玉座の静寂と、最高のライバル
『――生存チーム、残り8部隊。最終安全地帯の収縮が完了しました』
無機質なシステムアナウンスが告げる。
バトロワの終盤。残り8部隊(最大24名)が一つの限られたエリアに集い、生き残りをかけて血で血を洗う大乱戦になるのが常識だ。
しかし――。
最終決戦の地【セントラル・タワー】に足を踏み入れたチーム・アテナの三人を迎えたのは、鼓膜が痛くなるほどの『不気味な無音』だった。
「……何ですの、この異様な空間は」
雪那が瓦礫の陰からタワー周辺の広場を覗き込み、息を呑む。
広場を埋め尽くすように転がっているのは、無数のデスボックス(倒されたプレイヤーの残骸)の山だった。
罠ではない。この静寂の理由は、あまりにもシンプルで、残酷な事実によるものだった。
ズガァァァァァァンッ!!!
突然、タワーの中腹から大砲のような轟音が轟き、広場の端で身を隠そうとしていた別チームのプレイヤーが、遮蔽物ごと粉砕されて光の粒子へと変わった。
「対物ライフル……『フェンリル』の狙撃手、キョウの火力ですわね」
雪那が『グングニル』の銃身を撫でながら、冷静に分析する。
そう。ハル率いる最強の王者『チーム・フェンリル』は、タワーの玉座(ど真ん中)に堂々と陣取り、近づく部隊をたった1チームで片っ端から迎撃・蹂躙していたのだ。
生き残っている他の猛者たちは、フェンリルの異常な強さに完全に恐れをなし、息を潜めて膠着状態に陥っていた。
「へへっ……相変わらず、バケモノみたいな連中だね」
くるみが盾を構えながら、引きつった笑いを浮かべる。
「だが、これでハッキリした。あいつらを引き摺り下ろさねぇ限り、チャンピオンの座はないってことだ」
朝日は一切の恐怖を感じていないかのように、口角を獰猛に吊り上げた。
その時だった。
タワーの頂上。眼下の広場に現れた朝日の姿を視認したハルの表情から、退屈の色が完全に消え去った。
口元に浮かんだのは、見下すような嘲笑などではない。純粋な強敵との闘争を待ちわびた、一人のゲーマーとしての熱を帯びた笑み。
『――アァ、マイクテス、マイクテス』
突如、タワー周辺のエリア全体に、広域チャットの音声が響き渡る。
隠れていた他チームのプレイヤーたちが、「ハルが声を出した!?」と一斉に戦慄した。
『……やっと来たか! 待ってたぞ、朝日!!』
それは、純粋で、真っ直ぐで、圧倒的な熱量を持った宣戦布告。
周囲に隠れる他のトップランカーたちは、自分たちが見向きもされず、最強の王者がただ一人の男(朝日)の到着だけを待ち望んでいたという事実に震え上がった。
『さあ――もう一度がない最高の闘いを、ここで始めようか!!』
ビリビリと空気を震わせるハルの声。
それに呼応するように、朝日は遮蔽物から堂々と歩み出た。
「……上等だ」
朝日は不敵に笑い、手に持った愛銃『マスタング』の銃身を、遥か上空の玉座にいるハルへ向けて真っ直ぐに突きつけた。
電子制御を持たない、鉄と火薬だけのアナログ銃。
そして、AIにすべてを愛された最新鋭の王者。
互いの視線が、スコープの距離を超えて、バチリと熱く交差する。
静寂に包まれたセントラル・タワーを舞台に、因縁の最終決戦が、今、幕を開けようとしていた。
第50話、ここまで読んでいただき本当にありがとうございます!
ついに大台到達! そして最終決戦の地での、ハルと朝日のバチバチの邂逅です!
他のトッププレイヤーたちが恐怖する中、純粋に朝日の到着を待ちわびていたハル。彼もまた、戦いを愛する最高のライバルです。
ここから始まる最終決戦、「2人の激突が熱い!」「続きが早く読みたい!」と少しでも思っていただけたら、
ぜひページ下部の【☆】を【★】にして応援していただけると嬉しいです!
皆様の応援が、この最終決戦を書き上げる最大のパワーになります! よろしくお願いします!




