完全武装の凱旋、蹂躙の行進
カチャリ……チャキッ。
無機質で静まり返った白い回廊に、冷たい金属音が響く。
朝日は愛銃『マスタング』の重厚なシリンダーを回し、弾薬を一つ一つ確実に込め直していた。
掌から伝わる、ずしりとした鉄の重み。硝煙とオイルの匂い。
システムに自身のロードアウト(初期装備)を再認識させたことで、彼らの弾薬や耐久値は完全にフル状態へと回復していた。
「……やっぱり、こいつの重さが一番しっくりくるな」
朝日は獰猛に口角を吊り上げ、ホルスターにマスタングを収めた。
開かれた隔壁の先に広がるのは、これまでのボロ屋敷や錆びついた廃都とは全く違う空間。
継ぎ目のない純白の壁面と、青白い光のラインが幾何学模様を描く、神宮司の技術力を誇示するかのような近未来的なメイン回廊だ。
その奥から、無数の赤いセンサーアイが暗闇を割って点灯する。
ウィィィン……ッ!
現れたのは、先ほどのゲートキーパーに続く量産型の警備ドローン群。完全武装した二足歩行の殺戮兵器が、波状陣形を組んで通路を埋め尽くしていた。
だが、完全武装を取り戻した今の『チーム・アテナ』にとって、それは脅威ではなく、ただの「的」に過ぎなかった。
「――お掃除の時間ですわね。前方、ドローン群12機。……一網打尽にしますわ」
雪那が『コキュートス』を構え、氷のような声でオーダーを飛ばす。
「了解っ! 朝日さん、道作ります!」
くるみが前へ躍り出る。彼女が構える大盾から放たれた青い光が、空中に三つの『光の足場』を階段状に生成した。
「っしゃあ! 待たせたな鉄屑共!!」
朝日は驚異的な脚力でその光の階段を駆け上がる。
敵の迎撃システムが朝日をロックオンした瞬間、遥か後方からの雪那の狙撃が、ドローンの火器管制センサーを正確に粉砕した。
「遅ぇよ!!」
空中高く跳躍した朝日が、二丁の拳銃を交差させるように構え、引き金を引く。
ズガァンッ!! ズガァンッ!!
鼓膜を揺らすアナログな爆音。
放たれた大口径弾が、ドローンの分厚い装甲ごとメインコアを撃ち抜く。
着地と同時にくるみのドームシールドへ滑り込み、次弾の装填。無駄が一切ない、息の合った完璧な連携のショーケース。
「へへっ……マスタングの反動、やっぱ最高だぜ!」
硝煙を吹き飛ばしながら笑う朝日に、雪那がスコープから目を離さずにチクリと刺す。
「油断は禁物ですわよ、朝日。……と言っても、今の私たちなら負ける気はしませんけれど」
「えへへ、私たちの盾のノーミス記録、絶賛更新中です!」
くるみも大盾の後ろから顔を出し、楽しそうに笑う。
丸腰のサバイバルという極限状態を乗り越えた3人は、久しぶりに『自分たちの戦い』を心の底から楽しんでいた。
だが、メインサーバーの防衛機構は、単なる数押しで終わるほど甘くはなかった。
『――システム・アップデート。敵対対象の戦術パターンを学習・共有』
無機質な電子音声が回廊に響く。
突如、残存していたドローン群の動きが劇的に変化した。
くるみが光の足場を展開した瞬間、ドローンたちは朝日を狙うのではなく、足場が生成された『空間そのもの』へ向けて一斉に弾幕を張り、朝日の跳躍ルートを完全に封鎖したのだ。
「なっ……動きが変わりましたわ!」
雪那が顔をしかめる。ドローンたちは雪那の狙撃タイミングをずらすように不規則な回避行動を取り始め、連携の隙間を的確に突いてくる。
『……神宮司らしい悪趣味なギミックですね』
アテナの静かな声が、朝日の脳内に響く。
『最適化されすぎた次世代AIです。彼らはこの数分間で、あなたたちの「完璧な連携」を学習し、その解答をリアルタイムで構築し始めました』
「学習速度が異常すぎるだろ……ッ! だったらどうする!?」
壁の裏に身を隠し、弾幕を避けながら朝日が舌打ちをする。
『相手が私たちの「型」を学習して最適化してくるなら――こちらは、その「型」を捨てればいいだけです』
アテナの声には、AIらしからぬ不敵な笑みが混じっていた。
『朝日、雪那さん、くるみさん。これより、これまで積み上げてきたセオリーをすべて放棄します。……あえて、徹底的に「非効率な動き(ノイズ)」で暴れ回ってください』
「……ハッ、最高じゃねえか!!」
朝日は獰猛に笑うと、マスタングをホルスターに収め、その辺に転がっていた『破壊されたドローンの装甲板』を拾い上げた。
そして、くるみのシールドを足場にするセオリーを無視し、装甲板を盾代わりにしながら、敵の弾幕へ向かってジグザグに突進していく。
「予測不能な獣の真似事……私には少し品がありませんけれど、付き合いますわ!」
雪那もあえて狙撃のテンポを崩し、敵の足元や壁を撃って跳弾で攪乱する。
くるみも盾を構えるのではなく、敵の視界を遮るためだけにデタラメな位置へシールドを乱発し始めた。
『――エラー。対象の行動パターン、解析不能』
『戦術予測、機能不全――』
極限まで最適化されたAIだからこそ、合理性の欠片もない「ノイズだらけの動き」には対処できない。
フリーズしたドローン群のど真ん中へ飛び込んだ朝日は、拾った装甲板を敵の顔面に叩きつけ、体勢が崩れたところへ至近距離からマスタングをぶち込んだ。
型を持たない、人間の泥臭い強さ。
完璧に計算されたシステムを、非合理な絆と直感が再び凌駕した瞬間だった。
ズガァァァンッ!!
最後の1機が爆発し、光の粒子となって消滅する。
激しい戦闘の余韻が静まる中、3人は息を整えながら回廊の奥へと歩みを進めた。
やがて、彼らの前に『それ』が立ちはだかる。
これまでの隔壁とは明らかに格が違う、重厚な黒鉄の巨大な扉。
その表面には、血のような赤色で不気味なホログラムメッセージが刻まれていた。
【――警告:これより先、最終防衛層】
「……いよいよ、この奥ね」
くるみがごくりと唾を飲み込む。
雪那は無言でコキュートスの銃身を撫で、小さく、しかし力強く頷いた。
「待ってろよ、神宮司。……全部、ぶっ壊してやる」
朝日はマスタングを強く握り直し、隣に立つ最高の仲間たちと視線を交わした。
深く息を吸い込み、決意と共に、三人は最後の扉へとその手をかけた。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
第62話、完全武装を取り戻したチーム・アテナの無双ターンでした!
神宮司の放った「学習するAI」に対し、「セオリーを捨てて非合理に暴れる」というアテナの策で突破する展開、いかがだったでしょうか。
いよいよ次話、最終防衛層へ突入します。
神宮司の待つ最深部を前に、彼らを待ち受ける「格の違う防衛」とは……!?
「無双展開スカッとした!」「いよいよ黒幕戦が近づいてきてドキドキする!」と思っていただけましたら、
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次回もよろしくお願いいたします




