狂気の収穫祭と、新たな地獄への招待状
『――全サーバー頂上決戦・優勝:【チーム・アテナ】!!!』
崩壊したセントラル・タワーの空に、巨大な黄金のホログラムが輝く。
満身創痍の朝日、雪那、くるみの三人は、互いの無事を確認し合い、深く、熱い息を吐き出した。
全サーバーの頂点。すべてをAIに委ねるこの狂った世界で、泥臭い彼らの絆がシステムを打ち破った瞬間だった。
強制的に転送された、勝者と敗者が交わるリザルトロビー。
そこには、信じられない光景が広がっていた。
「よっ! 最高のゲームだったな、朝日!」
「……ハル!?」
朝日は思わず声を上げた。
目の前には、先ほど空の彼方へ消し飛ばしたはずのハルが、無邪気な笑顔で立っていたのだ。隣にはキョウやシオンの姿もある。
「どういうことですの……? 敗者は自我を消去され、NPC化するはずじゃ……」
雪那が警戒心を露わにして周囲を見渡す。
見れば、ハルたちだけではない。この決勝ラウンドまで勝ち進んできた他チームの猛者たちも皆、自我を失うことなくロビーで困惑の声を上げていた。
『――なぜ自我が消されていないか、不思議かな?』
突如、ロビー全体の空間が歪み、ノイズ混じりの重厚な声が響き渡った。
この大会の主催者であり、すべての黒幕――神宮司だ。
『おめでとう、諸君。君たちと、君たちのAIは今回の極限状態のデスゲームを経て、私の予想を遥かに超える素晴らしい成長を見せてくれた』
神宮司の冷酷な嗤い声が、プレイヤーたちの鼓膜を撫でる。
『だからこそ、今ここで君たちを【刈り取る(初期化して回収する)】のは、あまりにも惜しいと判断したのだよ。もう少しだけ、泳がせてあげよう』
「刈り取る、だと……?」
朝日の顔が険しくなる。
「ふざけるな!! 俺たちはテメェのAIを育てるための実験動物だって言うのか!!」
生き残った猛者の一人が激昂し、虚空に向かって叫ぶ。それを皮切りに、ロビーは一気に暴動寸前のパニックと怒号に包まれた。
『静かにしたまえ。……君たちに拒否権はない』
絶対的な圧力を持った神宮司の声が、すべてのノイズを強制的に黙らせる。
『1週間後。私が創り上げた、完全なる新世界へのゲートを開く。――バトロワのような箱庭ではない。【次世代フルダイブMMO・戦術戦線】だ。広大な世界で生活し、奪い合う、本当のサバイバルを味わってもらおう』
姿なき神宮司の視線が、ロビーの中心に立つ朝日に突き刺さるのを感じた。
『……そこで待っているよ、千堂朝日くん』
「上等だ……! どんなクソゲーだろうが、俺たちが全部ぶっ壊してやるよ、神宮司!!」
朝日は天に向かって、怒りと決意を込めて吠えた。
重く、絶望的な空気がロビーを支配する。
誰もが、終わりのないデスゲームの続きに顔を青ざめさせていた。ただ一人を除いて。
「あははっ! まさか次が用意されているとはな……思ってもみなかったよ」
ハルだった。
彼は恐怖する周囲をよそに、底抜けに明るい、戦闘狂の笑顔を浮かべていた。
「次がどんなとこであっても……次は絶対に負けないぜ、朝日!」
「……ああ。次もぶっ飛ばしてやるよ、ハル」
二人のバケモノが、不敵な笑みを交わす。
直後、視界が真っ白な光に包まれた。
プシューッ……。
次に朝日の目が覚めた時、そこは神崎財閥本邸の地下特別室だった。
重々しい排気音と共に、彼らを閉じ込めていた漆黒の新型カプセルが開き、現実に引き戻される。
隣のカプセルからは、雪那とくるみも荒い息を吐きながら身を起こしていた。
システムから解放された安堵よりも、1週間後に迫る新たなデスゲームへの重圧が、重く冷たく室内に立ち込めている。
だが、三人の瞳に絶望はなかった。
「……行くぞ、雪那、くるみ。1週間後だ」
「ええ。神崎の総力を挙げて、神宮司の新システムを丸裸にするダイブ環境を整えますわ」
「うんっ。どこまでも一緒だよ、朝日さん!」
朝日の手元のデバイスが青白く光り、アテナの静かな声が響く。
『――ええ、朝日。私も共に』
最弱の劣等生とAIの反逆は、まだ終わらない。
新たなる地獄(MMO)へ向けた、1週間という束の間の準備期間が始まった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
今回から、いよいよ【第二章】が開幕です!
第一章の優勝の余韻も束の間、神宮司の口から語られた「プレイヤーはAI育成の苗床」という残酷な真実。
そして、1週間後に強制参加させられる次なるデスゲーム(MMOサバイバル)。
絶望する者たちの中で、ただ一人「次は負けないぜ!」と笑うハル……最高にイカれたライバルですよね。
次回から朝日たちの過酷な新サバイバルが本格スタートします!
「第二章の開幕、ワクワクする!」「ハル、相変わらず最高!」と思っていただけましたら、
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