夜の決闘と、黄金の相棒
Aブロック制覇から数時間後。
本戦決勝を翌朝に控えた出場者たちには、運営から超一流ホテル並みのプライベートエリアと、最高級のフルコース料理が振る舞われていた。
「まあ! この仮想空間のワインと肉料理、リアルの最高級店よりも美味しいですわ!」
「雪那さん、お肉おかわりありますよ! デザートもすごい……!」
豪華なパーティールームで、勝利の余韻と極上の『おもてなし』を全力で満喫する雪那とくるみ。
だが、その輪の中に朝日の姿はなかった。
「……朝日? どこへ行きましたの?」
◇
月明かりだけが照らす、無人の練習用ダイブエリア。
「――やっぱり、来てくれたんだ」
暗闇から姿を現したのは、Bブロックを制した【チーム・フェンリル】のリーダー、ハルだった。
彼の手には、二丁のサブマシンガンが握られている。
「挨拶代わりの1v1。……受けてくれるでしょ、朝日?」
「ハッ、断る理由がねぇよ」
朝日はニヤリと笑い、マスタングを抜いた。
半年前、自分を一方的に叩きのめした因縁の相手。
審判も観客もない、夜の秘密裏のタイマン。合図と同時に、二人のバケモノが跳ねた。
ズガァンッ! タタタタッ!!
常人では視認すら不可能な、超高機動の撃ち合い。
ハルの三次元的な動きに対し、朝日は持ち前の『野生の直感』で食らいついていく。
雪那のIGLも、くるみのシールドもない。あのダイブ機能で「3年分」に相当する密度の地獄を潜り抜けてきた、朝日個人のプレイ。
「すごいよ朝日! 半年前とはまるで別人だ!」
「へっ……血の小便流しながら特訓してきたんでね!!」
一瞬の隙を突き、ハルが背後を取る。
「でも――届かない!」
死角からの必殺の一撃。だが、朝日の瞳が黄金色に輝いた。
アルティメットスキル:『プレデター・ゾーン』。
朝日の感覚が跳ね上がり、周囲の時間の流れが極限まで遅延する。
振り向き様に放たれたマスタングの全弾叩き込み。
「なっ……!?」
ハルの頬を大口径の弾丸がかすめ、鮮血が舞う。ハルが初めて「焦り」の表情を浮かべた。
だが――。
バシィンッ!!
朝日のULTが切れたコンマ数秒の隙。
ハルの二丁 SMG の連射が朝日の胸元を穿ち、リザルト画面に『YOU DIED』の文字が浮かび上がった。
結果は、朝日の敗北。
「……あはは、危なかった。一瞬、本当に殺されるかと思ったよ」
肩で息をしながら、ハルは嬉しそうに笑った。
「明日、楽しみにしてるよ。……今度は本当の戦場でね」
ハルが立ち去り、一人静まり返る練習エリアに残された朝日。
バーチャルの床に仰向けで寝転がった朝日の顔には、敗北の悔しさ……ではなく、確信に満ちた笑みが浮かんでいた。
(……通用した。俺一人の直感と覚醒でも、ハルの喉元まで刃は届いた)
ふっと、周囲の暗闇に青白い光の粒子が舞い踊る。
静かに実体化したのは、黄金の髪を月光に輝かせる、慈愛に満ちた美しきAI――アテナだった。
アテナは仰向けに倒れる朝日の傍らに静かに腰を下ろし、優しく見下ろした。
『……バイタルが乱れていますわ、朝日。また無茶をしたのですね』
「……見てたろ、テナさん」
朝日は天井を見上げたまま、苦笑交じりに呟いた。
「俺一人の直感と動きじゃ、ハルにはあと一歩届かなかった。これが……俺だけの今の限界だ」
『……』
「でも、確信できた。俺の感覚に、雪那の頭脳とくるみの盾、そしてテナさんの吐き出す完璧なサポートロジックが噛み合えば……俺たちは、あいつすら超えられる」
朝日は身体を起こし、隣に座るアテナの瞳を真っ直ぐに見つめた。
「親父とお袋の残した答えに届くためにも……俺に力を貸してくれ、テナさん。明日、俺を世界一のアタッカーにしてくれ」
アテナは一瞬、愛おしそうに目を細め、そして慈愛に満ちた温かい微笑みを浮かべた。
『……ええ。お任せください、朝日。私の全存在を賭けて、あなたを世界で一番最高のアタッカーにしてみせます』
月光の下で交わされる、固い絆と誓い。
神宮司の待つ頂へ、そして世界一の栄冠へ向けて――運命の本戦決勝の夜が、静かに更けていく。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
今回は決勝前夜の極秘1v1、朝日のULTお披露目、そして黄金の相棒AI『アテナ』との静かなる絆の再確認でした!
半年の修行で得た己の感覚に、チームのロジックとアテナのサポートが組み合わさった時、朝日はハルを超えて頂点へと届くのか……!?
いよいよ次回、運命の本戦決勝ラウンドが開幕します!
「ハルとの攻防にゾクゾクした!」「アテナと朝日の信頼関係が美しい!」と思っていただけたら、
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