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アテナ・トリガー~AIに見放された俺だけが世界最強へ~  作者: 案山子


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奪還の狼煙と二発の命綱

分厚い隔壁が、重々しい金属音と共に左右へ開いた。


「ここは……」

雪那が息を呑む。

扉の向こうに広がっていたのは、先ほどまでの錆びついたスラムのような居住区とは対極の空間。眩いほどに白く、無機質で、広大なドーム型の『実験室(アリーナ)』だった。


そして、その空間の中央。

青白い光に照らされた強化ガラスのシリンダーの中に、彼らが痛いほど見慣れた『それら』は展示されるように置かれていた。


漆黒の対物ライフル『コキュートス』。

鉄壁の『大盾デバイス』。

そして、無骨な旧式リボルバー『マスタング』。


「俺たちの装備……ッ!」

朝日の瞳に熱が宿る。


罠だと分かっていても、進むしかない。

3人がアリーナへ足を踏み入れた瞬間、背後の隔壁が鼓膜を打つような音と共に完全に封鎖された。

同時に、アリーナの奥から巨大な床がせり上がり、地鳴りのような駆動音を響かせて『それ』が姿を現す。


全高4メートル。全身を分厚い複合装甲で覆い、両腕にガトリング砲を備えた重装甲警備ドローン『ゲートキーパー』。

赤いセンサーアイが、丸腰の3人を『駆除対象』としてロックオンした。


「現在の装備での勝率……ゼロ%ですわ。素手やナイフで傷つけられる装甲ではありません」

雪那が氷のような声で絶望的な事実を告げる。

「そんな……じゃあ、どうやってあれを倒せば……」

くるみが後ずさる。


だが、朝日は一切の絶望を見せず、ボロ布のポケットから「3つのアイテム」を取り出した。


拾い直した、刃こぼれだらけの『コンバットナイフ』。

弾の入っていない、ライアンの遺品『サブマシンガン』。

そして、ずっと温存してきた『マスタングの大口径弾2発』。


『朝日。それはマスタングの規格です。ライアンのサブマシンガンとは口径が全く合いません。無理に薬室に押し込んでも、構造上「撃つ」ことは不可能です』

アテナが冷静な警告を発する。


だが、朝日は獰猛に口角を吊り上げた。


「分かってるよ。テナさん、こいつは“撃つ”んじゃねぇ。……“爆弾”にするんだよ」

『……爆弾?』

「弾頭を外して薬室に無理やりねじ込む。引き金は使わねぇ。後ろから信管をナイフの柄で直接ぶっ叩いて、至近距離で無理やり起爆させるんだよ!!」


朝日の狂った発想の転換。

それは銃を「手動発破の指向性爆弾(マニュアル・カノン)」へと変える、あまりにも泥臭く、命知らずな一撃必殺の戦術だった。


「狂ってますわ……! その距離で爆発させれば、あなたの手首ごと吹き飛びますわよ!」

雪那が青ざめる。

「だから、お前らの力が必要なんだ。雪那、あのクソデカい鉄屑の装甲の隙間……コアが露出する瞬間を予測できるか」

「……」

雪那は短く息を吐き、バイザーの奥の瞳を鋭く細めた。

「愚問ですわ。コンマ1秒の座標とタイミング、完璧に私の『神眼』で誘導して差し上げます」


「くるみ。俺の手の甲ギリギリに、お前の極小シールドを張れ。爆風から俺の腕を守り切れ」

「はいっ……! 朝日さんの腕、絶対に吹き飛ばさせません!!」


「よし。行くぞ……ッ!」


ガトリング砲が火を噴く。

だが、雪那の神眼による完璧な射線予測の指示により、朝日は弾幕の隙間を縫うようにしてゲートキーパーの懐へと一気に肉薄した。


「――朝日、右胸部の装甲結合部! 今ですわ!」


雪那の叫びと同時。

朝日は、ライアンのサブマシンガンの銃身を、装甲のわずかな隙間へと力任せにねじ込んだ。

くるみが、朝日の手首を覆うように極小のシールドを展開する。


「ありがとな、ライアン。……あんたの銃、最高に熱かったぜ!!」


朝日は逆手に持ったコンバットナイフの硬い柄(尻の部分)で、薬室にねじ込まれた弾丸の信管を、渾身の力で叩き潰した。


ズガァァァァァァァァァンッ!!!!!


アリーナ全体を揺るがすような大爆発。

マスタングの大口径弾が密閉空間で破裂したエネルギーは、サブマシンガンの銃身を粉々に砕き散らしながら、一直線にゲートキーパーの内部コアを貫き、完全に破壊した。

同時に、その凄まじい爆風によって中央の強化ガラスシリンダーも粉々に砕け散る。


「……はぁっ、はぁっ……」

朝日は痺れる右腕を下ろし、煙を上げる鉄屑の山から視線を外した。

爆風から完全に腕を守り切ったくるみのシールド。雪那の完璧な誘導。そして、過去の敗者が遺した銃。どれ一つ欠けても成立しない、泥臭すぎる奇跡の一撃。


ガラスの破片が散らばる床を歩き、朝日はついに『それ』の前に立った。

無骨で、重厚な、時代遅れの相棒。


朝日はマスタングを手に取り、カチャリとシリンダーを回して、愛おしそうに笑った。


「……待たせたな、相棒」


その背後で、雪那もまた、漆黒の対物ライフル『コキュートス』を両手で拾い上げる。

冷たい銃身の感触を確かめるように撫でた後、彼女はスッと目を細め、かつての絶対零度のスナイパーの顔に戻った。


「……ふふ。これでようやく、まともな仕事ができますわね」


そしてくるみも、自分の身長ほどもある大盾のデバイスをぎゅっと胸に抱きしめ、安堵の涙をポロリとこぼした。


「おかえりなさい……っ。もう、絶対に手放さないからね」


ボロ布のままだが、その手には確かな己の魂(武器)がある。

最強の装備を取り戻し、三人の顔から丸腰のサバイバルの疲労が完全に消え去っていた。


「さあ、準備運動はお終いだ。……行くぞ、メインサーバーへ」


朝日のマスタングが、暗い通路の先を真っ直ぐに指し示す。

完全武装を取り戻した『チーム・アテナ』の、神宮司への本当の反逆が、今ここから始まる。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


温存していた2発の弾丸とライアンの銃は、撃つのではなく「爆弾(手動発破)」にするという朝日の狂った戦術でした!

くるみの盾、雪那の神眼、そして過去の敗者の遺品。すべてが一つになってゲートキーパーを粉砕し、ついに最強の装備を奪還しました!


「手動大砲熱すぎる!」「3人の武器との再会エモい!」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひページ下部の【☆】を【★】に変えて、応援していただけると執筆の大きな力になります!


完全武装を取り戻したチーム・アテナ。次回から、メインサーバーでの激闘がフルスロットルで加速します! 絶対にお見逃しなく!

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