Bブロックの蹂躙者たち
Aブロックで朝日たちが水没居住区を制圧していた頃。
円形人工島『アーク・ルインズ』の東側――Bブロックに位置する『放棄プラント群』では、一方的な虐殺が行われていた。
「おい、嘘だろ……。右翼のカバーに入っていた『チーム・イプシロン』が全滅したぞ!?」
「あいつら、去年のヨーロッパ大会覇者だぞ!? それがたった1分で……!」
複雑に入り組んだプラントの2階通路。
完璧なクロスファイアの陣形を組んで待ち構えていたプロゲーマーたちは、通信機から聞こえる絶望的な報告に冷や汗を流していた。
彼らもまた、世界トップクラスの猛者たちだ。
だが、この新型マシンの『痛覚』と『疲労』の前に精神をすり減らしていた彼らの前に現れたのは、そんな極限状態を微塵も感じさせない、異常な3人組だった。
「――おーい。そんな所で縮こまってて、ゲーム楽しいの?」
ふらりと。
一切の足音を立てず、プロゲーマーたちの視界の端に『彼』は現れた。
Bブロックの優勝候補筆頭、【チーム・フェンリル】のリーダー、ハルである。
「出たな、化け物……ッ! 撃て!!」
プロゲーマーたちが一斉にアサルトライフルの引き金を引く。
だが、弾丸がハルの体を捉えることはなかった。
「シオン。視界、奪って」
「了解」
ハルの背後に控えていた小柄な少女、シオンがホログラムキーボードを叩く。
瞬間、プロゲーマーたちの視界(UI)が激しいノイズと共にブラックアウトした。
ジャミングスキル。視覚情報に頼り切っていた彼らの連携が、一瞬にして崩壊する。
「なっ、UIが――!?」
ズドォォォォォンッ!!!
次の瞬間、プロゲーマーたちが隠れていた分厚いコンクリートの壁が、轟音と共に吹き飛んだ。
壁の向こう側、遥か遠方からの規格外の狙撃。
放たれた大口径のマテリアルライフルの一撃が、壁ごとプロの一人を上半身から消し飛ばしていた。
「キョウ、お掃除お願い」
「ハッ、任せなァ!!」
粉砕された壁の穴から、巨漢のキョウがプラント内へ躍り込んでくる。
その背中には、たった今分厚い壁を撃ち抜いた巨大な対物スナイパーライフル。そして両手には、常人なら持ち歩くことすら困難な『重機関銃(LMG)』が握られていた。
「おいおい嘘だろ……スナイパーがLMGを抱えて特攻してくるなんて……!」
「オラオラァ! 近けぇ的にチマチマ狙撃してられるか! 蜂の巣になりなァ!!」
圧倒的な筋力に物を言わせた、重量級武器の二丁持ち。
キョウの放つLMGの弾幕の嵐が、逃げ惑うプロたちを次々と光の粒子に変えていく。
「……あーあ。キョウの奴、また大雑把に散らかして」
ハルは呆れたようにため息をつきながら、自身の得物である二丁のサブマシンガンを静かに構えた。
「――少しは、俺を楽しませてよね」
次の瞬間、ハルの姿がブレた。
常軌を逸したスピードでのスライディング、壁蹴り、跳躍。
三次元の機動を極めたハルの動きは、もはや人間の反応速度で追えるものではなかった。
「どこだ……!? 上か!?」
生き残った最後のプロゲーマーが銃口を上に向けた時には、すでに彼の背後にハルが立っていた。
「遅いよ」
タタタタタタタタタタッ!!
至近距離から放たれた二丁サブマシンガンの無慈悲な連射が、プロゲーマーの背中を蜂の巣に変えた。
『――【チーム・フェンリル】が【チーム・ガンマ】を全滅させました』
「はぁ……つまんない。どいつもこいつも、リアルの痛みにビビって動きが硬すぎる」
ハルはサブマシンガンをくるりと回してホルスターに収め、つまらなそうにプラントの窓から夜空を見上げた。
「ハル、これでこのエリアの掃除は終わりだ。……どうする? 明日には安置収縮が始まるぜ」
重機関銃を肩に担ぎ直したキョウが、ニヤリと笑いながら歩み寄る。
「そうだね。中央の『セントラル・シティ』に向かおうか」
ハルの瞳に、微かな熱が宿る。
その視線の先にあるのは、マップの反対側――Aブロック。
「あっちには、俺の『本命』がいるからね。……早く会いたいな、朝日」
狂気すら孕んだハルの微笑みと共に、Bブロックの長い夜が更けていく。
そして、ついに運命の3日目。
生存者たちを中央の死地へと強制的に集める、安全地帯の収縮が始まろうとしていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
今回は視点を変えて、Bブロックのバケモノこと『ハル』たちの無双劇でした!
プロゲーマーすら子ども扱いする彼らの理不尽な強さ。
朝日たち【チーム・アテナ】と、ハルたち【チーム・フェンリル】が決勝で激突した時、一体どうなってしまうのか……!?
続きが気になる! と思っていただけたら、
ぜひ下部の【☆】から評価とブックマークをお願いいたします!
明日からの3日目(安置収縮編)もアクセル全開で書いていきます!
よろしくお願いします!




