要塞崩壊と、光の跳躍
『――生存チーム、残り8部隊。最終フェーズ、安全地帯の収縮を開始します』
無機質なシステムアナウンスが、無数の高層ビルがそびえ立つ巨大都市『セントラル・シティ』に響き渡る。
街を包み込むように外側から迫り来る紫色のダメージエリア。逃げ場を失った猛者たちが、この狭い市街地へと凝縮されていく。
静まり返るビル群。誰もが息を殺し、他チームの出方を探る嵐の前の一瞬の静寂。
その中で、中央に位置する最も高い40階建てビルの屋上を陣取っていたのは、アジア大会上位常連の【チーム・アイギス】だった。
「階段、エレベーターシャフトにはすべて感知式レーザーマイナーと指向性爆弾を設置完了。ドアを開けた瞬間に吹き飛ぶ」
「屋上テラスには自動迎撃タレット2機を配備。空中のドローンや跳躍攻撃も即座に迎撃できる」
彼らの作戦は完璧だった。
ビル全体を「足の踏み場もない要塞」へと変え、下から上がってくる哀れな生存者たちを、屋上からのスナイパーとタレットで一方的に狩り尽くす。
「ふん……完璧な陣形だ。ここを崩せる奴など、このゲームに存在しな――」
リーダーがほくそ笑んだ、その時だった。
「――シームレスな立体移動を開始しますわ」
通信機から届いたのは、ビル内でも屋上でもなく、『ビルの外の空中』からの冷徹な雪那の声。
「なっ……!? 外だと!?」
リーダーが思わずビルのフェンス越しに外を見下ろす。
そこには、正気の沙汰とは思えない光景が広がっていた。
隣のビルからこの40階建てビルに向けて、空中を一直線に繋ぐ青い光――くるみが連続展開した『光の足場』のブリッジ(架け橋)。
トラップでガチガチに固めた侵入ルートなどハナから無視し、彼らはビルとビルの谷間、高度150メートルの空中を疾走していたのだ。
「バ、バカな!? 盾を空中に繋いで走って……タレット、迎撃――」
「遅ぇよ!!」
タレットが起動するよりも早く。
シールドの架け橋を猛スピードで駆け抜けてきた朝日は、最後の足場を強く蹴り飛ばし、要塞化された屋上へと豪快に跳躍した。
「ガキが調子に乗るなァ! 空中じゃ回避行動は――」
「くるみ!」
「はいっ!」
空中へ身を躍らせた朝日の足元に、くるみのピンポイントシールドがドンピシャのタイミングで追従生成される。
朝日は空中でもう一度『光の足場』を蹴り、要塞の真上へ。太陽を背にした、圧倒的強者のシルエット。
「なっ……空中での二段跳び……!?」
「手塩にかけた要塞、ご苦労さん!!」
ズガァンッ!! ズガァンッ!!
空中から撃ち下ろされた『マスタング』の大口径弾が、設置されていた自動タレット2機を一瞬で木っ端微塵に粉砕する。
「タレットが一瞬で……! 撃て! 撃ち殺せ!!」
パニックに陥ったリーダーがライフルを構えようとした、その瞬間。
ピシュォォォンッ!!
対岸のビルの屋上から放たれた『コキュートス』の氷の凶弾が、フェンス越しにリーダーの頭部を正確に貫いた。
狙撃手を配置していたはずの要塞側が、逆に遥か遠方からの雪那の狙撃に撃ち抜かれる。
「あ、アニキ――!?」
残されたサブスナイパーの胸元に、空中から着地した朝日のマスタングの砲口が突きつけられた。
「要塞ごっこは楽しかったか?」
ズドンッ!!
光の粒子となって消えていく敵。
仕掛けられた大量のトラップは、起動することすら叶わず空しく無人となった屋上に残されていた。
『――【チーム・アテナ】が【チーム・アイギス】を全滅させました』
「へっ、見晴らし最高だな! このビル、俺たちの基地にしようぜ!」
朝日はマスタングをくるりと回して腰に収め、吹き抜ける風の中で不敵に笑った。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
今回は最終フェーズ(3日目)突入と、トラップで固めた要塞チームの空中粉砕劇でした!
地上も階段も無視して「空の足場」から襲いかかる朝日たちの理不尽な機動力……!
このまま中央を制圧できるのか、それとも他チームが牙を剥くのか!?
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