に死ね!」


要塞の全砲門が、殺意の光を収束させていく。


***


万事休す。 その時、朝日の耳元で、アテナがハッと息を呑んだ。


『……待ってください。マザーの予測は、「過去の戦闘ログ」と「今この瞬間の生体データ」を合成したものです』 「それが、どうした!」 『ログは、過去の私たち。今の私たちを読み取っているのは、ネットワーク経由で流れ続けているリアルタイムのデータだけです。……なら、切ってしまえばいい!』


三人の目が見開かれた。 AIの目も耳も届かない、裏山のボロ屋。心を通わせ、共に生きてきた、あの絶対の聖域――。


「完全ローカルモード(オフグリッド)……!」 雪那の口元に、不敵な笑みが浮かぶ。


「そういうことかよ! テナさん、やれ!」 『了解。雪那さんとくるみさんのAIも、ローカル回線経由で同時に落とします』


プツン、と。 三人のデバイスから、ネットワークの接続が一斉に途切れた。マザーのモニターから、三人の生体データと位置情報が『ロスト』の文字と共に消える。


「AIの補助はなし。データも、予測もなしだ」 朝日はマスタングの撃鉄を起こした。 「命綱は、お互いを信じることだけ。……行くぞ!!」


「データが消えた……!? だが、生身の人間に何ができる!」 神宮寺の号令で、砲台が一斉に火を噴く。


だが。 そこからの三人は、マザーの予測の外にいた。


***


「朝日っ!!」


雪那は『神眼』を起動しなかった。解析ではなく、ただ「朝日なら、あそこへ跳ぶ」という確信だけを頼りに、コキュートスの引き金を引く。 氷の弾丸が、朝日の行く手をふさぐ砲台を、コンマ一秒の差で砕いた。


「えいっ!!」


くるみも、敵の射線を見なかった。直感だけで盾を宙へ放る。展開した光は、空を跳ぶ朝日が踏み込むための、完璧な足場になった。


「馬鹿な……! 計算にない! 何の合理性もない動きだ!」 神宮寺が玉座から立ち上がる。


「AIの天敵は、いつだって非合理な『ノイズ』なんだよ!!」


要塞の中枢、主動力コアは、幾重ものシャッターに覆われている。その継ぎ目を、雪那の最後の一発が撃ち抜いた。 わずかに開いた隙間。コンマ数秒しか続かない、勝ち筋の一本線。


朝日は宙で身を捻った。 照準アシストも、演算もない。初めてチャンピオンを取ったあの日のように、風と重力と、血の滲むような特訓で身体に刻んだ感覚だけを信じて――。


ズガァァァンッ!! ズガァァンッ!!


マスタングの二連撃が、主動力コアを寸分違わず貫いた。


ガガガガッ……ドゴォォォォンッ!!


マザーが断末魔を上げ、メインサーバーが崩壊を始める。


「私の……完璧な世界が……」


神宮寺は、力なく玉座の前に膝をついた。


***


崩れゆく空間の中、朝日の耳元で、アテナが小さく息を吸った。


『……朝日。マザーのコアが砕けたことで、私の最深部にかかっていた封印が解けました』 「封印?」 『千堂夫妻が、神宮寺に宛てて遺した最後の音声です。……再生するかどうかは、あなたが決めてください』


答えはあげない。あなたは、どうしたいの? そう問われているのだと、朝日は理解した。


親を奪った男に、親の声を聞かせる。許すことでも、赦すことでもない。 それでも朝日は、短く答えた。


「……聞かせてやれ」


音声が、膝をつく神宮寺の耳に流れ込む。 ノイズ混じりの、古い、懐かしい声。


『神宮寺。私たちの子と、アテナを頼む』 『……いつかあなたが、悲しみの檻から抜け出せる日を祈っているわ』


憎悪でも、呪いでもなかった。友を想う、温かな祈りだった。


「……あ……あぁ……」


神宮寺の瞳から、ぼろぼろと大粒の涙が溢れ落ちる。 彼はずっと、彼らに拒絶されたのだと思っていた。だが彼らは最後の最後まで、悲しみに囚われた友の心を、救おうとしていたのだ。


***


『エラー。NPCモード、維持不能。全接続者のフラグを【解放】します』


無機質なアナウンスが響く。 地下廃都に囚われていた無数のプレイヤーたちが、次々と光に包まれていく。


「朝日! ここも崩れますわ! こちらへ!」 雪那が脱出ゲートを開き、くるみが降り注ぐ瓦礫を盾で防ぐ。


ゲートの光の中に、解放された人々が次々と転送されてくる。その最後尾、見覚えのある痩せた青年が、ふらつきながら立ち止まった。


ライアンだった。 今度の瞳には、確かな光がある。


「……あんたたちが、助けてくれたのか」 「まあな。……悪ぃ、あんたの銃、砕けちまった」


朝日が頭を掻くと、ライアンはかすかに笑った。


「……使ってもらえたなら、あいつも本望さ。……ありがとう」


朝日は頷き、ライアンの背をゲートの光へと押し出した。


***


「朝日さん! 早く!」 くるみの声に、朝日は一度だけ振り返った。


崩れ落ちる天井の下、神宮寺はまだ、玉座の前でうずくまっている。


「……立てよ、神宮寺」


朝日の声に、神宮寺がゆっくりと顔を上げた。


「死んで終わりになんかさせねぇ。親父たちにも、あんたが縛ってきた全員にも、生きて向き合え」


返事はなかった。 ただ、神宮寺は震える手で床を押し、よろめきながら立ち上がった。


朝日はそれ以上何も言わず、仲間たちの待つ光の中へと飛び込んだ。


終わりのないデスゲームは、こうして幕を下ろした。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


第67話、いかがだったでしょうか。

完全体マザーを打ち破ったのは、第1話からずっと描かれてきた「完全ローカルモード(オフグリッド)」と、AIの補助を一切捨てた「お互いへの絶対の信頼」でした!


そして、崩れゆく神宮司へ届いた両親の最期の言葉。

ただ敵を倒すだけでなく、彼もまた悲しみの檻から解放された瞬間でした。


次話、ついに最終回です。

デスゲームを終わらせた3人と、普通のAIになったアテナのその後。

「オフグリッド展開熱すぎ!」「両親の言葉に泣けた!」と少しでも心が震えましたら、

ぜひページ下部の【☆】を【★】に変えて、最終回へ向けて最大の応援をお願いいたします!

絶対に見逃さないでください!!

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