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アテナ・トリガー  作者: 案山子


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20/26

初陣のゼニフロ、そして最強の盾の帰還

「――全校生徒の皆さん。我が校から、記念すべき現役高校生にしてプロプレイヤーのチームが誕生しました!」


学園のダイブルームに設置された巨大モニターに、恰幅の良い理事長が満面の笑みで映し出される。

その言葉に、集まった生徒たちの間にどよめきが走った。


「この歓喜を祝し、本日は我が校主催の小規模なカスタムマッチを開催いたします。参加条件はプラチナ帯以上の上位ランカー限定。そして、ルールは全世界が熱狂するeスポーツの頂点――『ZENITH FRONTIERゼニフロ』の公式ルールに則って行います!」


『ZENITH FRONTIERゼニフロ』公式ルール概要

参加人数スケール: 3人1スリーマンセル× 30部隊 = 総勢90名の大乱戦!


◆基本システム: 上空のシップから広大なマップへ各自降下し、武器や物資は現地調達ルートして生き残るサバイバル方式。


◆リング(安置)システム: 時間経過と共に安全地帯(安置)が縮小。安置外は凶悪なパルスに覆われており、「3秒触れると即死」という極めてシビアなデッドゾーン。


◆【超重要】ダイヤ特権ロードアウト: ダイヤ帯以上のプレイヤーにのみ許された特権。オーバースペックの武器(ゲームバランスを崩すレジェンダリー武器など)を除き、自分の愛用武器を「初期装備」として持ち込むことができる。


「それでは――各員、降下準備!」


理事長の高らかな宣言と共に、ダイブルームの熱気は最高潮に達した。


***


「……くっ、ふざけやがって。なんであの万年3位の劣等生がダイヤⅡなんだよ」


上空を飛ぶ輸送シップからの降下中。

学園の鼻持ちならないプラチナ・ダイヤ混成のエリート部隊は、忌々しそうに舌打ちをしていた。

彼らの視線の先には、同じエリアへ降下していく一つの部隊。神崎雪那、千堂朝日、そして柊くるみのスリーマンセルだ。


「ダイヤⅠの神崎と、バグで飛び級した千堂は武器を持ってる。だが、柊くるみはブランクのせいでランク減衰、今はただの『ブロンズⅣ』だ。特権はなく、完全な丸腰で落ちてきているぞ」

「チッ、元プロが聞いて呆れるぜ。初動で狩り殺して、格の違いってやつを教えてやろう」


エリートたちはAIの弾き出した「最適解」に従い、くるみを最初のターゲットに定めて一直線に降下していった。


ガチャンッ!!


地面に降り立った瞬間、くるみは慌てて近くのサプライボックスを開け、アサルトライフルとショットガンを拾い上げた。

しかし、その手はガタガタと震え、うまく武器を構えることができない。


「だ、だめ……! 武器の反動係数も、システムのUIも、3年前の仕様と全然違う……っ!」

『警告。システムとの適合率30%。最適な射撃姿勢が構築できません』


度重なる大型アップデートの壁。

かつて世界を熱狂させた「最強の盾」は、そのブランクの重さに押し潰されそうになっていた。


「もらったぜ、元プロさんよぉ!!」


建物の角から、エリート生徒3人が一斉にオートエイムの銃口をくるみに向ける。

万事休すかと思われた、その時だった。


「――おっと、よそ見してんじゃねえぞ」


頭上から降ってきた影が、エリートたちの視界を遮った。

千堂朝日だ。彼の右手には、ダイヤ特権で持ち込んだ無骨な旧式リボルバー『マスタング』が握られている。


「千堂!? クソ、AIの射線管理をすり抜けてきやがった!」

「俺がヘイトを稼ぐ! 雪那、撃ち抜け!」


朝日は驚異的な脚力で戦場を駆け回り、エリートたちのAI予測演算を掻き乱す。

その隙を突き、後方の高所から雪那の愛用スナイパーライフルが火を噴いた。


ズドンッ!


「ぐあっ!?」

エリートの一人が膝をつく。しかし、相手も腐っても学内上位ランカーだ。AIが即座に「最適なカバーと蘇生手順」を弾き出し、残る2人が完璧な連携で蘇生と制圧射撃を行ってくる。


実質、朝日と雪那の2vs3。

「千堂! 私の射線管理にも限界がありますわよ! 早く崩しなさい!」

「わかってる! でも、こいつらマニュアル通りに動きやがって崩しにく――」


焦る朝日の足元に、敵の放ったグレネードが転がった。

爆発。土煙が舞い、朝日の逃げ場が完全に塞がれる。

3つの銃口が、孤立した朝日に集中した。


「終わりだ、千堂!!」


――その瞬間。

くるみの瞳に、かつての鋭い光が宿った。


『――味方の生存確率、低下。システム適合、強制完了』


重いアサルトライフルを軽々と構え直し、地面を蹴る。

エリートたちが引き金を引くより早く、くるみは朝日の眼前に飛び込み、ドンッ!と重厚なデバイスを地面に叩きつけた。


「朝日さんには、指一本触れさせません……! 『ドームシールド』展開!!」


ブゥゥゥンッ!!

眩い光の半球が展開され、エリートたちの放った無数の銃弾をすべて弾き返した。


「なっ……!? あの反応速度、データにはねぇぞ!?」

驚愕し、AIの再計算に気を取られたエリートたち。

その隙を、最強の盾は見逃さなかった。


「雪那さん、上です!」


くるみが叫ぶと同時、彼女のアルティメットスキルである『防衛爆撃』の雨が、エリートたちの頭上に降り注いだ。

ドガガガガガッ!!


「うわあああっ!?」

「陣形が……! AIの予測演算が追いつかない!!」


爆炎に巻き込まれ、たまらず遮蔽物から空地へと飛び出してくるエリート生徒たち。

土煙の隙間、空中に放り出された彼らの無防備な姿。

高所でスコープを覗き込んでいた雪那の口角が、美しく、そして残酷に吊り上がった。


「――チェックメイトですわ」


パンッ! パンッ! パンッ!

コンマ1秒の狂いもない3発の銃声。

空中に逃げ出したエリートたちの頭部を、雪那の放った弾丸が次々と正確に撃ち抜いていった。


『部隊全滅(キルリーダー・神崎雪那)』


戦場に、一瞬の静寂が訪れる。

無様に散ったエリートたちは、ただの一言も言い訳を喚く暇すら与えられず、光の粒子となってログアウトしていった。


***


「ふぅ……なんとか、勘を取り戻せました」

ドームシールドを解除し、へたり込むくるみ。

「当然ですわ。私の完璧な射線管理とあなたのカバーがあれば、この程度のエリートごとき……ふふっ」

ドヤ顔で髪をファサッとかき上げる雪那。

「おう! 今の爆撃すげえな! 敵が勝手に空中に飛び出してきやがった!」

無邪気に笑いながら、マスタングをクルクルと回す朝日。


彼らは気づいていなかった。

現実世界のダイブルームで、その圧倒的で美しすぎる「プロの連携」をモニター越しに目撃していた全校生徒たちが、信じられないものを見たように息を呑み――。


次の瞬間、ダイブルームが揺れるほどの、爆発的な大歓声と拍手が巻き起こっていたことに。


かくして、全く噛み合わないままの最強スリーマンセルは、その初陣において、学園の歴史に深く刻まれる伝説の第一歩を踏み出したのだった。

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