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アテナ・トリガー  作者: 案山子


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時代遅れの銃声

――それから数日後。朝日の日常をぶっ壊す転機は、突然訪れた。


戦場に轟く激しい銃撃戦の音。複数の部隊が入り乱れる激戦区の死角で、朝日は息を殺していた。

AIの予測データに頼るエリートたちは、目の前の敵を倒す「最適解」に夢中で、背後から忍び寄る「バグ」の存在に気づかない。


「……今だ」


朝日はピンを抜いたグレネードを、絶妙な放物線を描いて争いの中心へ投擲した。

数秒後、爆発音と共に複数のキルログが視界の端を流れる。完璧なタイミングでの奇襲だった。

素早く物資を漁る朝日の手に、鈍く光るカードキーが握られる。

「ウソだろ……レジェンダリーアイテムの宝物庫の鍵じゃん!」

万年3位の劣等生にとって、それは待ちに待った特大のボーナスだ。朝日は心臓をバクバクさせながら、フィールドの端にある宝物庫へ急いだ。


重厚な扉を開けると、そこには多種多様な高性能武器が神々しい光を放ちながら並んでいた。

しかし、その光はすぐに朝日の瞳から落胆の色を引き出した。

「……全部、オートエイム対応かよ」

どれほど威力が強力でも、AIの補助が必須の武器。テナさんが使用を許さない以上、ただの鉄クズと同じだ。朝日は深いため息をつき、踵を返そうとした。


『待って、朝日。……あれなんて、どう?』


脳内に響くアテナの声に導かれ、朝日は部屋の片隅、埃を被ったような一つの木箱に目を向けた。

そこにあったのは、無骨で重厚なリボルバータイプのハンドガン。

現代のプレイヤーには誰にも見向きもされない、何十年も前に時代を席巻した旧式の銃だ。オートエイム対応外であり、生身の人間が撃てば反動で手首を持っていかれるほどのじゃじゃ馬。AIに頼りきった現代のプレイヤーには、到底扱える代物ではない。


「こんなの、俺に撃てるのか……?」

ずしりと重い銃身を握りしめた朝日。その瞬間、アテナの声が、いつもの問いかけるような優しいトーンから、鋭く冷徹な「システム音声」のように切り替わった。


『千堂朝日。私からあなたへ、初めての指示を出します』


背筋が凍るような緊張感が走る。

朝日はごくりと唾を飲み込み、相棒の次の言葉を待った。


『――この試合、チャンピオンを取りなさい』


その言葉が引き金となった。

最終リングの収縮。生き残りはいつものように3名。

「また万年3位の千堂か」「さっさとあぶり出して終わらせようぜ」

エリート2人は完全に油断し、AIのオートエイムに身を任せて、丸腰の獲物を狩るように一直線に走り込んでくる。

それは、朝日にとって「見飽きた光景」であり……同時に、この旧式リボルバーの射程に、自ら飛び込んでくる「愚かな的」に他ならなかった。


朝日は持ち前の圧倒的なフィジカルで地面を蹴り、エリートたちの予測演算をわずかにズラす。

そして、初めて銃を構え、引き金を引いた。


――ズドンッ!!!


鼓膜を破るような轟音。旧式リボルバーから放たれた弾丸は、一人目のエリートの頭部を完璧に撃ち抜いた。

「なっ……!? 千堂が銃を……!?」

驚愕し、AIの再計算が間に合わずにフリーズする二人目。

その隙に、朝日は完全に相手の射線を切り、近くの岩壁を蹴って高く宙へと舞い上がった。


空中で体を捻り、眼下の二人目を見下ろす。

風の向き、重力、そして自らの肉体の動き。すべてが朝日の直感の中で一つに繋がった。


――ズドンッ!!!


二発目の銃声。

空から放たれた無慈悲な一撃は、二人目の頭部を正確に貫き、赤いゲームオーバーの光へと変えた。


静まり返る最終安置。

システム音声が、信じられないものを見るような間を空けて、全プレイヤーにアナウンスを響かせる。


『順位確定。千堂朝日――チャンピオン』


「っしゃあああああああああっ!!!!!」


たった2発の銃声でエリートたちを沈めた劣等生は、焦げ臭い荒野のど真ん中で、天に向かって歓喜の咆哮を上げた。

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