盤面の確認と、生存者たち
鳥の囀りと共に、木漏れ日が『静寂の森』に差し込む。
本戦2日目の朝。
朝日、雪那、くるみの3人は、たっぷりと睡眠を取り、スッキリとした顔でストレッチをしていた。
『――本戦2日目、午前6時。これより生存状況のアナウンスを行います』
空から響く無機質な声に、3人は手を止めた。
『現在、Aブロックの生存チームは12チーム、計36名。Bブロックの生存チームは15チーム、計45名。両ブロック合わせて、半数近くのプレイヤーがすでに脱落しています。
安全地帯の収縮は明日の朝より開始されます。引き続き、健闘を祈ります』
「……へえ。たった1日で、Aブロックは8チームも消えたのか。俺たちがやったのは4チームだから、他の連中も結構派手にやり合ってるみたいだな」
朝日は首をゴキリと鳴らしながらニヤリと笑う。
「無理もありませんわ。この疲労感と痛覚のリアルさ……極限のストレス下では、冷静な判断力を保つことすら困難でしょう」
雪那はそう言いながら、虚空をスワイプして半透明のホログラムマップを展開した。
半径10kmの円形人工島『アーク・ルインズ』の全体図が、3人の間に浮かび上がる。
「さて、本日のルートを確認しますわよ。現在地はマップ北西の『静寂の森』」
雪那の細い指が、マップの左上をタップする。
「昨日の初動で北東の『第4放棄プラント』に降りてから、私たちは西へ向かって移動してきました。問題は、明日の朝から始まる安全地帯の収縮です」
「最終安置は、やっぱり真ん中あたりになるの?」
くるみが小首を傾げながらホログラムを覗き込む。
「ええ。マップ中央には天を衝く高層ビル群『セントラル・シティ』があります。運営の悪趣味な性格を考えれば、最終的にはあそこの立体的な市街地戦にプレイヤーを追い込む確率が高いですわ」
雪那の指が、マップの中心を赤く丸で囲む。
四方八方から射線が通る、最悪の激戦区だ。
「じゃあ、このまま中央に向かうか?」と朝日がマスタングのシリンダーを回しながら聞く。
「いいえ。早くから中央に陣取れば、四方から来る他チームの標的になります。私たちの基本戦術は『安置の端を取りながら、外側から敵を削る』こと」
雪那はマップの西側から南側にかけて、ぐるりと迂回する矢印を描いた。
「今日はここから南下し、マップ西部に広がる『旧軌道エレベーター基部』の平野を抜けます。遮蔽物が少なく、スナイパーの的になりやすい危険地帯ですが……くるみのドームがあれば突破は容易です。そして、マップ南部の『水没居住区』に陣取り、明日の安置収縮に合わせて下から中央のシティへ押し上げますわ」
「なるほどな。西の平野を突っ切って、南の水没エリアでキャンプか。面白え」
朝日は満足げに口角を吊り上げた。
「朝日くん、平野を移動する時は私が絶対に盾になるから、勝手に飛び出しちゃダメだからね」
「分かってるって。アテナの教え通り、最短距離で動いてやるよ」
「では、移動を開始します。索敵を怠らないように」
雪那の合図と共に、3人は静寂の森を抜け、南へと歩き出した。
一方その頃――マップの各所では、生き残った他のプレイヤーたちが疲労と疑心暗鬼に苛まれていた。
「クソッ……Aブロックには、初動で3チームを瞬殺したヤバいチームがいるらしいぞ……!」
「夜中にも銃声がした……絶対に会いたくねえ……」
彼らはまだ知らない。
その『ヤバいチーム』が、満腹の腹を抱えながら、西の平野を鼻歌交じりに横断しようとしていることを。
狩る者と狩られる者の差は、2日目にしてすでに、埋めようのないほどに開いていた。




