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アテナ・トリガー~AIに見放された俺だけが世界最強へ~  作者: 案山子


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玉座の崩壊と、射線の上書き

広場で18名が殺し合う大乱戦(カオス)の土煙を隠れ蓑にし、アテナの演算が弾き出した『完璧な座標』がくるみのデバイスへと転送された。


「王様気取りは……そこまでですっ!!」


くるみが両手でデバイスを天へ掲げる。アルティメットスキル『防衛爆撃』。

彼女が狙いを定めたのは、遥か上空――ハルとキョウが陣取るセントラル・タワーの頂上(玉座)だった。


「――おっと。上へのちょっかいは許さないよぉ」


タワー頂上で下を見下ろしていたフェンリルのサポート・シオンが、気怠げにホログラムキーボードを叩く。

アルティメットスキル『ジャミング・テンペスト(電子の爆撃)』。

シオンはくるみの爆撃システムそのものをハッキングし、空中で強制キャンセルさせようと電子の網を広げた。


「フフッ、もらったぁ……えっ?」

シオンの指が止まる。彼女のハッキングコードが、強固すぎる『ファイアウォール』に弾き返されたのだ。


『――あら。私の可愛い生徒の邪魔をしないでくれるかしら?』


シオンのインカムに、アテナの底冷えするような声が響く。

「なっ……私のハッキングが、通じない……!?」

世界トップクラスのシオンの電子戦能力を、アテナが力技で完全にねじ伏せた。


直後、ハッキングを免れた無数の光の雨が、タワーの頂上へと容赦なく降り注ぐ。


ズドドドドドォォォンッ!!!


「うおっ!?」

「ハハッ、マジかよ!」


激しい爆炎と共にタワーの屋上が完全に崩壊。足場を失ったハルとキョウは、空中の瓦礫と共に下空へと投げ出された。


「……ナイスですわ、くるみ、アテナ! 落ちてきますわよ!!」

下層のバルコニーに陣取っていた雪那が、空中の二人に『グングニル』の銃口を向ける。


しかし、空中に放り出されたキョウの顔に焦りはない。彼は瓦礫を蹴って空中で強引に姿勢を制御すると、巨大な対物ライフルを雪那へと向けた。


「チマチマと……鬱陶しいんだよ三流がァ!!」


キョウの瞳が、血のような赤色に発光する。

アルティメットスキル――『ピアシング・ジャッジメント(絶対貫通)』。


――その瞬間、雪那の脳裏に、決戦前の作戦会議の記憶がフラッシュバックした。


『キョウの狙撃はあらゆる障害物を無視する絶対貫通。現在の雪那さんの【1秒先】の予測では、見てから回避することは不可能です』

アテナの冷酷なデータ提示に対し、雪那は自ら提案した。

「なら、アテナ。私のAIでは無理でも、オーバースペックであるあなたの演算能力を私に直結しなさい。強制的に【3秒先】まで視覚を拡張(オーバークロック)して、キョウの弾道を完全に先読みしますわ」

「バカ言ってんじゃねえぞ雪那!!」

激しく机を叩いたのは朝日だった。「脳神経が焼き切れるかもしれないんだぞ!? それに、いくら先読みしたって相手は絶対貫通だ。相打ちになれば、お前は確実に直撃を食らう!」

「わ、私も反対です! 雪那さんがボロボロになる作戦なんて……っ!」

泣きそうに反対する二人。だが、雪那の意志は岩のように固かった。

「……相手は世界最強の狙撃手。これ以外に勝つ盤面(ルート)はありませんわ。それに――私は【チーム・アテナ】の狙撃手ですのよ。私がアイツを撃ち落とさなくて、誰が朝日への道を切り開くんですの?」

その揺るぎない覚悟。

数秒の沈黙の後、朝日はギリッと奥歯を噛み締め、アテナは静かに『……了承しました』と告げた。

「……絶対に、即死だけは防ぎます。私の全部の盾を、雪那さんに集めますから……っ!」

震える声で誓ったくるみの顔。


――記憶のフラッシュバックは、コンマ一秒の出来事。


『システム介入。視覚野拡張(オーバークロック)、実行します』


アテナの音声と共に、雪那の蒼く光る左目から、限界を超えた代償として一筋の赤い血が頬を伝う。

引き延ばされた3秒間の未来。雪那には、キョウの放つ弾丸の軌道が『真っ直ぐな線』として明確に視えていた。


「くるみ……っ!」

「はいっ!! 約束通り、【多重極小シールド】、雪那さんの頭部と胸部に展開!!」


くるみがデバイスを限界まで駆動させ、雪那の急所の数センチ手前に、何十枚もの極小のドームシールドを圧縮して重ね合わせる。さらに雪那は、分厚いコンクリートの壁を自らの盾とした。


直後。空中のキョウから、空間そのものを削り取るような凶弾が放たれた。


ズバァァァァンッ!!


絶対貫通の一撃が、雪那の前のコンクリート壁を紙屑のように貫き、続けてくるみが展開した多重シールドに激突する。


パリンッ! パリィィンッ!!

最強の盾が次々と粉砕されていく。だが、その数枚のシールドとコンクリートの壁が、キョウの弾丸に『ほんのコンマ数秒のラグ』と『威力の減衰』を生み出した。


血を流す雪那の神眼には、キョウの弾丸が空間を穿って作った『真空のトンネル』がはっきりと見えていた。

障害物が一切存在しない、キョウの心臓への直通ルート。


「――貫きますわ」


ズガァァァァァァンッ!!!


雪那の『グングニル』が火を噴く。

放たれた極太の光条は、キョウの弾道(トンネル)を完璧になぞるように逆流し、空中のキョウの胴体をど真ん中から綺麗に消し飛ばした。


「な、バカな――」

キョウが驚愕に目を見開いたまま、光の粒子となって消滅する。


『――【チーム・アテナ】が1名をキルしました』


そのシステムアナウンスが響いた直後。

威力を削がれ、ラグを生じながらも到達した絶対貫通の弾丸が、雪那の胸部アーマーを無慈悲に打ち砕いた。


「が、はぁっ……!?」

「雪那さんっ!!!」


凄まじい衝撃。雪那の細い身体が後方へ大きく吹き飛ばされ、瓦礫の中に激しく叩きつけられる。

HPゲージは限界まで削られ、真っ赤なアラートが視界を埋め尽くした。


「雪那さん! 雪那さんっ!!」

くるみが半狂乱で駆け寄り、崩れ落ちた雪那の身体を抱き起こす。


薄れゆく意識の中。

血に染まった視界で、必死に涙を流すくるみの顔を見つめながら、雪那は微かに、けれど美しく口角を上げた。


「……ふふ。即死しなかったのは……あなたの、最高の盾のおかげですわよ……くるみ……」


その言葉を最後に、雪那の首がガクリと落ち、彼女の意識は深い暗闇へと沈んでいった。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


第53話、いかがだったでしょうか。

最強の狙撃手であるキョウの『絶対貫通』を破るため、雪那が選んだのは「自らが的になり、射線を逆流して撃ち抜く」という、あまりにも悲壮で気高い覚悟でした。


脳神経を焼き切る覚悟で未来を視た雪那。

彼女の即死を防ぐため、持てる力のすべてを「盾」に注ぎ込んだくるみ。

そして、それを信じてオーバースペックの演算を託したアテナ。


ボロボロになりながらも、彼女たちは【チーム・アテナ】の誇りを懸けて、絶対に不可能と思われた最強の狙撃手を打ち破りました!


「雪那の覚悟に泣いた!」「くるみの盾、最高だった!」と少しでも心が熱くなっていただけましたら、

ぜひページ下部の【☆】を【★】に変えて、3人の死闘を応援していただけると本当に嬉しいです!

(皆様からの星や応援が、最終決戦を書き上げる作者の最大のエネルギーになっています!!)


倒れた雪那。そして、崩壊するタワーの空中で相対する朝日とハル。

盤面に残された「最強のバケモノ」同士による、本当の最終決戦が次回、ついに幕を開けます。絶対に見逃さないでください!

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