万年3位の劣等生と時代遅れのサバイバル
舞台は、全世界が大熱狂するフルダイブ型VR-FPS。
プレイヤーの現実のフィジカルがそのままゲーム内にトレースされるその過酷な競技において、この超エリート校の生徒たちは、ある意味で「平等」だった。
なぜなら、全員が最新鋭のAIを搭載しているからだ。
最適な降下ポイント、完璧な射線管理、そして9割の銃器に標準搭載された「オートエイム」機能。AIの導き出す解にほとんど優劣はない。だからこそ、生徒たちはサイコロを振るように順番に「チャンピオン」を獲得していく。
――ただ一人、千堂朝日を除いて。
『最終リングの収縮まで残り45秒。残り部隊数、3。生存者、7名』
無機質なシステム音声が、焦げた土の匂いが漂う荒野に響き渡る。
岩陰に身を潜める朝日の息は、少しも乱れていなかった。現実世界で限界まで鍛え抜かれた彼のフィジカルは、フルダイブのこの世界でも圧倒的な機動力を生み出している。
「……テナさん、風向きが変わった。北東からの微風。あの稜線の裏なら足音は消せる」
『ええ、風の読みは完璧よ、朝日。……でも、一つ重大な問題があるわ』
脳内に響くアテナの声は、呆れたような、それでいて手のかかる弟を見るような温かさを含んでいた。
『先ほどの無茶な戦闘で、あなたの愛銃の残弾はゼロ。対して、残る2部隊は3人編成のフルパ(満員)状態。右にはアサルトライフルを構えた前衛、左にはスナイパーが控えているわ』
「わかってるって。相変わらずテナ先生は厳しいね」
朝日は軽く笑いながら、腰から【近接用ナイフ】を引き抜いた。
チームを組んでくれる者がいない朝日は、常に「1人」でこの戦場に放り込まれる。さらに、アテナは朝日にオートエイム銃の使用を絶対に許さない。AIに照準を合わせてもらい、ただ引き金を引くだけの作業に「人間の意志」はないからだ。
だから朝日は、弾が尽きればナイフ一本で、自らの肉体だけを頼りにフィールドを駆け回る。
化け物じみた生存能力で、毎試合必ずこの「最終安置」まで生き残ってきたのだ。
『生き残りが3部隊になった瞬間、他のAIは必ず同じ「最適解」を弾き出します。――脅威度ゼロ。銃を持たない異端者を先にあぶり出し、排除せよ、とね』
「来るか……!」
朝日の耳が、わずかな砂利の音を捉えた。
バババババッ!!
岩が砕け、火花が散る。オートエイムによる正確無比な十字砲火。
朝日は弾幕を避けるため岩陰から飛び出す。驚異的な脚力で射線を切り、風の音に紛れて死角へと潜り込む。
「いたぞ! 万年3位のソロ野郎だ!」
「さっさと終わらせ――がはっ!?」
エリートの一人が言葉を発した瞬間、頭上から強襲した朝日のナイフが、その首筋を正確に深く薙ぎ払った。
システムが致命傷と判定し、エリートが光の粒子となって消える。
「なっ!? 上だ、撃て撃て!!」
パニックに陥った残りのプレイヤーたちが、一斉に頭上へ銃口を向ける。
空中にいる朝日に回避の術はない。システムに最適化された無数の銃弾が、朝日の身体を貫いた。
視界が赤いゲームオーバーの光に包まれる。
『順位確定。千堂朝日、第3位』
またしても、チャンピオンには届かなかった。
ログアウトしていくエリートたちが「また千堂か」「最後はナイフ特攻とか、相変わらずバカなプレイングだな」と嘲笑う声が聞こえる。
彼らは知らない。
弾切れのナイフ一本で、最新AI搭載のエリートを道連れにした朝日の異常な戦闘センス(CQC)を。
そして、誰も注視しない朝日の「累積生存総合ポイント」が、すでに校内のどのトップエリートよりも遥か上の次元に達しているという事実を。
『……お疲れ様、朝日。最後のナイフの踏み込み、悪くなかったわよ』
「へへっ、テナさんに褒められるなら、3位でも悪くねぇか」
朝日はただ一人、ナイフの柄をくるりと回し、清々しい笑みを浮かべていた。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
第2話では、朝日の「万年3位」の本当の理由が明らかになりました。
オートエイムのフルパーティ(3人組)を相手に、弾切れのナイフ一本で単独特攻を仕掛ける朝日。負けてなお「ヤバい奴」感が伝わっていれば嬉しいです!
圧倒的なフィジカルとサバイバル能力を持ちながらも、システムの評価は最低。
誰もその真の強さに気づかない中、相棒のAI『アテナ』だけは、彼に厳しい試練を与えながらもその成長をどこか楽しげに見守っています。
「ナイフ特攻、カッコいい!」「この時代遅れのコンビ、推せる!」と少しでも思っていただけましたら、
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劣等生とAIの泥臭い戦いは、まだまだ続きます! 次回もお楽しみに!




